【終了レポート】世界一受けたい婚活支援の授業
終了レポート
2025年12月23日
1. はじめに
令和7年度【ベーシック】新たな知と方法を生む地方創生セミナー「世界一受けたい婚活支援の授業」を、令和7年6月25日(水)にオンライン開催しました。地方公共団体などから25名の参加がありました。
2. 今回のテーマ
近年、晩婚化や未婚率の増加が進む一方、「いずれ結婚するつもり」と回答する人の割合は男女ともに8割を超えています(こども家庭庁調査)。しかしながら、結婚したいと思った時に簡単に相手が見つかるとは限らず、結婚適齢期等もあることから、結婚したい人にとって婚活は重要な手段となっています。
本セミナーでは、現在の結婚事情や婚活の必要性に加え、先進的な地方公共団体での婚活事業の取組事例を紹介していただくことにより、地方公共団体が実施する婚活事業の推進を目指すものです。
3. 講義内容
(1) 講義「世界一受けたい婚活の授業~令和版官製婚活の成功事例とその作り方~」
講師:地方創生・結婚応援事業アドバイザー 荒木 直美 氏
令和の時代を生きる若者の婚活事情と、少子化対策としての結婚支援の在り方について、最新のデータと全国の先進事例を交えながら講義が行われました。地域や企業によって婚活を取り巻く環境は千差万別であり、若者に婚活情報が十分に行き渡っていない現状についてお伝えいただきました。一方で、東京商工会議所の調査によれば、独身者の約8割が「いずれ結婚したい」と考えており、結婚願望そのものが失われているわけではないことも明らかになりました。最大の障壁は「良い出会いがない」ことであり、男性は出会いの場の不足、女性は理想に合う相手と出会えない点が課題であるという指摘もありました。
2024年の合計特殊出生率は1.15と過去最低を更新し、出生数と同様に婚姻数も減少しています。少子化の主因は未婚化であり、これまでの「結婚後・子育て支援」中心の施策だけでは限界があることから、国は今後「出会いの創出」に重点を置く方針を打ち出しています。家と会社の往復だけでは自然な出会いは生まれにくく、出会いの環境自体が大きなブレーキになっているとのお話もありました。
こうした背景を踏まえ、本講義では若者の関心を引く婚活イベントの具体例が多数紹介されました。ドライブスルー婚活やサバイバルゲーム婚活、移住・住み替え婚活など、タイトルやコンセプトを尖らせることで参加への心理的ハードルを下げる工夫が効果を上げていることが分かりました。また、AIマッチングやビッグデータを活用した官民連携イベントなど、リアルとデジタルの強みを組み合わせた取組も注目されています。
若者は、婚活を行うにあたり、タイムパフォーマンス、コストパフォーマンス、安心安全を重視しています。イベントにおいては、参加費に男女の差を設けないことや価値観・ライフスタイル重視の企画設計、ハラスメントにならない「望む人向けの支援」であることの明確化が重要であるとのお話もありました。特に、低所得を理由に結婚を諦める若者への配慮や、婚活格差を生まないための公的サポートの必要性を強調いただきました。
結婚応援は個人への圧力ではなく、生まれてくる命と地域の未来への投資であること、民間任せにせず、行政が安心感という強みを生かしながら官民連携で「出会いのインフラ」を整備することが、人口減少社会における地域活力向上につながるとのメッセージをいただきました。
(2) 事例紹介①「鳥取県の出会い・結婚支援施策~『鳥取モデル』創出の背景~」
講師:鳥取県子ども家庭部子育て王国課 長谷川 和宏 氏
鳥取県の出会い・結婚支援施策「鳥取モデル」についてご紹介いただきました。鳥取県では、知事マニフェストに掲げる「カップリング倍増プロジェクト」のもと、少子化対策を県政の重要課題と位置づけ、「シン・子育て王国とっとり」の実現を目指しています。その中核を担うのが子育て王国課であり、官民連携による出会い・結婚支援事業の新展開を進めています。
本施策の大きな特徴は、若者の意見を積極的に政策へ反映している点にあります。「とっとり未来創造タスクフォース」や「とっとり若者活躍局」といった、官と民の若者で構成される組織を立ち上げ、若者視点の政策提案を県政に反映しています。出会い・結婚支援はその重要テーマの一つであり、若年層のニーズに寄り添った施策設計が行われています。
具体的な事業として、県が開設した結婚支援センター「えんトリー」による1対1のマッチング支援や、全国から参加可能な県独自のメタバース婚活、さらにオミカレとの連携事業が展開されています。中でも鳥取砂丘を舞台とした大型マッチングイベントは、「婚活」を前面に出さず、食や観光、アクティビティを組み合わせることで参加の心理的ハードルを下げ、特に20代女性を意識した企画・広報を徹底したとのお話もありました。その結果、定員を上回る応募があり、マッチング率は2年連続で50%を超える高い成果を上げているとのことでした。官民が対等に連携し、デジタルとリアルを融合させた鳥取県の取組は、今後の行政婚活支援における先進モデルとして素晴らしい事例でした。
(3) 事例紹介②「坂井市の結婚応援の取組について」
講師:福井県坂井市総合政策部 結婚応援課 稲田 祐太 氏
坂井市は「結婚応援日本一のまち」を掲げ、専門部署である結婚応援課を設置しています。同課は、結婚サポート事業に加え、男女共同参画や女性活躍推進事業も所管し、ライフデザイン全体を支える体制を整えています。「結婚するなら坂井市」をスローガンとする結婚応援都市宣言を行い、結婚に対する前向きな機運醸成から、出会いの場の創出、結婚後の生活支援までを一体的に展開しています。具体的には、結婚に関する講座やセミナー、相談会を継続的に実施し、結婚応援サポーターである「マチオン坂井メンター」を養成することで、地域ぐるみの支援体制を構築しています。相談会は毎回定員が埋まるなど、利用者の関心の高さがうかがえます。
また、プライバシーに配慮した出会いの場づくりや、プロポーズを後押しするイベント、結婚後のパートナーとの生活をSNS上で「おのろけ」してもらうプレゼントキャンペーンも特徴的でした。さらに、新婚ハピネス券や住宅支援補助金、若年夫婦向け支援金など経済的支援も充実しており、庁内の他部署と連携しながら育児期まで見据えた切れ目のない支援を行っています。結婚を個人の課題にとどめず、まち全体で応援する坂井市の取組は、行政による結婚支援の先進事例として素晴らしいものでした。
4. おわりに
本セミナーを通じて、少子化の主因が「未婚化」にあり、その背景には若者の結婚意欲の低下ではなく、出会いの環境変化があることを改めて認識しました。荒木氏の講義では、若者の価値観や行動特性を踏まえた官製婚活の工夫が具体的に示され、行政が果たすべき役割の重要性を実感しました。加えて、鳥取県や坂井市の事例からは、若者の声を政策に反映し、官民連携や地域ぐるみで結婚を応援する姿勢が、施策成果につながっていると感じました。結婚支援は個人への圧力ではなく、地域の未来への投資であり、今後の施策検討に大いに参考となる有意義な内容でした。
執筆者:地域活性化センター 移住・交流推進課
宮崎 博行(愛媛県四国中央市から派遣)