【終了レポート】令和5年度【スタンダード(平日半日型)】新たな知と方法を生む地方創生セミナー「教育×地域~中学生の笑顔から広がる地域の未来~」
終了レポート
2024年03月27日
はじめに
令和5年度新たな知と方法を生む地方創生セミナー「教育×地域~中学生の笑顔から広がる地域の未来~」を、令和5年9月22日(金)に開催しました。地方公共団体などから25名の参加がありました。
今回のテーマ
本セミナーは、これからの教育に関する講義、事例紹介、グループワークを通して、「教育×地域」の必要性や将来性を認識し、その実現に向け実践可能な事業計画を立案できるようになるための学習機会として開催されました。
講義
【主任講師】大正大学地域創生学部教授/地域活性化センターフェロー 浦崎 太郎 氏
1989年より岐阜県で高校教師として勤め、人事交流等で中学校や博物館も経験。地元では「まちづくり協議会」の立ち上げに参画。公私にわたる広範な現場経験に基づき、学校と地域が連携・協働して人づくりと地域づくりを一体的に展開する仕組みについて実践的に研究。2015年には文部科学省中央教育審議会学校地域協働部会専門委員等を務め、2017年より現職。
【講義①】なぜ今中学生の笑顔なのか?
浦崎教授は、「なぜ今中学生の笑顔なのか?」をテーマに、子どもたちがやりたいことにチャレンジし、その成果で自己肯定感を高め、さらに地域・社会に貢献しようとする人材に育つ取組の重要性について話されました。将来子どもたちが、変化の激しい世の中で自ら課題を乗り越え生きていくためには、柔軟な中学生の時点で自ら考えチャレンジし経験を積む探究学習を行うことが重要であると述べられました。
また、若者が去ってしまうまちは、若者を「地域のための手段」と捉え、若者の「自分らしさ」やチャレンジを疎んじる地域であると語られ、若者を尊重しない地域は生き残れないということに気づかされました。
地域の中で探究学習を行うことで、子どもたちと地域の間につながりが生まれます。そして、探究学習の成果を地域の人が評価してくれることで、子どもたちの自己肯定感が高まり、笑顔につながっていきます。教育委員会だけでなく首長部局や地域が一丸となって、子どもたち一人ひとりと向き合って、地域の教育を考えなければならないということが分かりました。
【特別講師①】一般社団法人 愛・南魚沼みらい塾 理事 倉田 智浩 氏
30年旅行会社で国内外の様々な教育旅行を企画、添乗。東日本大震災を契機にボランティア隊を設立し、現在も「命の授業」としてその経験を伝承。2017年に地域教育の支援・研究・学校と地域のネットワーク構築を目的に【愛・南魚沼みらい塾】を設立し理事に就任。
【講義②】中学生の笑顔から広がる 地域の未来
倉田理事は、みらい塾の概要や「YouKeyプロジェクト(以下、ユキプロ)」の事例等を紹介されました。
みらい塾は、「場を作り、人と人をつなぎ、人をつくる」ことをコンセプトに、地域教育の支援等を行っています。事業の一つである「ユキプロ」では、中学生の探究学習の支援だけでなく、大学生を中学生のメンターとして迎えることで、キャリア形成の支援も行っています。取組においてはそのフィールドを学校に限定せず、南魚沼市全体を大きな教室として捉え、地域の様々な場所や人と関われるように工夫されています。中学生たちの興味や関心を粘り強く引き出し、一人ひとりに合った支援をすることで、地域愛や自己肯定感を高めることに成功しています。
今回の事例から、地域全体で若者の未来を真剣に考え、覚悟を決めて取り組む「組織」や「人」の重要性が分かりました。
【特別講師②】岐阜県飛騨市教育委員会学校教育課 課長補佐 下嶋 健児 氏
1998年より岐阜県小中学校教諭として勤め、教頭を経て、2023年度より現職。2019年の「飛騨市学園構想」の立ち上げからコアメンバーとして参画。
【講義③】「飛騨市学園構想」と飛騨市内の学校の取り組みについて
下嶋氏には、飛騨市学園構想の概要等についてお話しいただきました。
「飛騨市学園構想」とは、保育園・小学校・中学校・高等学校・特別支援学校・家庭・地域が総がかりで、予測困難な時代を生きる子どもたちに、「幸福な人生と持続可能な社会の創り手となる力」を育もうというものです。
飛騨市では、問題解決型の学習を行おうとしていても、受け身の学習で終始してしまうという課題がありました。そこで、子どもたちの問題解決力を育むために、「飛騨市学園構想」が策定されました。本構想で子どもたちの未来像や地域の将来像が具体的に示され、子どもたちの将来像を学校・地域・家庭で共有できました。その結果、全ての中学校において子どもたちが主体的に地域課題の解決に取組み、地域の人がその活動を支える、探求活動が可能となりました。 探究学習の実施後、飛騨市の全国学力・学習状況調査結果においては、地域への関心や社会貢献に関する項目の割合が増えており、地域連携が子どもたちのシビックプライドに良い影響を与えるということを知ることができました。
【特別講師③】岐阜県飛騨市立古川中学校 校長 中村 裕幸 氏
岐阜県大野郡白川村立白川中学校で初任から35年間、小中学校教諭、主幹教諭、教頭、校長、教育委員会勤務。2016年度より、白川村立白川郷学園(義務教育学校)の設立・運営に関わり、2020年度より飛騨市教育委員会学校教育課長、2022年度より現職。
【講義④】地域と学校の協働による「未来の創り手」の育成~「マイ・プロジェクト(地域貢献)」の成果と課題~
中村校長には、古川中学校の「マイ・プロジェクト(以下、マイプロ)」に関する取組等についてご紹介いただきました。
「マイプロ」は、古川中学校独自の取組であり、地域貢献活動を通した人材育成を目指したものです。
古川中学校では、地域の題材や課題を扱う授業が年々減ってきているという課題意識から「マイプロ」が始動しました。2年間の取組の中で、地域イベントへの参加や地元企業とのコラボ等、様々な形での探究学習として実現しています。中村校長は、マイプロを通して、地域の人が喜んでくれるのを生徒が目の当たりにして、それにより、生徒たちが笑顔になってくれることが何よりも大きな成果だと語られました。地域貢献との関わり合いで、子どもたちの自己肯定感が高まるということが分かりました。
おわりに
探求学習が、子どもたちの自己肯定感を高め、将来存分に自分らしく生きていく力に変わるということが分かりました。また、地域活性化のためには、地域全体で、子どもたち一人ひとりをどれだけ大切にできるかが鍵となるということを学びました。
受講者の声
「自分の自治体で事業を進めるにあたって、学校・地域とどのように議論し、連携していくかについて悩んでいましたが、講義を通して、それに対する大きな示唆を得たように思います」
スケジュール
9月22日(金)
13:00~13:10 |
開講式 |
---|---|
13:10~13:30 |
講義①:浦崎 太郎 氏 |
13:30~14:00 |
事例紹介①:倉田 智浩 氏 |
14:00~14:30 |
事例紹介②:下嶋 健児 氏、中村 裕幸 氏 |
14:40~15:30 |
感想共有・質問づくり |
15:40~16:30 |
質疑応答 |
16:30~16:50 |
まとめ |
16:50~17:00 |
閉講式 |