【終了レポート】令和6年度地方創生実践塾in兵庫県丹波篠山市

終了レポート

2025年01月21日

地方創生実践塾in兵庫県丹波篠山市
官学連携による地域人材育成と農村イノベーション
~地域に必要な人材を、地域で育み、地域で活かす~

 兵庫県丹波篠山市において、令和6年9月19日から21日にかけて「官学連携による地域人材育成と農村イノベーション~地域に必要な人材を、地域で育み、地域で活かす~」をテーマに地方創生実践塾を開催し、全国の地方公共団体や民間企業等から19人が参加した。

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1 開催地概要

 丹波篠山市は、兵庫県の東部に位置し、山並みに囲まれていて市の中心部は盆地内にある。古来から京都への交通の要として栄え、街並みや祭礼などに京文化の影響が強く残っており、城下町の風景などを目当てに観光客が多く訪れる。また、基幹産業は農業であり、黒豆や栗が特産品として有名である。篠山市として市制施行以来、地域としての「丹波」と「篠山」の名で知られてきたが、隣接する「丹波市」が誕生したことを契機に、「丹波篠山」としてのブランドを守るため令和元年5月1日に現在の市名に改称した。

2 開催地の取組 

 丹波篠山市では、神戸大学及び一般社団法人丹波篠山キャピタルと連携して、農村イノベーションラボの運営や地域おこし協力隊の支援、篠山イノベーターズスクールの開催などを行っている。これらの活動を通して、地域に必要な人材育成事業に力を入れており、地域内での起業者数の増加などにつながっている。

3 実践塾内容

(1)講義①「官学連携による地域人材育成と農村イノベーションについて」
  主任講師: 神戸大学大学院農学研究科教授 中塚 雅也 氏

 丹波篠山市が行っている官学連携による地域の人材育成の仕組みや効果、農村イノベーションの必要性などについて講義いただいた。
 農村では昔から全国的に人材不足が課題となっており、地域を劇的に変えるイノベーターや起業家が求められてきた背景を受けて、丹波篠山市では人材育成に力を入れているとの話があった。「人材」とは関係人口なども含めて地域内外問わずに捉えるべきであると解説いただいた。人材育成は研修を受けさせたり経験を積ませたりということをイメージしがちだが、人材を発掘して定着させるまでを考えることが重要であるということだった。
 また、時代の変化により既存のマーケットや仕組みが通用しなくなったため、これからの農村には新しい商品やサービス、仕組み、働き方が生まれるような農村イノベーションが必要であると語った。そこで、丹波篠山市では、研究や教育を通して農村イノベーションを生み出すための環境や材料を提供することが可能である大学と連携し、篠山イノベーターズスクールを開講したとのことであった。その後、地域おこし協力隊のコーディネートと篠山イノベーターズスクールの一体的運用を行う「地域の人事部」として機能するべく、中間支援組織の一般社団法人丹波篠山キャピタルを設立したとのことである。
 地域に関わる全ての主体が自発的につながり、連携しながら人を育てることが人材育成のエコシステムの核となる部分であり、地域に関わるという気持ちが大切である。丹波篠山市では、これらの取組を通して地域とのつながりを持つ場を提供し、イノベーションが起こる仕組みを構築していると解説があり、理解が深まった。

(2)講義②「一般社団法人丹波篠山キャピタルの事業について」
   特別講師: 一般社団法人丹波篠山キャピタル理事、合同会社ルーフス代表 瀬戸 大喜 氏

 一般社団法人丹波篠山キャピタルが取り組んでいることや、官学連携の意義について説明があった。
 一般社団法人丹波篠山キャピタルでは、篠山イノベーターズスクールの運営や地域おこし協力隊のコーディネートの他に、①新しい関係づくりの制度開発、②マッチング事業、③地域の情報を見える化する事業など、「支える」「つなぐ」「見せる」の3つの取組を行っているとのことである。
 また、官学連携の意義として、挑戦できる場所を提供できていると説明があった。このことにより失敗の数も増えるが、地域として失敗が許される場所になることでまた挑戦ができ、新しい人材も入ってくるという好循環ができると解説があった。新しい人材がその地域に入って活躍するためには、地域のニーズとその人材の双方を理解するコーディネーターの存在が重要で、地域住民からの信頼をもとに新しい人材に投資をし、地域の活性化につながっていくと語った。

(3)講義③「丹波篠山フィールドステーションの活動について」
   特別講師: 神戸大学大学院農学研究科特命助教 安部 梨杏 氏

 自身の活動や業務の説明を交えながら、丹波篠山フィールドステーションについての説明があった。丹波篠山フィールドステーションに常駐し、新たな人材の創出に取り組んでいる。主に大学側の授業の企画運営などを担当しながら、大学側の授業の意図を捉えつつ地域側との調整を行うことで学びの場を提供しているとのことである。
 授業関係の調整以外にも、行政や商工会議所と連携することもあり、また、地域外の人材の発掘だけでなく内部の人材にもしっかり目を向けるなどしており、業務の幅は多岐にわたることがうかがえる内容だった。

(4) フィールドワーク「やまもりサーキット」「野生鳥獣研究所けものら」
    特別講師: 一般社団法人丹波篠山キャピタル理事、合同会社ルーフス代表 瀬戸 大喜 氏
    やまもりサーキット代表 大谷 晃平 氏
    野生鳥獣研究所代表 金山 俊作 氏

 フィールドワークとして、瀬戸氏がインタビュアーとなり、大谷氏と金山氏から話を伺った。また、インタビューの後、やまもりサーキットと野生鳥獣研究所けものらの見学を行った。
 大谷氏はキャンプ場の運営、金山氏は解剖研修の開催が主な事業であるが、両名とも丹波篠山イノベーターズスクールの卒業生であり、地域のために何が必要かを考え、現在行っている事業について説明をいただいた。スクールでは地域とのつながりができたり、一緒に学んだ仲間と事業でコラボすることになったりといった事例もあり、スクールでの学びが地域の盛り上げに役立っていることが分かる内容だった。また、丹波篠山市の官学連携の仕組みにより、地域に入っていきやすかった旨の話も伺えた。

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(5)グループワーク「どうすれば地域人材が育成できるか」

 2日間の学びのアウトプットとして、地域人材を育成する手法についてグループごとにワークを行った。①どのような人材が欲しいか、②その人材をどのように確保するか(獲得、研修、定着等のどの部分に力を入れるか)を決めた後、どのような手法で誰と連携しながら行っていくかを検討し、各グループで発表した。

4 おわりに

 官学連携による人材育成の仕組みについて、講義やフィールドワークを通して実際に関わっている方たちから多くのことを聞くことができた。
 人材育成は全国のどの地域でも重要だと思われるが、画期的な方法が見つからず悩ましい問題である。本実践塾ではそれがうまく機能しているシステムを現地で学ぶことができ、大変参考になった。
 人材の発掘や能力開発、定着の段階すべてに目を向け、様々な人材が挑戦しやすい場を提供することの重要さを理解できた。

受講者の声

  • 官学連携とはどのようなものなのかを知る良いきっかけになった。
  • 高齢化で担い手がいない農村の地域に、農業に関する新規就農者だけでなく様々な業種の方を呼びこんでいくためのスクールの展開など学ぶべきことが多かった。
  • 官学連携は関わる人の想い、活動の継続が大切だと学んだ。

執筆者

 企画・人材育成グループ   上手 康平(岐阜県飛騨市から派遣)

               竹村 晃祐(富山県南砺市から派遣)

               沼尾 亮 (栃木県から派遣)

連絡先

セミナー統括課
TEL:03-5202-6134  FAX:03-5202-0755  E-mail:seminar(at)jcrd.jp ※メールアドレスの(at)は@に変更ください。