【終了レポート】令和8年度地方創生実践塾in福井県坂井市

地方創生実践塾 終了レポート

2026年06月29日

住民が自ら語りだすためのまちづくり ~坂井市ブランドメッセージに学ぶ、地域の魅力を言語化する手法~

開催日:令和8年5月27日~28日

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1 開催地概要

 福井県坂井市は、県北部(あわら市と福井市の間)に位置し、面積約210㎢、人口約8.8万人の市である。2006年に4町の合併により誕生し、日本海と山の豊かな自然、「越前がに」や「甘えび」などの逸品食材、「東尋坊」や「丸岡城」といった歴史・観光資源、合成繊維を中心とする地場産業が調和した地域である。特に今回の開催場所である竹田エリアは、山々や自然に囲まれ原風景に癒されるエリアである。

2 開催地の取組

 坂井市では、市民のまちへの愛着を深めるための取組を行っており、シティプロモーションアワード2024金賞・育成賞をW受賞するなど、全国から注目される成果を上げている。若者自身が地域を歩き、魅力を発見し、自らの言葉で語りだす取組「Sakai Deep Sessions(SDS)」を実施し、ブランドメッセージ「らしさ、かがやく。」を創出した。ブランドメッセージを基に誕生した坂井市公式キャラクター「坂井ほや丸」は、ゆるキャラグランプリで2年連続自治体キャラ1位を獲得している。

3 実践塾内容

1日目
(1)講義「シティプロモーション理論」

   特別講師:合同会社ローカスブリッジ 代表社員 林 博司 氏

 本講義では、シティプロモーションを「市外への魅力発信」として捉える従来の考え方を見直し、「市民のまちへの愛着を高めること」を目的とする視点が示された。北本市の元職員である林氏は、人口減少局面においては転入を増やす以上に転出を抑制することが重要であり、そのためには市内住民の意識や行動に働きかける必要があると説明した。北本市の事例では、成果指標としてmGAP(推奨意欲・参加意欲・感謝意欲)を設定し、市民アンケートを通じて意欲の変化を定量的に把握している。特に、地域を他者に勧めたいという「推奨意欲」を重視し、市民自身が地域の担い手・発信者となる状態=「まちを自分ごととして語る」を目指している点が特徴的であった。また、マーケットイベントや市民参加型プロジェクトを通じて、市民が関わる場を継続的に創出し、その活動が市内外へ発信される好循環を構築している、シティプロモーションサイクルについて紹介された。

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(2)講義「坂井市概要紹介・地域プロモーション実践報告」
   主任講師:坂井市 移住定住推進課兼観光交流課 小玉 悠太郎 氏

 本講義では、坂井市が取り組んだシティプロモーションの内容をお話いただいた。坂井市職員の小玉氏は冒頭で、「まちづくり」とは地域と積極的に関わる人を増やすことであり、地域への愛着を深め、人と会い、タイミングを待つことが大切であると語った。坂井市では「まちを語れる若者を増やすこと」を目的に、①地域の魅力の言語化、②語る機会の提供、③愛着を加速させるツール、の3つを方針とした。
 ①地域の魅力の言語化としては、10~40代の市民をメインターゲットとするワークショップを行った。現地体験と対話を重視し、フィールドワークの開催や、多様な参加者による反復的な言語化を行い、坂井市の魅力を明確化した。②語る機会の提供としては、取材活動やフォトウォークなど体験型の発信手法を採用し、自身の体験に基づく表現の重要性を示した。③愛着を加速させるツールとしては、公式キャラクターの誕生までの過程において、作成段階から共有することで多くの人を巻き込んだ工夫が紹介された。

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(3)グループワーク「mGAPで考える、住民が自ら語りたくなるまちのつくり方」

 本グループワークは、参加者が坂井市・竹田エリアをまだ十分に把握していない1日目の段階で、まずは各参加者がよく知る勤務地や所属する地方公共団体を題材に、地域の魅力を「人・活動・関係性」という視点から捉える練習として構成された。
 ワークの前半では、mGAP(推奨意欲・参加意欲・感謝意欲)の3視点を使い、単なる観光資源や施設紹介に終わらせず、「住民がなぜ語りたくなるのか」「どこに関わる余白があるのか」「誰に感謝したくなるのか」まで個人で掘り下げ、その後、グループにおいて、特に「人がどう関わっているか」という点を中心に共有を行った。  

 後半では、グループ内の内容を整理し、各地方公共団体に共通する「住民が語りたくなる条件」まで掘り下げ、そのために行政ができる取組を検討し、各自が実務に持ち帰ることを想定した整理を行った。

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(4)講義「写真撮影講座」

   特別講師:合同会社tomosaki 代表社員 ともさき 氏

 本講座では、身近な景色の魅力を発見できるような写真の撮り方・視点について学んだ。講師自身もカメラを通して地元福井の魅力に気づいた経験を持ち、ファインダーをのぞくことで、普段は気づかないようなまちの良いところを発見できると話された。
 写真の撮り方として、良い写真には構図や光が重要であり、水平を意識することや余分なものを写さないこと、光の向きを活用することが大切だと学んだ。さらに、すべてを写さずに「余白」を作ることで、見る人に物語を想像してもらえるような写真づくりも重要であると学んだ。

(5)フォトウォーク@坂井市竹田エリア
   訪問先:①千古の家 ②竹田水車メロディーパーク&鈴廼園 ③たけくらべ公園

 講義後には、3グループに分かれて坂井市竹田地区を巡るフォトウォークを体験した。
講義で学んだ構図や光の使い方等を意識しながらファインダー越しにまちを見ることで、普段であれば見過ごしてしまいそうな風景も、地域の魅力を捉えた写真になることを実感した。

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(6)グループワーク「写真から言語化し、ブランドメッセージ・ロゴマークを創る」

 フォトウォーク後は、グループ内で撮影した写真を共有し、それらの写真から着想した言葉をもとに、坂井市のブランドメッセージ・ロゴマークを作成した。
 参加者それぞれによって撮影した写真も違えば、魅力的に感じた部分にも違いがあり、それらを言語化し、議論しあうことで、一人では気づけていなかった新たな魅力を発見することができた。
 写真を撮影して終わりではなく、この言語化するという過程こそが、まちへの愛着心を持つきっかけにつながることを実感するワークであった。

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4 おわりに

 本実践塾では、まちに住む人を対象としたシティプロモーション事例を学んだ。そのいずれもが、「このまちに住んでいる/関わりを持っている人に対して、このまちをもっと好きになってもらいたい」という講師や地方公共団体の熱い想いを起点として展開されていた点が印象的であった。あわせて、mGAP(推奨意欲・参加意欲・感謝意欲)という視点から、「住民が自ら語りたくなるまちとは何か」を考えたことは、大きな学びとなった。
 フォトウォークやグループワークを通して、地域の魅力は一人一人の気づきや関わりの中から生まれ、それらを言葉にすることで他者に伝わる価値へと変わっていくことを実感した。こうした取組が、住民が自然と地域を語りたくなり、関わり続けたくなるまちづくりにつながるのだと強く認識した。

■受講者の声

・地域への愛着を深めるために、自ら体験し言語化することの重要性を感じた。フォトウォークの体験を通して、何気ないただの道、木々、空、ベンチなどの景色が思い出の1つになる変化があり、自分にとっての坂井市を考えるきっかけとなった。それぞれの住民が自分自身にとっての地域の魅力を見つける体験を企画し、継続していくことは、今後どの地域でも必要になると感じた。
・特に印象に残ったのは、講師の方々が異動や退職をされた後も、立ち上げたプロモーションが継続している点である。行政の人事異動が避けられない中で事業を途切れさせないためには、行政が単独で主導するのではなく、担い手を地域内に育て、明確に位置付けていくことが不可欠なのだと実感した。プロモーションを一過性の取組に終わらせず、地域に長く根付かせていくための重要な視点を得ることができた。
・シティプロモーションと聞くと「市外への魅力発信」をイメージしていた私にとって、「市民のまちへの愛着を高めること」に特化した坂井市の取組は大変新鮮であった。坂井市が実践したフォトウォーク参加者からも、「まちと関わりを持つきっかけになった」「参加した結果、坂井市のことが好きになった」と笑顔で話されており、取組を通じて、まちへの愛着もった人が増えていることがうかがえた。こういった人達が増やすことが、より活力のある地域づくりへとつながるのだろうと感じた。

■執筆者

企画・人材育成グループ     前波 里奈(福井県から派遣)

地域創生・情報広報グループ   進藤 友紀(山梨県北杜市から派遣)

移住・交流推進課        森下 朋佳(福岡県から派遣)