【終了レポート】令和6年度地方創生実践塾in和歌山県みなべ町
終了レポート
2024年09月12日
官民地域連携「梅収穫ワーケーション」で地域活性化&積極的関係人口の創出 ~日本一の梅の産地・みなべ町のウェルビーイングな課題解決事例~
和歌山県みなべ町において、令和6年6月20日から22日にかけて「官民地域連携「梅収穫ワーケーション」で地域活性化&積極的関係人口の創出 ~日本一の梅の産地・みなべ町のウェルビーイングな課題解決事例~」をテーマに地方創生実践塾を開催し、全国の市町村や民間企業等から19人が参加した。
1 開催地概要
和歌山県みなべ町は、県の中央部に位置しており、日本一のブランドを誇る「南高梅」の栽培が行われている。また、炭の最高級品である「紀州備長炭」の生産が盛んであり、「千里の浜」は貴重な自然資源であるアカウミガメの産卵の地としても全国的に有名である。
平成27年に「みなべ・田辺の梅システム」が世界農業遺産に認定され、梅自体だけではなく、その守り抜くべき伝統的な生産方法などにも注目が集まっている。
2 開催地の取組
みなべ町は、全国的に知られた梅の産地であり、南高梅は全国的なブランドになっている。梅を原材料とした梅加工業も発展しており、町内で梅干や梅酒などをはじめ様々な形での加工や関連製品の製造・販売が展開されている。
全国一の梅の生産量を誇り、特産品である南高梅の全国的なブランド力と相まって、加工業や販売業を含めた梅産業が基幹産業となっている。一方で、食生活の変化などによる梅の消費量の減少や価格の低下等により、梅産業を支える町民の所得の減少、担い手の不足や高齢化などの影響も受けている。
梅の収穫には多くの人手が必要であるため、その解決手段として、ワーケーターが梅の収穫を手伝う「梅収穫ワーケーション」を(一社)ウェルビーイング推進協議会が開催している。
3 実践塾内容
(1)講義「日本一梅の産地みなべ町と『みなべ・田辺の梅システム』」
特別講師:みなべ・田辺地域世界農業遺産推進協議会事務局 みなべ町うめ課 主幹 木田勝紀 氏
日本一梅の産地みなべ町と「みなべ・田辺の梅システム」について説明いただいた。
みなべ・田辺の梅システムは、地形や地質を活かした梅栽培、紀州備長炭の歴史、知名度認知度、消費拡大への取組がまとめて世界農業遺産に認定されており、地域内で資源が循環していることが大きな特徴である。
テレワークの推進やワーケーションの可能性が出てきたときに、みなべ町の現状と課題について住民に情報共有がされ、みんなで課題解決に向けた共創・協働活動を行う中で、梅収穫ワーケーションができた。人やチームぐるみの取組であったため、ウェルビーイングが向上し、ワークスタイル、ライフスタイルの変化が起こり、住民や関係者の変化につながっている。
(2)講義「地域の『元気』を取り戻すために、本当に考えなければいけないこととは?」
テレワーク・ワーケーション官民推進協議会 会長 箕浦龍一 氏
現在の日本に起きている人口問題を説明いただき、全国各地が、移住政策・定住促進政策を行ったところで、減り続けるパイの壮絶な争奪戦にしかならず、変化の時代を生きていくうえで大切なことはアップデートし続けることができるしなやかさを持つことが重要だと語られた。
従来の観光戦略とは違う「ワーケーション戦略」は、反復・継続して定期的に訪れてくれるようなコアなファンを獲得することがこれからの地域にとって重要なカギとなる。その際に、地域においては、訪問者との相互の学び合いを考えるべきであり、地域の総合力発揮が求められている。ワーケーションを単なる観光客誘致の新しい手段ととらえたり、移住促進のための手段ととらえたりするだけではあまりにもったいない。総合的な施策のデザインの中で、既往の施策全般を再設計・再構築できるかが地域存続のカギを握ると語られた。
(3)講義「梅ワーが人を惹きつける魅力(ウェルビーイングの観点から)」
講師:株式会社YeeY(イェーイ)代表取締役 島田 由香 氏
なぜ、みなべ町の梅ワーケーションが人を惹きつけるのかについて、その魅力や取組についてお話があった。
島田氏がみなべ町を訪問した際、6月の梅農家は忙しく、人手不足で困っているとの話を聴き、和歌山県で推進しているワーケーションの取組を、町の梅収穫に応用することで、梅ワーケーションの取組が始まり、年々取組件数が増加している。
農家の方は、業務の負担が減るだけではなく、ワーケーション参加者との触れ合いが一番嬉しかったとのことで、気持ちの面でも、いい効果があったことが伺えた。また、参加者にとっても、自然を感じることでポジティブ感情が上がるだけではなく、達成感や農家の人々に感謝される体験を通して、自己肯定感を高めることができたそうだ。仕事をする上で、感情はパフォーマンスに大きく影響するため、ウェルビーイングという考え方はとても大切であることを語られた。
(4) トークセッション「梅収穫ワーケーションがもたらすもの」
登壇者:島田 由香 氏 山本 秀平 氏 コーディネーター:箕浦 龍一 氏
トークセッションでは、島田氏と梅農家の山本氏が登壇し、コーディネーターとして箕浦氏が間に入りながら、梅農家とワーケーションに参加する側の両方の視点で、梅ワーケーションが農家・参加者双方にとってどのような効果があるのか、また何をもたらすのかについて議論が交わされた。
農家にとっては、外の人が関わってくれることで刺激になるほか、自然や景色、梅の形といった当たり前に感じていた部分を褒めてもらえたことで、自分の仕事に誇りを持つことができるようになったそうだ。
また、参加者にとっては、「教えない、期待しない、干渉しすぎない」といった関わりの中で、褒めてもらう、認められるという経験を通して自己肯定感が上がり、自分の意識や景色が変わることに繋がるほか、農業という現場のリアルに触れることで一次産業の大変さや大切さを学ぶことができるということであった。
(5)フィールドワーク「梅収穫ワーケーション」「梅料理体験」
今年は2月の気温が高かったことから受粉があまり上手くいかなかったことから、収穫が早めに終了していたため、隣町の田辺市にて梅収穫ワーケーションをさせていただいた。小雨が降る中、木の間のネットに落ちた梅を拾った。大量に落ちている梅を収穫するのは簡単なことではなかったが、梅の香り、毛の触感、小さくて丸い形の梅に癒されながら、とても良い時間となった。
梅料理体験教室では、5グループに分かれ、地元の方々にサポートいただきながら、梅を使用した4品を調理した。自分たちで調理したもの以外にも梅料理をいただき、梅の活用方法はとても多いことに驚いた。また、地元の方々と触れ合うことで、みなべ町の歴史や町での生活のお話も伺うことができ、貴重な時間となった。
4 おわりに
講義や梅収穫体験、梅料理体験を通し、みなべ町における伝統的な生産方法や梅農家の方々と参加者のつながりなど、実際に梅収穫体験をすることで取組への理解が深まった。
農家の方々にとっては参加者との交流が、参加者にとっては農家への貢献ということがウェルビーイングが向上する要因になっており、梅収穫が双方にとってが良い影響を与えていることが、この取組の一番の魅力であると感じた。
受講者の声
- 実際に体験するからこそ理解できることが多かった。
- 梅干しや、梅商品の加工過程など初めて知ることが多かった。とても手間がかかっていた。梅独自の大きさ、形、匂い、触感には、人を引き付ける魅力があることも感じた。
- 梅の料理体験を通じて、梅のポテンシャルの高さに気づくと同時に、美味しさに感動した。
執筆者
地方創生・情報広報グループ 新井 あす美(長野県小海町から派遣)
????田 光来 (鳥取県から派遣)
企画・人材育成グループ 永森 健太 (北海道芽室町から派遣)
連絡先
セミナー統括課
TEL:03-5202-6134
FAX:03-5202-0755
E-mail:seminar(at)jcrd.jp ※メールアドレスの(at)は@に変更ください。