【終了レポート】効果的な地域プロモーション ~地域の特性に合わせた戦略を考える~

終了レポート

2025年12月23日

1 はじめに

 令和7年度新たな知と方法を生む地方創生セミナー「効果的な地域プロモーション~地域の特性に合わせた戦略を考える~」を令和7730日(水)に開催しました。地方公共団体職員や高校生を含む38名がオンラインで参加し、地域プロモーションについて学びを深めました。

 

2 今回のテーマ

 地域プロモーションは、地方公共団体が地域の魅力を発信し、その価値を高める取組です。人口減少が進む現代において、観光客や移住者を増やし、地域経済を活性化させる上で、その重要性は高まっています。成功のためには、特産品や文化などの地域資源を活かし、他地域との差別化を図る戦略が不可欠です。

 本セミナーは、株式会社ビームスが全国の地方公共団体と取り組んだ「商品開発支援事業」を軸に、地域の特性を見出し、効果的に発信する具体的な手法を学ぶことを目的に開催しました。

 

3 講義内容

(1) 講義「地域の特色の発掘と発信におけるBEAMSのアプローチと連携手法」
  講師:株式会社ビームス クリエイティブ ビジネスプロデュース1部 ビジネスプロデュース1課  プロデューサー 楠瀬 三邦 氏 

 ①ビームスによる「商品開発支援事業」について

 株式会社ビームスホールディングスの事業会社の一つであるビームスクリエイティブでは、商品開発や宣伝・販促に関する企画制作を行っています。特に創業40周年を機に立ち上げられた「ビームスジャパン」は、国内の素敵な産品を国内外に発信するブランドとして、日本の伝統的な縁起物やクラフト工芸品など、幅広い商品を取り扱っています。

 「商品開発支援事業」は、地域産品に焦点を当て、ビームスの発想力やセンスといったノウハウを生かし、地方公共団体と共同で商品開発を行う取組です。

 商品開発のプロセスは、まず地方公共団体が主体となって事業者の公募を行うことから始まります。採用された事業者との商品開発は、1回目の面談で事業者の状況や想いをヒアリングし、2回目にはサンプルを持ち寄って議論を行います。最終回では商品のストーリーや必要な部材、説明書、プロモーション用の掲出物など、商品化に向けた詳細を決めていきます。ビームスの商品開発におけるアドバイスの特徴として、首都圏のトレンドに左右されるデザイン優先の考え方ではなく、地域らしさや事業者らしさを重視している点が強調されました。

 ②青森県での事例

 青森県では、令和6年にインバウンドをターゲットとした商品開発を行いました。昔ながらの形状を残しつつ、配色や素材、サイズバランスを調整する商品開発を意識しました。木製のガチャガチャの事例では、プラスチックではなく全て木材で制作するというアドバイスを行い、地域らしさを伝えるために地域で親しまれているこけし作家に協力を依頼しました。さらに、エンターテイメント性を高める工夫として、おみくじを入れるなどの取組が紹介されました。

 ③プロモーション展開の手法

 商品開発支援事業の取組が新聞やテレビなどのメディアで取り上げられることで、県民が取組や事業を知るきっかけになることを示唆しました。

 ビームスジャパンの理念として「作っているものを通して地域の魅力が伝わること」を大事にしていると強調しました。最後に、ビームスジャパンの商品開発支援のポイントとして、事業目的やターゲットに合わせた開発、その土地ならではの魅力を表現するアドバイス、県内外への発信を通じた地域の魅力再発見の機会創出が挙げられました。商品の魅力と地域の魅力を一体として発信するプロモーションを心がけていると締めくくりました。

2)事例紹介「自治体との官民連携事例に基づく地域プロモーションの展開」
   講師:株式会社ビームス クリエイティブ ビジネスプロデュース1部 ビジネスプロデュース1課  プロデューサー 楠瀬 三邦 氏

 ①長野県駒ヶ根市とのプロモーション事例 ‎‎

 西に中央アルプス、東に南アルプスを望み、豊かな水資源に恵まれ金属加工業が盛んな駒ヶ根市では、ビームスが市内での撮影やふるさと納税の展開、事業者向けセミナーの開催を通じて、地域の魅力をPRしました。 商品開発では、伝統的工芸品である「伊奈つむぎ」の余剰糸を活用したテーブルセンターやペンケースなどを開発。事業で完成した新商品は、ふるさと納税の返礼品として活用しました。ふるさと納税は、単なる節税対策ではなく、地域を盛り上げる本来の目的を重視し、ビームスとふるさとチョイスが連携して特集ページを設け、産品の情報発信を行いました。事業者向けセミナーでは、開発事例や取組の過程で直面した課題などを共有し、地域産業の活性化を促しました。

 ②岐阜県瑞浪市とのプロモーション事例 ‎‎

 岐阜県瑞浪市とは、美濃焼の一大産地である地域の魅力を伝えるイベントを、名古屋市の商業施設「ラシック」で開催しました。名古屋市への人口流出が進む中、故郷の魅力を再認識してもらうことが目的です。 イベント会場では、美濃焼の物販ブースに加え、瑞浪市化石博物館と連携し、令和4年に発掘された哺乳類の全身骨格レプリカ展示や、学芸員による説明を実施。UFOキャッチャーや鏡越しのフォトブースを設けることで若年層の来場を促しました。その他にも美濃焼のオーナメント色付け体験、地元産蜂蜜の試食、アロマ製作体験など、多様なコンテンツを提供しました。

 特に特徴的な取組として、アート企画を行いました。大量生産される美濃焼の製造過程で生じる「B品(歪みや汚れのある製品)」をキャンバスに見立て、ビームスゆかりのイラストレーターが即興で絵を描くというものです。来場者はアーティストと交流しながら、世界に一つだけのアート作品を持ち帰ることができました。本事業は、瑞浪市から直接受注し、ビームスは商品開発支援、イベントプロモーション、ウェブ及びSNSでの情報発信を担当しました。

 ③一般財団法人かがわ県産品振興機構との取組‎‎

 当該事業では、商品開発は行わず、県産品をビームス独自の視点でキュレーション・セレクトし、首都圏でその魅力を発信しました。漆器や伝統的工芸品が多い香川県の特徴を踏まえ、ビームスは現地を訪問してものづくりの現場を確認し、取扱商品を選定しました。令和6年の企画では、インバウンド需要の高まりを考慮し、クラフトに関心の高い欧米系観光客向けに、視覚的にも訴求力のある皿や箱などの漆器を中心に展開しました。また、香川の手袋産業から派生したレザー小物やキャンバスバッグなども取り扱い、ライフスタイル雑誌「Discover Japan」と連携し、香川の魅力的な商品をライフスタイルに落とし込んだ提案を行いました。

 ④山梨県との取組‎‎

 道の駅富士川を中心とした「南山梨」エリアの活性化を目指すプロジェクトをサポートしました。地域の名称の再構築や新たな楽しみ方の創出、道の駅ブースのプロデュース、ウェブ特集ページやムービー制作が主なプロモーション施策として展開されました。 楠瀬氏は、地元のリサーチとトレンド分析に基づき、「ハローモーニング」というコンセプトを考案。山梨での朝活を提案する地域資源の編集や、道の駅「富士川」内の南山梨インフォメーションブースのプロデュース(設計図制作から実施まで)を手掛けました。ウェブ特集ページでは、「南山梨の朝を楽しもう」をテーマに、各地の朝の魅力を動画で発信し、地域の新たな魅力を伝えました。

 ⑤神奈川県横浜市とのスポーツイベント連携 ‎‎

 神奈川県横浜市では、モルック大会のイベント全体プロデュースをサポートしました。モルックや外遊びに合うビームスらしいキッチンカーや物販ブースの編集、イベント全体の運営、フードのキュレーション、来場者の参加を促すコンテンツ制作などを担当しました。 モルックがフィンランド発祥のスポーツであることに着想を得て商品セレクトを行い、幅広い年齢層が楽しめるよう、子ども向けの体験ブースや缶バッジ制作のワークショップを企画しました。このプロジェクトは、横浜市からモルック協会、そしてビームスへと依頼が繋がり、ビームスはクリエイティブ制作の中核としてイベントの盛り上げを総合的に支援しました。

 ⑥忍びの里伊賀甲賀忍者協議会との取組‎‎

 三重県伊賀市と滋賀県甲賀市にまたがる忍者協議会とのプロジェクトでは、インバウンド向け高付加価値体験ツアーのお土産開発を行いました。日本遺産に指定されている「忍者」をテーマに、ツアー参加者が持ち帰れる地域産品に特化した限定ノベルティを制作しました。 ビームスは、忍者が「半農半忍」であった歴史的背景に着目し、三重県産の松阪木綿を使った作務衣や、伊賀の組紐をあしらったTシャツ、シューズなどを企画・製造。さらに、女性向けには、甲賀忍者の薬草に関する知識から着想を得て、地元の焼き物カップ&ソーサーとハーブティーのセット、地元食材の美容・健康関連のセットなどをプロデュースしました。これらの取組を通じて、ビームス流の文化解釈を生かし、地域のものづくり事業者と連携しました。

 

 講義の最後に、楠瀬氏は地方公共団体との取組から得た気づきを総括しました。まず、地方公共団体の組織の縦割り構造の課題を指摘し、部署を横断した取組の重要性を強調しました。次に、熱意ある担当者の存在の重要性を挙げ、地域を盛り上げたいという熱意のある担当者がいるとことで、民間企業側のモチベーションも高まると述べました。最後に、ファン作りの難しさについて触れ、地域の特性を活かしたファン作りや地域への愛着・誇りを高めていくことは容易ではないが、地域プロモーションによる地域を知ってもらうきっかけ作りが重要だと締めくくりました。

4 おわりに

 本セミナーでは、株式会社ビームスの多角的な地域プロモーションの事例を通じて、効果的な地域活性化戦略の本質を深く学ぶことができました。地域の歴史や文化、特性を深く掘り下げ、「地域らしさ」を重視した商品開発や、ターゲットに合わせた多様なチャネルでのプロモーションの重要性が、具体的な成功事例を通じて明確に示されました。単なる一時的な集客に留まらず、地域への愛着を育む「ファンづくり」が持続可能な地域活性化の鍵であるという視点は、参加者にとって大きな示唆となりました。

 また、地方公共団体内の連携や、担当者の熱意が民間企業との協働を成功させる上で不可欠であるという指摘も、今後の地域プロモーションを推進する上で貴重な知見です。今回の学びを活かし、参加者一人ひとりが自身の地域において魅力の再発見と発信に積極的に取り組み、地域経済の活性化と誇りある地域づくりに貢献していくことを期待します。

 

受講者の声

・地域の人口減と高齢化に歯止めがかからないが、それでも地域に暮らし続けるには、地域に対する誇りやアイデンティティの創出が必要であると思いました。私たちの暮らしの中にあるモノにスポットを当てて、ふるさと納税に繋げたら、観光客へのモノの後ろにあるストーリーとの出会いを生み出せるきっかけになるかもしれないと思いました。

・多くの実践事例をうかがうことができ、地域の事情に合わせて、企業の強みを活かした提案をコーディネートされていることが理解できました。どこの企業でも真似できることではありませんが、地域プロモーションに取り組む上でのエッセンスを知ることができました。

執筆者:地域活性化センター 企画・人材育成グループ

    飯尾 愛子(静岡県浜松市から派遣)