【終了レポート】令和7年度地方創生実践塾in香川県

終了レポート

2026年03月16日

地域再生の最前線に学ぶ官民連携~東かがわ市とさぬき市の"挑戦"に触れる~

開催日:令和7年12月5日~6日

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1 開催地概要

 東かがわ市とさぬき市は、いずれも香川県東部に位置する自然豊かなまちである。

 東かがわ市は香川県の最東端に位置し、人口は約27,000人である。瀬戸内海に面し、穏やかな海と山に囲まれている。手袋の生産が盛んであり、ハマチ養殖発祥の地としても知られている。引田の古い町並みや白鳥神社など、歴史と文化が感じられる地域である。
 さぬき市は東かがわ市の西側に位置し、人口は約44,000人である。津田・志度・長尾などの旧町が合併して誕生した市であり、農業や漁業が盛んである。津田の松原や志度寺(四国八十八ヶ所第86番札所)などの名所があり、自然や観光資源に恵まれている。
 両市はともに瀬戸内の温暖な気候のもと、海と山の自然、歴史、地域産業が調和した魅力ある地域である。

2 開催地の取組

 東かがわ市とさぬき市の両市では官民連携が積極的に行われている。前者では、行政主導の官民連携により「スマート牡蠣養殖事業(ADOMILK)」を進めており、後者では、民間主導で官民連携を基とした、まちづくりを行っている。

3 実践塾内容

(1) 講義①「官民連携によるスマート牡蠣養殖事業で地域の誇りを紡ぐ」

   講師:東かがわ市総務部戦略情報課主幹/官民連携マネージャー 寺西 康博 氏

 本講義では、東かがわ市・安戸池で進む「スマート牡蠣養殖事業(ADOMILK)」を事例に、資源枯渇と担い手不足で「獲る漁業」が行き詰まる中、「育てる漁業」で生業を再生する考え方を学んだ。

 官民連携の枠組みとして、市が事業推進コンソーシアムへ委託し、漁協、観光施設運営会社、スタートアップ、大学、企業等が役割分担して公共価値を創出する点が特徴である(「対等・挑戦・独自の三原則)。技術面では、餌代が不要で環境負荷が小さい牡蠣に着目し、浅場でも可能な養殖方式や、産卵しないよう品種改良された牡蠣の活用、養殖カゴの反転・天日干し・定期選別等により品質を高めている。令和5年から試験養殖を開始し、現在は月1,0001,500個程度を生産・販売、将来的に月5,00010,000個規模を見込む。

 コンソーシアムへの補助金による支援ではなく「委託」とすることで、ミッション達成に向けた企業努力を促しつつ、行政は仕様書等で一定のコントロールを確保している。成功要因として、地域の養殖の歴史理解と現場に足を運ぶことで信頼を積み上げ、本気度を示しながら多主体を巻き込む姿勢が強調された。

(2) フィールドワーク① 安戸池(牡蠣養殖場ほか)視察

 牡蠣の養殖現場を視察。一般的な牡蠣の養殖方法は沖合に牡蠣を沈めて育てる「垂下式」という手法であるが、ここでは海面にカゴを浮かべて育てる「シングルシード方式」で養殖を行っている。定期的にカゴをひっくり返すことにより、殻同士がぶつかり合い、丸くて美しい形状になっている。

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(3)  講義②「津田エリアにおける官民連携と越境連携について」

   講師:株式会社ゲンナイ代表取締役/一般社団法人さぬき市津田地区まちづくり協議会理事 黒川 慎一朗 氏   

 さぬき市津田地区では、行政にはハードルの高いエリアリノベーション型の開発手法を採用しており、特定のエリアに焦点を当てたまちづくりが進められている。講義では、民間主導で作成された地域ビジョンを通じて、具体的な開発計画がどのように形作られ、実行されているかが紹介された。その中で、指標に「町の密度(分子に『人・金・店』、分母に『対象エリア面積』)」を設定し、町の密度を高めることでエリアの価値の最大化を目指している。地方においては、分子を増やすことは至難の業であり、分母をいかに小さくするかを考えることが重要であるとしている。

 また、「弟子入り型地域おこし協力隊」と題して、地域おこし協力隊制度を活用した、津田地区にピザ屋を開業するプロジェクトが紹介された。このプロジェクトでは、応募多数の中からあえて飲食未経験の若者を採用し、地域のイタリア料理シェフの指導のもとでピザ作りの技術を習得させ、モデル店舗を成功させることで他の事業者や地域住民に対しても「自分でもできそうだ」と思わせる効果を狙っている。

 さらに、官民連携の課題として、形だけの連携で終わってしまう事例が多い中で、黒川氏は具体的なアクションを伴う連携を重視している。提案数を重視し、多くの企画を提案することで成功事例を積み上げるアプローチを採っている。

 また、メディア戦略と広報活動も重要な要素として挙げられている。黒川さんは、「ウラツダ」というエリア名称をブランド化することで、地域の魅力を効果的に発信し、外部からの注目を集めている。新店舗の情報をメディアに提供し、地域の注目度を高めるための広報活動が積極的に行われている。 

(4) フィールドワーク②

 裏津田商店街をグループに分かれて散策。海辺の空き家や空き倉庫をリノベーションした店舗が立ち並んでいる。この商店街を利用するための駐車場がなかったことから、市は臨時駐車場を整備し、集客を後押ししている。

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(5) 講義③・まとめ

   講師:株式会社HYAKUSHO代表取締役 湯川 致光 氏

 2日間の講義を通して紹介された「行政主導」と「民間主導」それぞれの官民連携の取組について振り返りが行われた。

 「行政主導」の取組は、長期的な視点での整備・維持、制度・法令・補助金の活用、既存インフラの活用が強みの特徴である。

 一方、「民間主導」の取組は、スピード感と柔軟性、創造性・デザイン性の高い事業構築、収益性や持続性を意識した運営が強みの特徴である。

どちらの官民連携の取組が良い悪いではなく、地域の課題の性質に合わせた組み合わせの選択が重要であることが示された。今後、官民連携事業については、それぞれの課題の性質に応じて官民の強みを組み合わせる設計力が必要である。自分の地域にはどのような課題があり定義づけられるか考えていくことこそが、地域活性化の出発点であることが投げかけられた。地域活性化には、理想を掲げることが必須であることが強調された。

4 おわりに

 本実践塾では、東かがわ市及びさぬき市における官民連携の事例を通じて、地域課題の定義から事業設計、持続可能な運営体制の構築に至るまでの実践的な取組が示された。東かがわ市の「スマート牡蠣養殖事業」では、資源枯渇や担い手不足という構造的課題に対し、「育てる漁業」への転換を図り、委託型コンソーシアム方式により多様な主体が役割を担う仕組が構築されていた。行政が一定の統制を保ちつつ、民間の創意工夫と挑戦を引き出す設計は、公共価値創出の一つのモデルである。

 一方、さぬき市津田地区では、民間主導によるエリアリノベーション型まちづくりが展開され、「町の密度」という独自指標のもと、対象エリアを絞り込み価値を高める戦略が実践されていた。また、「弟子入り型地域おこし協力隊」やブランド化戦略など、具体的アクションを伴う越境連携が地域内外の関係人口を拡張している点が特徴的であった。

 両事例を通じて、官民連携には行政主導型と民間主導型それぞれの強みがあり、重要なのは優劣ではなく、地域課題の性質に応じて最適に組み合わせる設計力であることが示された。理想を掲げ、核となる人材が本気度をもって周囲を巻き込みながら挑戦を重ねることこそが、地域活性化の出発点であると学ぶ機会となった。

受講者の声

・失敗を恐れないような東かがわ市の官民連携方針は見事と思いました。

・行政側の視点でしか見えなかった事業を民間目線、地元目線でわかりやすく講義していただき、 参加して良かった。

・官民連携のタイプの違う二つの取組を勉強したが、どちらも核になる人の「こうすればうまく行く」という信念が周囲の人を巻き込み、物事が進んでいくと思った。

執筆者

企画・人材育成グループ 井下 雄翔(福井県から派遣)

企画・人材育成グループ 小西 悠貴(北海道ニセコ町から派遣)

移住・交流推進課    実 雄飛 (鹿児島県奄美市から派遣)