【終了レポート】「持続可能な地域コミュニティを目指し地方議会議員ができること」令和7年度【スタンダード】新たな知と方法を生む地方創生セミナー

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2026年02月10日

終了レポート

2025年12月23日

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1 はじめに

 令和7年度新たな知と方法を生む地方創生セミナー『持続可能な地域コミュニティを目指し地方議会議員ができること』を、2026年1月23日(金)に開催しました。地方公共団体などから18名の参加がありました。

2 今回のテーマ

 本セミナーは、人口減少・高齢化が急速に進む中で、これからの地域社会をどのように維持し、支えていくのかについて、地方議会議員の役割を中心に考えることを目的として開催しました。

3 講義内容

(1)講義 「持続可能な地域コミュニティを実現するために-多様な参加をつくる"仕組み"を考える-」
   講師:高崎経済大学 地域政策学部 教授 櫻井 常矢
  氏

 

「なぜ今、地域づくりが必要なのか」という根本的な問いから講義が始まりました。日本は今後、急速な人口減少が進むことが見込まれており、2070年には人口が約8,600万人、2100年には約6,300万人まで減少する可能性がありま。このような状況は、これまでのような前提で地域運営を続けることができないことを意味しており、人口減少を前提とした地域づくりが必要であると強調されました。

また、地域では、一人暮らし高齢者の増加、災害の増加、農地の荒廃、退職後の生きがいの問題など、暮らしに直結する課題が深刻化しています。これらの課題は、行政だけでは対応できず、地域の力がなければ解決できないものばかりであると指摘されました。

櫻井氏は、「地域づくりとは何か」について、「イベントやお祭りを行うことではなく、地域の暮らしを支えること、地域課題を解決することである」と明確に定義しました。その上で、婦人会、青年団、老人クラブ、子ども会といった基礎的な地域団体の解散が進み、自治会においても高齢世帯の脱退や担い手不足が深刻化している現状を説明されました。

特に重要なのは、「お金がないから活動できない」のではなく、「人がいないから活動できない」ことが最大の課題になっている点です。補助金や交付金があっても、担い手がいなければ地域活動は成り立たず、従来型の手法だけでは限界に来ているという現場感覚が語られました。

こうした状況の中で必要となるのが、団体同士の連携・協働、いわゆる「横のつながり」であり、その枠組みとして地域運営組織(RMO)が重要となります。RMOは、自治会や地域団体を「補完」する役割を持ち、「近隣を自治会が補い、自治会をRMOが補い、RMOを行政が補う」という補完関係が、これからの地域づくりの基本になると述べられました。

また、RMOをつくる際に、自治会と同じメンバーで構成してしまうと、新たな課題解決力は生まれにくくなるため、新しい人材の発掘が不可欠です。組織をつくること自体が目的ではなく、多様な人が参加できる「仕組み」をつくることが重要であり、「組織よりも仕組み」という考え方が繰り返し示されました。

さらに、櫻井氏は、地域づくりは成果だけを見るのではなく、「話し合い」「関係づくり」「人づくり」といったプロセスそのものが重要であると述べました。会議で結論を出すことだけでなく、自由に意見を出し合える話し合いの場をつくることが、新たな担い手の発掘や地域力の向上につながると強調されました。

(2)講義 「 持続可能な地域を創る「共創」のマネジメント~実践から見えてくるシェアド・リーダーシップと結果的インクルーシブ~」
   講師:愛媛県西予市 地域づくり活動センター 主事 上甲 啓一郎  氏

 愛媛県西予市における具体的な取組事例が紹介されました。同市では、市内27か所すべての公民館を「地域づくり活動センター」に転換し、地域づくりの拠点として再編しています。

この取組の背景には、担い手不足や集落活動の衰退、また地域ごとに状況が異なる中で、一律の行政サービスでは対応しきれないという課題がありました。そのため、市民と行政が協力して地域づくりを進める仕組みとして、地域づくり活動センターが整備されました。

特徴的な考え方として、上甲氏は「ピクミン型組織」という表現を用い、強いリーダー1人に頼るのではなく、住民一人ひとりが少しずつ役割を担い、全員が主役となって地域づくりに関わる体制の重要性を説明しました。

また、行政が最初から完璧な制度や仕組みをつくるのではなく、あえて余白を残すことで、住民が関わりやすい環境をつくることが大切であると述べられました。住民を「お客様」にするのではなく、「仲間」として信じ、地域と一緒に考える姿勢が重要であるという点が印象的でした。

(3)講義 「地域づくりの"インフラ"としての地域運営組織(RMO)」
   講師:総務省 地域力創造グループ 地域振興室長 近藤 寿喜  氏

 国の視点から見たRMOの位置づけと施策について説明がありました。地域課題は、自治会や単独の団体だけでは対応が難しくなっており、複数の主体が連携・協働する枠組みとしてRMOが重要です。

RMOは、移動販売や有償運送など、従来の自治会では対応しにくい事業的な取組にも対応できる点が特徴で、地域の実情に応じて、計画・実行・評価・改善を繰り返す柔軟な運営が求められています。

国としては、交付税措置などを通じて、RMOの運営支援や人材配置を後押ししており、単に組織の数を増やすだけでなく、実効性のある運営を行うことが重要であることを強調されました。

(4)トークセッション

 櫻井氏が進行を務め、RMOの本質や人材発掘、場づくりについて意見交換を行いました。

その中で、「最初から組織をつくるのではなく、一人ひとりの想いに沿った行動が先にあり、結果として集団になる」という考え方が共有されました。また、関係人口については、「見えにくい」「続きにくい」「地域に混ざりにくい」という課題があり、RMOのような仕組みが、それらの人たちを地域に受け入れる受け皿として重要であるとされました。

公民館などの施設についても、「講座を行う場」から、「人と人が出会い、関係が生まれる場」へと役割を見直す必要性が指摘されました。若手職員を現場に配置し、地域と直接関わる経験を積ませることの重要性についても議論されました。

4 おわりに

 本セミナーを通じて、地域づくりの本質は、イベントの実施ではなく、「地域の暮らしを支えること」であることが改めて確認されました。行政・自治会・RMOが補完関係を築きながら、多様な人材が関わる仕組みをつくることが、持続可能な地域コミュニティの実現に不可欠です。

地方議会議員には、制度や予算の議論だけでなく、地域の実情を丁寧に把握し、多様な主体が参画できる環境づくりを後押しする役割が求められます。本セミナーは、今後の地域コミュニティ政策を考える上で、非常に示唆に富む内容であり、地方議会議員の役割を再認識する貴重な機会となりました。

受講者の声

・実際に実施できそうな事例を中心にして考え方や理論を共有する組み立ての方が参考になると思いました。
・1期目議員ですので、知らなかったこともたくさん学ばせていただけました。

執筆者:地域活性化センター 地域創生・情報広報グループ

    山田 健太(愛知県春日井市から派遣)