【終了レポート】令和7年度地方創生実践塾in長野県千曲市
終了レポート
2026年03月17日
自発的に楽しむ、関わる地方創生 ~マグネット人材が紡ぐ内外「共創」の可能性 ~
開催日:令和7年6月19日~21日

1 開催地概要
長野県千曲市は、県北部(長野市と上田市の中間)に位置し、面積約120km²、人口約5万7千人の市である。市内を千曲川が流れ、山々に囲まれた自然豊かな地域で、あんずやリンゴ、ブドウなど果樹栽培が盛んである。近年では、日本遺産「月の都 千曲」に認定された姨捨の棚田や、開湯120年を超える戸倉上山田温泉などを中心に、歴史と文化を活かしたまちづくりが進められている。
2 開催地の取組
関係人口を創出するためには、地域や観光資源ではなく人と人とのつながりが大切であり、地域内の人材を外部とつなげる「マグネット人材」が重要な役割を担っています。千曲市では立場も様々な「マグネット人材」の活躍により、地域内外の方同士の交流を促進することで関係人口の創出と新たなまちづくりが生まれています。
3 実践塾内容
1日目
①千曲市紹介
講師:千曲市役所商工観光課 冨田 美有 氏
千曲市の観光について、写真を見ながら説明を受け、観光の特徴と実態について学んだ。県内でも利便性の高い交通インフラが整っており、温泉地でもあるため宿泊地として選ばれやすい。観光名所としても棚田やあんず畑が有名であり、地域全体で様々なスポットがあることを学んだ。
②GSTX認証につながる持続的な観光地づくり
講師:信州千曲観光局 専務理事 小沼 浩栄 氏
千曲市版のDMOのビジョン・コンセプトとして,戸倉上山田温泉が延泊したくなる長期滞在に適していることを主軸に様々な事業を展開している。温泉街にはスナックが多数あり、それを活かしたNEOネオンという取組を実施し、今までになかった発想を活かし、若年層を含めた新規顧客の獲得とスナック文化の持続目指しており、GSTG(グローバルサステナブルツーリズム協議会)のTOP100に認定されている。
③まちづくりで自発性を上げる方法とこの3日間の過ごし方
講師:株式会社ふろしきや 代表取締役 田村 英彦 氏
実際にワーケーションイベントを20回以上実施している中で、訪問者数やワーケーション中の観光消費額よりも、人との繋がりから生み出される社会的インパクトに重きを置き、人を通して全方向に波及するワーケーションの取組の説明を受けた。特にこの3日間では自分の五感を大事にし、自分の心で感じて、自分の頭で考えることが必要であるとし、これからの体験の心構えを受けた。
④非日常での越境学習の重要性・活かし方
講師:一般社団法人官民共創未来コンソーシアム 理事 箕浦 龍一 氏
世界の情勢は大きく変わりつつある中で、組織や地域の中に閉じこもっていては、業界のルール・常識という見慣れた景色に安住してしまい、周りの世界の変化に気付きにくくなる。そんな中、組織や地域の垣根を越えて、異業種・異地域の人同士がお互いに交流しながら学び合う「越境学習」が注目されるのは時代の必然ともいえる。地域内外の人同士の相互対等な情報・価値の交換こそがワーケーションの真価である。人は人としかつながらないことを念頭に、新たな観光戦略を立てるうえで地域人材を発掘し、育て、支援していくことが必要と説明があった。
⑤仕事や暮らしの質を上げる活用の仕方
講師:みたらしらし 代表 山崎 哲也 氏
温泉やサウナの体への影響を学んだうえで、2日目に行うサ鉄の仕組みについて説明があった。サ鉄とは、サウナと鉄道を組み合わせて考えたもので、車ならすぐ着く場所にわざわざ駅から歩いていくことで、旅行感の演出や、公共交通の利用促進、街中の回遊を目的としており、単なるサウナの体験にとどめない観光を提唱している。

2日目
フィールドワークを長野市と上田市の2つの班に分かれて行い、目的地であるサウナと温泉に向かう工程の中でまちづくりの紹介を行うというものだった。
(1)長野市温泉班
講師:長野県産業立地・IT振興課 清滝 葵 氏
長野市温泉班は清滝氏の案内のもと、長野市内でフィールドワークを行った。くらしふと信州では、長野県ゼロカーボン戦略及びワーケーションについて説明を受けた。長野県ではゼロカーボンに力を入れており、二酸化炭素を含む温室効果ガス正味排出量を2050年度にはゼロにすることを目指している。達成のために県や市町村だけでなく、県民にも自分事として取り組んでもらうことを課題とし、県内各地で行われているゼロカーボンに向けた取組事例の紹介や、ゼロカーボンに向かって実践者同士がつながることが出来る場の提供等を行っている。
また、長野県ではテレワークを普段のオフィスや自宅ではなく、信州ならではの魅力に触れながら行う「信州リゾートテレワーク」という新たなライフスタイルを提案している。ホームページでのコワーキングスペースや宿泊施設の紹介や、「越境」をテーマにワーケーション・テレワーク実践者と、県内で活躍する関係者が信州リゾートテレワークの魅力や効果を語る「クリエイティブ コネクト」を定期的に実施しており、テレワークの推進により、観光客が少ない平日に長期滞在者が増加することで経済効果に繋がることを期待しているという。
信州地域デザインセンターは、長野県が主体となって公・民・学が連携し市町村のまちづくりをサポートする広域型のまちづくり支援組織として設立された。約100年前に建てられた歴史ある古民家を当時の風情を活かしながら明るい空間にリノベーションした建物の2階にあり、市町村が進めるまちづくりを支援する【支える】、行政職員等を対象としたまちづくり人材育成の【育む】、県内外の情報収集・情報発信を行う【発信する】を軸にまちづくりの「場」を生み出す活動を行っている。
R-DEPOTは「Recycle(継承)」「Regional(地域)」「Relation(つながり)」という"3R"を理念に据え、地域文化や暮らしを尊重しながら、移住・創業・まちづかいの拠点として機能する場づくりを目指している。古民家や空き家から集めた道具や家具の販売、リメイクを行い、地域に残るモノの価値を再生する取組やコワーキングスペースや貸出スペースの運営、新しく事業を立ち上げたい人と古民家や空き家のマッチング事業等を行っている。

(2)長野県上田市
講師:上田市役所都市計画課 倉根 明徳 氏、上田市役所市民課 武井 志保 氏
上田市はサウナと鉄道を融合させ、目的地のサウナまで歩くという新しい旅のスタイル「サ旅」に取り組んでおり、車利用が多い地方だからこそ、列車や徒歩の旅をサウナ体験の一環として楽しめるような企画を行っている。そこで、午前中にフィールドワークを行いながらまち歩きを行いつつ、午後にサウナ体験を行う「サ旅」を体験するプログラムを行った。
上田市は、古き時代の面影を残す町並みが保存されている。戦国時代に生まれた上田城の城下町であるように、新幹線も停車する上田駅の向かいにも石垣が残されており、理由について当時の地形も交えて説明があった。また、上田市は、旧北国街道上田宿としての歴史がある。その当時の宿場町の街並みを保存した柳町地区と呼ばれる場所があり、当時からの旅籠や呉服屋、酒屋などが軒を連ねる中で周遊を行った。一方で時代を下った昭和・平成の文化を残すものもあり、柳町地区に向かう中で大正時代に作られ、100年以上の歴史を誇る映画館が存在し、現在でも利用されている様子を拝見でき、他には柳町地区の中で平成21年に公開されたアニメ映画「サマーウォーズ」が上田市を舞台にしている事もあって、キャラクターの木彫りの像やアニメグッズが置かれているなど時代を超えて、人々を引き付ける上田の魅力を我々自身が「サ旅」として体験しながらサウナ施設へ向かった。
午後からはサウナ施設「hyva sauna」に到着してサウナ体験を行った。こちらは設立のコンセプトが地域活性を軸に運営するサウナ複合施設となっている。サウナをきっかけにして人が集まれるようにワーケーションの利用ができるスタジオを用意するなど、様々な使い方を用意している施設である。サウナ室は信州の木材でつくられ、室内ではロウリュウと呼ばれるサウナストーンに水をかけて蒸気をかける行為に千曲川の水から作られた日本酒が使用されている。水風呂には上田を囲むアルプスの山々からの地下水が張り巡らされ、整いスペースと呼ばれる休憩場所では上田の山々を一望できる。当施設を利用するだけで上田の自然を味わえるような設計がされていた。


2日目の最後には両コースが合流し、トークセッションと交流会が開催された。トークセッションでは姨捨ゲストハウスなからやオーナーの鍛治 博一 氏、おせっかいゲストハウス昭和の寅やの清水 則子 氏を特別講師に、千曲市でどのような形で事業を行いどんな人と出会ったかの経緯を伺った。その中で、両者ともたくさんの人と関わっており、その中で賛同者が場面を変えつつ必要な時に協力し合う共助の関係性が成り立っていることが分かった。その橋渡しとして今回の講義の主任講師である田村 英彦 氏や山崎 哲也 氏の名前が挙がり、人と人をつなぐのも人であり、その人財こそマグネット人材と呼べるのではないかと改めて実感できた。その後の交流会では特別講師のフレスコラボ代表小林 賢一 氏、管理栄養士の白石 芽依 氏が調理し、千曲市の特産品を使った料理で参加者同士の懇親を図った。


3日目
午前中の早い時間に千曲市の名産である里山あんずを収穫している里山あんず農園を訪れ、里山あんずの収穫体験を通じて千曲市で行っている「サトヤマフッド」の取組について紹介があった。「サトヤマフッド」は、千曲市の森・倉科地区で江戸時代から栽培が盛んに行われていたあんずの農地を活用し、子供から大人までみんなが遊んで学べるイベントを行う交流型シェア農園プラットフォームのプロジェクトである。ここでは前述したあんずと千曲市の歴史を紹介してもらいながら、農家の方と一緒にあんずの収穫体験を行い、珍しいあんずの生食もすることができた。地域住民の高齢化や耕作放棄地などの課題を乗り越え、今そこにあるあんずの里が未来へ受け継がれるように体験を通じながら、持続可能な地域づくりを進めているとのことだった。
あんず農園を訪れた後は、千曲市の屋代地区にある萬屋ビルヂングを訪れた。萬屋ビルヂングは1Fに食堂、2Fにシェアラウンジ、3Fにサテライトオフィス、屋上にサウナスペースのある複合施設で、「食べる、働く、遊ぶ、つながる」を楽しめる商業施設である。令和4年に千曲市で就職できる業種の選択肢が必要と考え、それまで千曲市になかったテレワーク可能なサテライトオフィスを中心とした新しい拠点として活用されている。ここでは施設の案内が最初に行われた後、自身が所属先で取り組みたい事業を考え、スライドを作成しその内容をプレゼンするというワークショップに取り組んだ。内容を考え整理する時間がスケジュールの都合上多く確保できなかったため苦労したが、私が現在担当している業務を踏まえて派遣元で行いたい業務を説明できた。また他の参加者の地域ごとの特性や課題を知り、それに向けてどのように解決していくかの方法論を学べたことはとても良かった。

4 おわりに
3日間の工程の中で、実際に現地に行き体験することや、様々な人との関わりあいを実際に体感し、マグネット人材の大切さに気付くことができた。何か起きそう、何か面白そうから人が集まり、人が人を呼び関わっている全員が楽しそうに事業を行っているのが印象的だった。
この視点は地方公共団体職員だけでは持ちにくく、先にやることを決めて型にはめてしまう行政ではこの活動は発生しない。そのため、ビジョンの共有であったり、やりたいことをやりたい人と一緒にできる環境を整える必要がある。
■受講者の声
・小さなつながりからその輪を広げ様々な人たちを巻き込んでいくことは活動のひとつの理想だと感じた。行政だけに頼らないその姿勢は素晴らしいものがあり、単に好きというだけで実践できないものを感じる機会となった。
・宿や食など様々な観点から、地域を活性化する方法を学ぶことができて大変面白かった。
・講師の方々や説明いただいた地方公共団体の関係者の皆様だけでなく、参加者の皆様からも地域をより良くしようとする熱い想いが伝わってきた。こうした方々が地域にさらに増えていくことを心より願っている。
■執筆者
企画・人材育成グループ 永森 健太(北海道芽室町から派遣)
企画・人材育成グループ 笠 千尋(福岡県飯塚市から派遣)
移住・交流推進課 小森 康平(長崎県諫早市から派遣)