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【終了レポート】多様化する地域社会~多文化共生時代に求められる行政の役割~
新たな知と方法を生む地方創生セミナー(ベーシック) 終了レポート
2025年12月15日

1 はじめに
令和7年度新たな知と方法を生む地方創生セミナー「多様化する地域社会~多文化共生時代に求められる行政の役割~」を、2025年10月16日(木)にオンライン開催しました。地方公共団体などから14名の参加がありました。
2 今回のテーマ
日本国内で暮らす外国人は年々増加しており、日本の総人口の約3%を外国人が占めていると言われています。そのなかで、国籍や文化、言語の異なる人達が共に地域で暮らしていく多文化共生時代に求められる行政の役割について、実践的な視点から理解を深めることを目的に講義及び事例紹介を行いました。
3 講義内容
(1)講義:「多文化共生施策」
講師:明治大学国際日本学部 教授 山脇 啓造 氏
本講義では、日本の多文化共生の基礎、歴史、地方公共団体と国の取組、諸外国との比較、そして今後の課題について体系的に整理されました。
はじめに、多文化共生の定義について説明がありました。2006年に総務省多文化共生の推進に関する研究会が「国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的違いを認め合い、対等な関係を築こうとしながら、地域社会の構成員として共に生きていくこと」と定義されていると説明されました。
その具体的な推進にむけたプログラムは2006年には3本柱(コミュニケーション支援、生活支援、多文化共生の地域づくり)だったものが、2020年には地域活性化などへの貢献を含む4本柱へと発展したことが紹介されました。日本の外国人住民は1990年に100万人を超えて以降増加し、2024年には400万人に達する見込みであり、国勢調査では2070年に人口の10.8%が外国人になると推計されています。さらに現在の増加ペースでは2040年には、人口の1割に達する可能性があるとのことです。
次に日本の政策の特徴として、多文化共生を直接規定する法律が存在せず、地方公共団体が先行して取り組んできた点を挙げられました。1970年代以降、人権施策から国際化政策、そして多文化共生へと段階的に発展し、2020年代には多様性や反差別、地方創生を重視する「多文化共生2.0」が進んでいると説明がありました。地方公共団体の事例として、川崎市の指針策定、宮城県の条例制定、浜松市の都市ビジョン、大阪市のヘイトスピーチ対処条例などが紹介され、2020年代には全国知事会や市長会などが国に制度整備を強く求める潮流が加速していると述べられました。
国の取組については、2006年の多文化共生推進プランや総合的対応策、2012年の住民基本台帳制度の改革による、日本人と外国人の制度の一本化、2018年の特定技能制度と入管庁の設置などが重要な転換点とされました。さらに、日本語教育推進法の制定や外国人支援拠点の設置、2022年の5か年ロードマップ策定など、近年は受け入れと共生の両面で制度の整備が進んでいることを示しました。
諸外国との比較では、欧州では移住を希望する国の言語や、社会の知識を得るための統合コースの受講義務化が進み、韓国や台湾でも法制度が整備されている一方、日本は地方公共団体の独自の取組が先行するボトムアップ型で「多文化共生」「やさしい日本語」「外国人集住都市会議」などが広がってきた独自性を指摘されました。
最後に今後の課題として、国レベルでの法律と推進体制の不備、国・地方公共団体・企業・市民団体の役割分担の不明確さが挙げられ、市町村と都道府県には庁内連携、実態調査、日本語教育や相談体制、市民団体・学校との連携強化が求められると述べました。
(2)事例紹介:JICAの外国人材受入支援事業
講 師:独立行政法人国際協力機構(JICA)国内事業部 外国人材受入支援室 室長 高嶋 清史 氏
はじめに、JICAの活動目的が「開発途上国の社会経済発展を通じた日本と国際社会の健全な発展」にあり、その一環として外国人材の受け入れや多文化共生の構築への取組を進めていることを説明されました。重点分野として、①産業人材育成による途上国の発展、②人権を守った適切な送り出しと受け入れ、③来日外国人が安心して生活・就労できる環境整備の3点を示し、特定技能制度が始まった2019年から国内での多文化共生支援を本格化させたと説明がありました。
JICAは世界90か所以上、国内25か所の拠点を持ち、全都道府県に国際協力推進員を配置しています。さらに5万人以上の海外協力隊経験者が国内外で活躍しており、防災研修や多言語情報発信、地方公共団体との連携による安全セミナー開催など、多文化共生に向けた地域支援を行っています。北見市の防犯セミナーや、富山・石川で協力隊帰国者が地域の外国人支援に尽力している事例を紹介されました。
支援プログラムとしては、協力隊員を国内地域に配置する「グローバルプログラム」、企業連携の「JICABiz」、日系コミュニティ支援、JICA基金による団体支援など、幅広いスキームがあると説明がありました。また、JP‐MIRAI(責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム)との連携では、外国人労働者と企業双方を支援するアプリや動画教材を提供し、より良い受け入れ環境づくりを進めていると述べられました。
(3)事例紹介:静岡県の多文化共生推進
講 師:静岡県企画部多文化共生課 統括主査 平田 春奈 氏
はじめに、静岡県内の外国人はブラジル人が最も多く、続いてフィリピン人、ベトナム人が多いと説明がありました。特にブラジル人とフィリピン人は永住者・定住者が多いことが特徴であり、1990年の入管法改正を契機に南米系日系人が急増した結果、日本語が話せないまま家族で生活する外国人が増え、行政や地域で様々な課題が生じたとのことです。この経験から、静岡県は全国知事会を通じて国に制度の整備を求め続けています。
また、静岡県は多文化共生の理念として「インターカルチュラル」の考え方を重視し、多様性を地域の活力や創造の源として捉える姿勢を強調しました。
多文化共生施策の中心には日本語教育があり、外国人の地域生活に必要な日本語の習得に特に力を入れています。静岡県の地域日本語教室は、日本語を学ぶ場であるだけでなく、外国人と地域住民が一対一で交流し、相互理解を深める場として機能していることが特徴です。
その他「やさしい日本語」の推進にも取り組み、これは外国人が学ぶものではなく、日本語を話す側が配慮して言葉を調整するものであると説明がありました。具体例として、浜松市や袋井市が、相談窓口や生活ルール、災害時の避難所などの情報を「やさしい日本語」でまとめたガイドブックを作成し、新たに住民となる外国人に配布している取組を紹介されました。小規模自治体でも、まずはやさしい日本語で情報整理し、必要に応じて多言語化することで効果的な情報提供が可能であると提案がありました。
4 おわりに
今回のセミナーでは、JICAと静岡県が進める多文化共生の具体的な取組を知り、外国人住民が地域で安心して暮らせる環境づくりの重要性を改めて実感しました。特に、日本語教育や「やさしい日本語」の推進が、言語の壁を越えて相互理解を深めるうえで大きな役割を果たしていることが印象的でした。また、行政だけでなく地域住民が共に関わることで、多様性を地域の活力へとつなげられるという視点にも共感しました。
執筆者:地域活性化センター 企画・人材育成グループ
永野 豪人(高知県から派遣)
連絡先
セミナー統括課
TEL:03-5202-6134
FAX:03-5202-0755
E-mail:seminar(at)jcrd.jp ※メールアドレスの(at)は@に変更ください。