【終了レポート】令和6年度地方創生実践塾in神奈川県綾瀬市

終了レポート

2024年07月04日

何もないまちがロケの聖地に~ロケ誘致による地域活性化~

令和6年5月14日(火)、令和6年5月31日(金)~6月1日(土)に、「何もないまちがロケの聖地に~ロケ誘致による地域活性化~」をテーマに地方創生実践塾(以下「実践塾」という。)を開催しました。

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1 開催地概要

 神奈川県綾瀬市は、神奈川県のほぼ中央に位置する人口約8.3万人のまちである。遠くには富士山を望み、中央地には特産品のトウモロコシやブロッコリーなどの広大な畑が広がる自然豊かな面を持つ一方で、高い技術力やノウハウを持った製造事業所が集積する「ものづくり」のまちでもある。

2 開催地の取組 

 有名な観光地が無いなど、ロケーション的には不利な状況にありながらも、地方公共団体・民間企業・市民が一体となったロケ誘致を強みに、毎年数多くのロケ受け入れを行っている。ロケを活用した地域のプロモーションに留まらず、地域経済や地域の人々、産業に光を当てた地域活性化に取り組んでいる。

3 実践塾内容

 今回の実践塾は、「何もないまちがロケの聖地に~ロケ誘致による地域活性化~」をテーマに、ロケ誘致による地域活性化の手法を学ぶため、全国の地方公共団体や民間事業者などから25名が参加した。

(1) 事前講義(オンライン)
特別講師:綾瀬市商業観光課 主幹 稲谷 雄介 氏

 綾瀬市での実践塾をより実りある内容にするため、受講者への予習及び予備知識の注入を目的に事前講義が開催され、主に綾瀬市の紹介と綾瀬市総合計画2030について話した。
 はじめに綾瀬市とはどのようなまちか解説した。「何もないまち」と強調しており、具体的には「鉄道の駅がない」「警察署がない」「有名観光地・観光協会がない」「海も山もない」と説明した。何もないまちがロケによってまちをどのように活性化させていったか、実践塾の本番に繋がる内容だった。
 綾瀬市総合計画2030は、これからの綾瀬市をどのようなまちにしていくのかという方針を示した計画で、その中の観光プロジェクトとして位置付けた取組がロケツーリズムであると解説した。将来予定しているプロジェクトとして、令和7年に既存の公園を改修した「綾瀬ローズガーデン」の設立、令和9年には道の駅の開業を予定している。ロケ誘致が関係人口を誘客し地域活性化に繋がる、綾瀬市の未来計画を語った。

(2) 講義「これまでのロケの取組」
主任講師:綾瀬市商業観光課 課長 平野 義久 氏

 講義は「ある綾瀬市のパン屋の売り上げランキング1位は何か」という問いから始まった。受講者の中では「あんパン」や「メロンパン」等の回答が出たが、正解は「コーヒー」であった。パン屋と聞けばパンしか売っていないという思い込みから脱却することが、0から1を生み出す秘訣だと語った。そこで綾瀬市の「何もないまち」を、「どこにでもありそうな風景を撮ることができるまち」と言い換え、撮影の利便性をアピールした。さらに、都心からのアクセスの良さも相まってロケ誘致へ繋がったと解説した。
 しかし、ロケ誘致は一過性のブームに終わることが多く、継続的な誘致が必要となる。そこで、綾瀬市のロケの受け入れ態勢を強化することに着手した。候補地の紹介・撮影場所への交渉など様々な撮影協力を行い、受付から撮影まで窓口を綾瀬市で一本化し、迅速な対応が可能となった。こうして制作会社からのリピーターも増え、「ロケの聖地」として地域活性化に成功したと語った。

(3)対談「官民連携のロケ誘致について」
特別講師:あやせ市ブタッコリ~ロケ隊 隊長 比留川 実 氏
     綾瀬市商業観光課 主事 大石 詩織 氏

 地元有志で構成される、あやせ市ブタッコリ~ロケ隊(通称:ブタロケ隊)隊長の比留川氏、綾瀬市商業子観光課のロケ担当である大石氏が登壇し、ブタロケ隊の活動などについて対談形式で説明を行った。
 ブタロケ隊は、市と連携し綾瀬ロケーションの運営を行うとともに、商工会と連携しご当地グルメの開発を行っている。ブタロケ隊と市が連携をすることで、制作側からの様々な要望にスムーズに対応できている。また、ブタロケ隊はご当地グルメの開発や撮影時の差し入れを通じて、ロケとグルメを組み合わせたロケツーリズムを推進している。比留川氏は、ロケ誘致は地域活性化のための手段のひとつであり、今あるものに何を足すかによって、やるべきことが決まると語った。

(4) 講義「制作会社から見た魅力的なロケ誘致」
特別講師:株式会社ドラゴンロケット 代表取締役 松村 龍一 氏

 綾瀬市で全面ロケが実施された、2024年8月公開予定「愛に乱暴」のプロデューサーである松村氏が、制作会社から見たロケ誘致における魅力的な行政の取組について解説した。
 松村氏は、官民一体となって撮影のサポートができる体制が構築されている自治体は、制作側にとって非常に有難いと述べた。事実、「愛に乱暴」においても市を上げた協力体制が整っていたことが、綾瀬市での全面ロケを決定した一因になっている。今後の相互体制の構築に向けて、地域発の独自の作品を製作することを念頭に置きながら行政がロケ誘致に取り組んでくれることが理想であると話した。

(5)パネルディスカッション
パネリスト:綾瀬市 市長 古塩 政由 氏
      あやせ市ブタッコリ~ロケ隊 隊長 比留川 実 氏
      株式会社ドラゴンロケット 代表取締役 松村 龍一 氏
ファシリテーター:綾瀬市商業観光課 課長 平野 義久 氏

 初日の最後に、パネルディスカッションを行った。パネルディスカッションでは、3名のパネリストによる、ロケツーリズムに対する思いや行政・ブタロケ隊・制作会社による連携について語った。ディスカッションの最後には、これからロケ誘致に取り組む自治体に向けてアドバイスがあった。古塩氏は自治体の売りを行政の工夫によって周知する重要さについて、比留川氏からは具体的に情報番組のホームページに市のPRをすること、松村氏からは作品に関わる人と出会い関係を築き、自治体の強みを売り出すことの大切さを話した。

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(6)フィールドワーク
訪問先:①相鉄バス営業所 ②五社神社 ③城山こみち ④綾瀬市役所

 2日目の午前中は綾瀬市内のロケ地を巡り、ロケ誘致に対する地域の方々の思いを伺った。地域の方々は「綾瀬市のためになるなら」「少しでも地域活性化につながれば」という共通した意識を持っており、官民一体となったロケ誘致の体制が構築されていた。

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(7) グループワーク「自分が監督だったら綾瀬市でどんな映画が撮りたいか」

 午後からのグループワークでは6班に分かれて活動した。各班に、俳優が書かれたカード3枚と綾瀬市ロケーションサービスに登録されているロケ地が書かれたカード5枚が配られた後、俳優カード3枚とロケ地カード5枚のうち3枚を使用して、制作側として綾瀬市でどんな映画を撮影したいかを考えた。作品内容だけでなく、映画が完成した後の綾瀬市とのタイアップ事業についても検討し、映画を通じて地域を盛り上げる方法も話し合った。発表は制作記者会見をイメージして行われ、多種多様な映画が提案された。

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4 おわりに

 綾瀬市では、何もないまちから観光資源を創り出すという目標を掲げ、都心からのアクセスも生かしロケ誘致に繋げていた。さらに、制作会社からの受付を行政で一本化し、ブタロケ隊と協力しながら共通意識を持ってロケ誘致の受入体制を築いていた。
 今回の実践塾では、0から1を創り出すための発想力と、行政・ブタロケ隊・制作会社の官民連携による地方創生のノウハウを学ぶことができた。

受講者の声

  • ロケ誘致にあたって官民一体の体制を構築することの重要性を学ぶことができた。
  • 綾瀬市がロケ誘致に力を入れられていることは知っていたが、実際にどのような取組を行なっているのか、どのような方々が関わっているのか、非常に勉強になった。
  • 制作会社側も、ここまで受け入れ体勢が整っていれば、また次回もと、好循環となっていると感じた。そのための手法を学ぶことができて大変有意義だった。

執筆者

 企画・人材育成グループ   田宮 進(山形県鶴岡市から派遣)

               竹内 あかり(鳥取県米子市から派遣)

連絡先

セミナー統括課
TEL:03-5202-6134  FAX:03-5202-0755  E-mail:seminar(at)jcrd.jp ※メールアドレスの(at)は@に変更ください。