【終了レポート】そろそろ知っておきたいNFT

終了レポート

2026年03月24日

1 はじめに

 令和7年度新たな知と方法を生む地方創生セミナー「そろそろ知っておきたいNFT」をオンラインにて開催し、地方公共団体などから19名の参加がありました。

2 今回のテーマ

 現在、少子高齢化や過疎化など地方公共団体は厳しい課題に直面しています。そういった環境の中で、「関係人口の拡大」・「地域活性化」・「歳入創出」がこれまで以上に重要性を増しています。NFTはデジタル技術を活用した新しい地域づくりの手法であり、先述の課題に有効なツールでもあります。本セミナーでは地方創生の現場で活躍する人々にとって学ぶ機会が少ないNFTについて、基礎知識から活用事例、最新動向などを勉強しデジタルの力による地域活性の可能性を探ることを目的に開催されました。

3 講義内容

(1)主任講師による講義
講師:東武トップツアーズ株式会社 地域創生・ソーシャルデザイン推進部 地域創生事業担当専門部長 利重和彦 氏

 旅行会社の社員という立場で、地域おこし事業や地方創生事業などを通じて長年「自治体の課題解決」に取り組んでこられた経験を活かした実践的かつ具体的なエピソードを取り入れた講義でした。

 はじめに、「NFTとはどういったものか」という説明がありました。NFTは資産価値を持つデジタルデータのことで、NFTを発行することによりデジタルデータに「一点もの」としての価値を付与することが可能になった(仮にデジタルデータを第三者に送った場合、コピーは作成されず送信元から送付先に移転する)というお話でした。NFTを自治体が発行するメリットは「予算ゼロでも始められる」「交流人口・関係人口の拡大ができる」「地域経済の活性化と歳入確保につながる」というものがあるとの説明がありました。

 次に自治体として初めてNFTを発行した山形県西川町の事例紹介がありました。西川町は2023年に「デジタル住民票NFT」を抽選販売した所、注文が殺到したとのことでした。西川町はNFTを「収入を確保しながら関係人口を作るためのツール」と位置付けており、お金儲けを目的としていないことが特徴です。そして町内の温泉が無料になる特典をつけるなど、西川町に来てもらうための工夫がされているとのことでした。西川町はその後も「公園の命名権付NFT」や「町の名産品を使ったNFT」「デジタル住民票第二弾」など次々と新たな試みを実施し、町への訪問者を増やす取り組みを行い、地域経済の活性化に努めているそうです。利重氏のNFTも含んだ地域創生事業は令和6年度の総務省優良事例に選ばれた実績もあるとのことでした。

 次に茨城県八千代町の事例紹介がありました。八千代町のNFTの特徴は販売額である1,000円分の特典を毎年保障しているというものです。八千代町は「とにかく町に来て欲しい」という思いでデジタル住民票NFTを「無限フルーツチケット」という名前で販売し、名産品のメロンなど農作物1,000円分を配っているそうです。デジタル住民票を持っている人が町の花火大会をボランティアで手伝ってくれるようになるなど、関係人口の創出につながっているというエピソードの共有がありました。

 講義の最後に、NFTは「開始にお金はかからない」「担当者の負担も少ない」「やればやるほど成果が出る」という説明がありました。そしてNFTの導入によって「地方公共団体で関係人口の創出につながり、地域の未来を変える一助とすることができる」というお話がありました。

(2)事例紹介「羽曳野市デジタル住民票NFT」
講師:大阪府羽曳野市 教育委員会事務局生涯学習部 文化財・世界遺産室室長 辻村真輝 氏

 羽曳野市が令和6年度から実施している「デジタル住民票NFT」を販売する取組について説明がありました。同市はベッドタウンの性質が強い自治体で、観光の町ではないため対外的なアピールに課題を感じていました。そこで近畿地方初の取組として令和6年10月から「デジタル住民票NFT」の販売を開始しました。

 発行するNFTは「自治体のファンクラブ会員証」という位置付けにして、「関係人口の拡大」「地域経済の発展への寄与」「地域の魅力発信」という3つの目的を持たせています。NFTのデザインは、地域資源を活かしたデザインにして街の魅力をアピールすると同時に、アニメキャラなどの魅力あるオリジナルデザインを採用することで、デザインからの誘客を狙うことができるよう工夫したそうです。また、NFT所有者へ羽曳野市内の店舗における無料特典や割引を設定すると同時に、オンラインコミュニティへ参加できるようにするなどして、羽曳野市に来てもらうきっかけづくりだけではなく、「(購入者には)お金で買えない体験をして欲しい」という思いが込められた購入特典が設定されています。

 以前、羽曳野市は同じような企画を「紙のカード」を発行することで実施したことがあるとのことですが、紙のカードは印刷・発送に手間とお金がかかる一方、購入者の手元でカードを紛失してしまうリスクがあったり、カードを自宅で保管したまま携帯せずに外出してしまうという状況が多数発生したりするなど、お世辞にも効率のいい状況とは言えなかったそうです。それと比べるとNFTはスマホに入れておけばいいものであるため、コストやリスクの面で手ごたえを感じているとのことでした。その後、第1回が好評だったことから内容を強化し、販売価格を初回の1,000円から2,000円に値上げした第2弾も発売されました。第2弾は第1弾ほどの売れ行きではなかったものの、大阪・関西万博で販売されるなど羽曳野市の広報に役立ったようです。

 講義の最後に、羽曳野市における「デジタル住民票NFT発行事業」が成功であったのか失敗であったのかについて講師から言及がありました。「販売数だけを見ると成功とはいえないものの、本来費用がかかるプロモーション事業が費用ゼロで実施できた上にさらに収益が得られ、羽曳野市としては新たな財源を手に入れることができた」という成果を考えると、一定の成功は収められたと考えておられるようです。

(3)終わりに

 私はこれまでNFTについて詳細まで把握できていませんでした。「無形のデジタルデータを販売する」という大まかな概念は知っていたものの、無形のものに対しどうやって価値を創造し販売に結びつけていくのかが理解できていない状況でした。今回、具体例も交えながらNFTについて学ぶことができたことで、これまでの疑問を解消させることができました。そして自治体によって金額の規模は異なるものの、NFTが自治体の新たな財源となることを知り目から鱗でした。また、「NFTによって関係人口が創出される→当該自治体内の消費行動につながり経済効果を生み出す」というサイクルを知ることができたのは大変勉強になりました。一方で、今後さらに多くの自治体で発行・販売されるようになった場合、競争が激しくなり内容の差別化やPR方法がいままで以上に難しくなるのではないかと感じました。

受講者の声
NFTの活用事例を知ることができ、イメージができるようになった。
・先行事例を交えながらの説明で分かりやすく、事業に携わった方の生の声が聞けて良かった。

執筆者:地域活性化センター 総務課

    齋藤

連絡先

セミナー統括課
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