平成29年度第6回土日集中セミナー「人にやさしいオープンデータは住民と行政を変える」

新たな知と方法を生む地方創生セミナー 募集終了 終了レポート

2017年09月09日

平成29年度第6回土日集中セミナーは、9月9日(土)~10日(日)に「人にやさしいオープンデータは住民と行政を変える~東京大学PadITオープンガバナンスチームと考える~」をテーマに開催しました。

9月9日(1日目)

講義I「なぜ今、オープンデータの活用か」
奥村 裕一 氏(東京大学公共政策大学院 客員教授)

はじめに、オープンデータの定義や活用の現状を紹介していただきました。オープンデータとは、機械が判読できる形式で公開された、二次利用可能なデータのことを言います。現在、約300の自治体がオープンデータを活用したまちづくりに取り組んでいます。オープンデータとして公開することにより、行政の透明化や効率化、市民協働の促進などの効果が期待されます。

データを活用した地域づくりには、①データを保有する「行政」②データをグラフなどで視覚的に加工・分析する「エンジニア」③加工されたデータを基に地域課題の解決を目指す「市民」の3者の関係性が重要になります。この①~③の関係の中で、市民が社会の現状を把握し、課題解決につなげる点をご説明いただきました。

講義I

講義II「住民生活を豊かにするオープンデータの民間活用」
庄司 昌彦 氏(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授)

住民生活を豊かにする方法の1つとして、オープンデータが地域にもたらす可能性を紹介していただきました。住民生活を豊かにする地域とは、地域のつながりが深く、新しいチャレンジを生み出す場所です。チャレンジを生み出す資源が「ヒト」「モノ」「カネ」「情報・データ」であり、人口減少や財源不足といった現状でも、情報・データは枯渇しない資源として注目されています。そして今後、より一層データ活用を進めるために、庄司さんは成功事例の共有や民間企業での利用促進などを提案いただきました。

講義II

講義III「オープンデータ運用の実践現場から取組手法と課題を知る」
阿部 由紀江 氏(新潟県新潟市地域・魅力創造部広報戦略課 課長補佐)

石塚 清香 氏(神奈川県横浜市経済局政策調整部経済企画課 ICT専任職)

続いての講義では、実際に行政の現場でオープンデータを活用した事例をご紹介いただきました。

阿部さんには、新潟市内にある老朽化した公共施設の今後の在り方を検討するワークショップを行った際の事例をご紹介いただきました。ワークショップでは、施設の維持コストや利用率のデータを市民に提示し議論を進められたというお話がありました。客観性のあるデータを示すことで、市の現状が市民に伝わり、行政と市民の両者が納得する形で事業展開されている点をご紹介いただきました。

石塚さんは、横浜市内の子育て情報アプリ「かなざわ育なび.net」や、横浜市・横須賀市・鎌倉市の3市連携で行った取組をご紹介いただきました。横浜市は2030年に65歳以上の人口が100万人を突破すると推測されています。そうした社会の変化に対応しながら持続可能性の高い地域を創るために、市民協働のまちづくりを進める必要があります。オープンデータは市民が地域課題を把握する最初の一歩になる点をご説明いただきました。

講義III その1

講義III その2

ワークショップ

1日目の最後のプログラムでは、参加者が4つのグループに分かれてワークショップを行いました。参加者は「観光振興」「地域振興」「住民への情報発信」「行政の効率化」のうち関心のあるテーマを選び、各グループでこの日の講義の内容を踏まえながら話し合いました。

ワークショップ

9月10日(2日目)

講義IV「人を知る、データを知る、課題に迫る」
奥村 裕一 氏

1日目に引き続き、奥村さんにご登壇していただきました。

奥村さんからは、前日に学んだオープンデータで地域の現状を把握した次のステップとして、政策立案を行う手法の1つ「デザイン思考」を提示していただきました。デザイン思考とは、ユーザーの反応を見ながらより利用しやすいサービスをデザインするものです。デザイン思考ではユーザー(市民)の反応を見ながら、より受け入れられやすいサービスを提案していきます。デザイン思考による政策立案では、ユーザーへの共感・課題の定義・アイデアの創造・チェック・ループバックを繰り返します。最初の政策アイデアは直感やひらめきで生まれることが多いですが、データはそのアイデアを裏付けるものであるという点をご説明いただきました。

講義IV

講義V「データ活用をめぐる現場のよもやま話」
前神 有里 氏(愛媛県職員、地域活性化伝道師、地域力創造アドバイザー)

前神さんからは、愛媛県中予地方局で地域振興を担当していた際の事例を紹介していただきました。地域の将来人口の推計データを市民に提供し危機感を共有することで、市民主導の移住受入の取組・まちづくりが進んだそうです。前日の阿部さんの講義でもお話がありましたが、データを行政・市民に共有することで新しい議論の気づきをもたらします。そして、両者の協働からイノベーションが生まれる点をご説明いただきました。

講義V

講義VI「オープンデータ時代の自治体職員に求める希望の3か条」
福島 健一郎 氏(一般社団法人コード・フォー・カナザワ 代表理事)

福島さんからは、データを活用する市民側からの視点でお話しいただきました。コード・フォー・カナザワはICTを活用して地域課題の解決を目指す市民団体です。自治体職員に求めることとして、「多くの市民と交流する機会を持つこと」「市民目線のデータの提供(脱縦割り)」「公開することを意識した行政データの作成」以上の3点をご紹介いただきました。

ワークショップ

2日目の最終プログラムでは、アンカンファレンス方式でワークショップを行いました。参加者の関心のあるテーマとして「市民と行政の関わり方」「データも活用した上で人材育成」「行政職員に意識変化を促すための手法」「オープンデータの活用から可能になること」が出てきました。参加者は好きなテーマを2つ選び、それぞれのテーマについて2回のディスカッションを行い、今後の行動や計画に移していくイメージを深めました。

ワークショップ

セミナーを終えて

今回のセミナーで多くの講師がお話しされていたのが「データはあくまで地域の課題や資源を把握するツールであり、オープンデータの目的は市民協働による地域課題の解決である」ということでした。行政はデータを公開することが目的ではなく、市民の活動を支援するためにデータを公開します。

最後に、奥村さんから「行政はまず自分たちが何のデータを保有しているのか、身近にどのようなデータがあるのか知ることから始めてほしい」というまとめをいただきセミナーを終了しました。

集合写真

プログラム

1日目(9月9日)

12:30~13:00 30分 受付
13:00~13:10 10分 開講式・常務理事挨拶
13:10~14:10 60分 講義I 奥村 裕一 氏
14:10~14:20 10分 休憩
14:20~15:20 60分 講義II 庄司 昌彦 氏
15:20~15:30 10分 休憩
15:30~16:40 70分 講義III 阿部 由紀江 氏、石塚 清香 氏
16:40~16:50 10分 休憩
16:50~18:20 90分 ワークショップ
18:30~20:00 90分 交流会

2日目(9月10日)

9:00~9:30 30分 講義IV 奥村 裕一 氏
9:30~10:20 50分 講義V 前神 有里 氏
10:20~10:30 10分 休憩
10:30~12:10 100分 講義VI 福島 健一郎 氏
12:10~12:20 10分 クロージング
12:20~12:30 10分 閉講式

連絡先

クリエイティブ事業室
TEL:03-5202-6134  FAX:03-5202-0755  E-mail:creative(at)jcrd.jp ※メールアドレスの(at)は@に変更ください。