【終了レポート】令和7年度地方創生実践塾in奈良県生駒市

終了レポート

2025年12月11日

市民とつなぐ、持続可能なシティプロモーション~地域との「関係性」構築から生まれる、まちの愛着や共感~

開催日:令和7年11月21日~22日

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1 開催地概要

 生駒市は奈良県の北西端に位置し、自然豊かな生駒山と大阪方面への高い交通利便性を併せ持つ人口約11万6千人 の住宅都市である。伝統産業の高山茶筌や学研高山地区の先端研究拠点など、多様な魅力が調和し、自然・文化・都市機能が共存する住みよいまちとして発展している。

2 開催地の取組

 生駒市は25~44歳を対象にシティプロモーション「グッドサイクルいこま」を展開し、市民PRチーム「いこまち宣伝部」が地域の魅力発信を担う仕組みを整えている。市民協働による継続的な情報発信を通じ、まちに主体的に関わろうとする意識の高い「まちのファン」を着実に増やしている。

3 実践塾内容

(1)講義「市民と協働した情報発信でまちのファンを増やす~まちの未来に効くシティプロモーション~」
   講師:生駒市広報広聴課 課長補佐 村田 充弘 氏

 生駒市は平成25年からシティプロモーションを開始し、当初は市外に向け転入希望者に向けたPRを展開していた。しかし、PR内容として掲げていた自然環境や利便性は周辺市町村にも共通する魅力であり、生駒市固有の強みとして訴求しにくい点が課題となった。この認識を踏まえ、市民自身が地域の魅力を取材し発信する「いこまち宣伝部」へと方針を転換した。
 いこまち宣伝部は市民から公募で集まった約10名の部員で構成される。任期1年、月1回投稿、一眼レフ貸与など、参加のハードルを下げた仕組みが設けられ、多様な市民が活動に関わっている。約10年間で1,500件を超える記事が発信され、活動は庁内連携や他の地方公共団体との協働にも広がっている。また、市民が未来の暮らし方を語るPRサイト「グッドサイクルいこま」やいこまちマーケット部など、市民協働型プロモーションが体系的に展開されている。これらの取組により、市民がまちの魅力に気づき、地域に関わろうとする意識の高まりが確認されており、シティプロモーションを支える市民参画の基盤づくりにつながっている。

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(2)講義「シティプロモーションは何を実現するのか」
   講師:東海大学文化社会学部広報メディア学科 客員教授 河井 孝仁 氏

 本講義では、シティプロモーションの目的を「地域の持続的発展に必要な資源の獲得、特に地域を支える担い手の確保」と位置づけた。地域は地理的範囲ではなく、多様な主体の思いや参画によって形づくられる"交響"と捉えられ、行政は住民の幸福を支える代理人、住民は主権者として地域の担い手であると整理された。地域の維持には、地域を推奨しようとする意欲、活動に参加しようとする意欲、地域の活動に感謝を示す意欲といった「関与意欲」を高め、その状態を定量的に把握することが重要とされた。これにより、地域のどの層にどのような変化が生じているかを継続的に把握できる。
 担い手形成に向けては、市民による魅力の発散・共有・編集・研磨のプロセスを通じて、地域の価値を自ら語れる状態をつくることが有効とされ、メディアやイベントによる表現手法も示された。また、地域に関わる可能性を持つ人々を潜在的担い手として捉え、関与しやすい機会を設けることで自発的行動が生まれる仕組みづくりが、これからのシティプロモーションに求められる方向であるとされた。

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(3)講義「社会的インパクト起点でまちの広報施策を考える」
   講師:アンドパブリック株式会社 代表取締役CEO 桑原 憂貴 氏

 講義では、事業や施策が社会にもたらす変化を起点に施策を設計する「社会的インパクト・マネジメント」の考え方が示された。社会的インパクトとは、事業の結果として生じる社会的・環境的な変化を指し、短期から長期、小規模から大規模まで幅広い成果を含む概念である。これを活かすには、めざす成果と打ち手の因果関係を整理し、施策を目的から逆算する設計が必要とされた。その具体的手法として、投入資源・活動・直接的結果・短期・中期・長期成果を体系化する「ロジックモデル」が提示され、手段と目的の混在や議論の迷走を防ぐ枠組みとしてロジックモデルが有効であると説明された。
 ロジックモデル作成のプロセスでは、最終的に実現したい状態を言語化し、現状の問題と原因を深掘りし、課題を構造化するステップが示された。また、成果を測定・改善するための指標として、定量・定性双方のインパクト指標の活用と、調査手法の選択が重要であるとされた。さらに、成果の可視化は、施策改善、説明責任、官民連携、職員のエンゲージメント向上に寄与することが示され、社会的インパクトを基軸にした施策の意義が整理された。

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(4)フィールドワーク

 フィールドワークでは、いこまち宣伝部の部員とともに取材を実施し、訪問先の担当者へのインタビューや写真撮影を行った。取材後は、収集した情報を基に各自が記事原稿を作成した。記事作成では、地域で活動する人物の役割や背景を整理して短い文章で表現することが求められた。また、形式的な表現よりも、取材者が把握した事実や着眼点を明確に示し、独自の視点を反映することが重視された。完成した原稿はグループ内で共有し、多様な視点を通じて地域の情報発信における着眼点の広がりを確認する機会となった。

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4 おわりに

 本実践塾では、生駒市の市民協働型シティプロモーションを題材に、地域の担い手形成や社会的インパクトの視点を踏まえた情報発信の枠組みが整理された。講義では、地域の価値を市民とともに構築する仕組みや、関与意欲を把握する考え方、施策を目的から組み立てる方法が示された。フィールドワークでは取材を通じて「人」に着目した情報の捉え方を学び、講義内容との連動を図ることができた。これらの内容は、市民と行政が協働し、地域の持続性を高める取組を進める上で有用な知見となるものである。

■受講者の声

・1日目の講義でシティプロモーションについて学ぶことができ、外向きのことばかり考えていたが、内側に向けた施策の必要性に気づくことができた。
・「生駒が好き」という住民と生駒市職員がつながっていることは、とても強みだと感じた。同じ市役所職員だが、まちを応援する市民を自分が一人も知らないことに気づくとともに、自分が勤務する市のシティプロモーションを考えるうえで、参考にしたい。
・同じ場所に取材に行っても、書く人によって記事の切り口やまとめ方が全く異なること、人によって伝わり方や共感の仕方が異なることが印象的だった。この活動を市民がやる意義を改めて感じるとともに、市職員としてとても価値のある業務に携わっていることを実感した。

■執筆者

 企画・人材育成グループ     伊藤 麻梨子(島根県出雲市から派遣)

 企画・人材育成グループ     竹内 あかり(鳥取県米子市から派遣)