【終了レポート】平成30年度第4回土日集中セミナー

新たな知と方法を生む地方創生セミナー 終了レポート

2018年08月22日

平成30年度 第4回土日集中セミナー
「地域と学校の支え合い~地域とつくる『教育の仕組みづくり』~」

地域づくり掲載用(集合写真).jpg

 平成30年度第4回新たな知と方法を生む土日集中セミナーは、7月28日(土)~29日(日)に東京都中央区日本橋にある地域活性化センターにて「地域と学校の支え合い~地域とつくる『教育の仕組みづくり』~」をテーマに開催しました。今回は、全国各地から自治体職員など20名のご参加をいただきました。

【1日目】
講義Ⅰ:「地域のあるべき姿と学校の連携」
講師:斉藤 俊幸 氏(地域再生マネージャー)

地域イノベーションの触媒たれ!

 

地域づくり掲載用(斉藤氏)2.jpg藤氏は、高校の6校に1校が統廃合対象になっており、多くの学校が存続危機を迎えていると指摘されました。そのような状況の中で、各地で高校存続に向けた地域側からの動きが活発化してきたことや、国際的な教育プログラムである「国際バカロレア」など、様々な全国の先行事例についてお話しいただきました。

 さらに、今後は、先行事例の踏襲だけでは成功は難しいので、自立の仕組みを考えることが大切であるという説明がありました。

 また、貧困と子育てには関係があると指摘された上で、子どもの貧困対策や故郷意識の醸成、キャリア教育の必要性といった課題を認識し、学校だけに頼らない地域と連携した新たな教育が求められていることを示されました。

 最後に、地域・教育のイノベーションを起こしてほしいというメッセージをいただきました。

【1日目】
講義Ⅱ:「地域とともにある学校づくりが今、なぜ大切なのか」
講師:浦崎 太郎 氏(大正大学地方創生学部地方創生学科地域構想研究所教授)

生徒・教職員・地域に一体感を!

 

地域づくり掲載用(浦崎氏).jpg崎氏は、地域のコミュニティ崩壊が深刻化しており、このままでは日本各地で地域も高校も消滅してしまうので、「地域と高校の連携」が必要であると指摘されました。

 地域と高校を消滅させないためにも、地域で思いのある人が子どもを育てることにより、子どもたちに地域課題の当事者意識を持たせることや、学習意欲・キャリア意識向上につなげることが大切であると説明がありました。

 従来より地域にある学びの場に、高校生に参加してもらうような取組は、地方(特に過疎地)で飛躍的に増加しており、地方都市や首都圏の進学校にも拡大してきているそうです。

 今までの教育は、ペーパーテストで出題される内容だけを暗記してアウトプットするようなものでしたが、今は主体的・対話的で深い学び、つまり知恵をみんなで生み出していくことを学校教育で行うことが必要であり、より多くのことをより高く学んでいくことが求められています。

 自ら問いを立てて探求する力をもたせ、学びの場を地域・日常生活に拡張できれば、実質的な学習時間を大幅に拡充できます。

 高校と地域の連携が加速している地域では、「どんな地域を実現するために、どんな人物を育てていけばよいのか」、「そのために、どのように役割を果たせばよいのか」が共有できているということや、高校と地域を結ぶコーディネーターの必要性について説明がありました。

 生徒・教職員・地域に一体感を持たせることで、よりよい社会を創り出していくことができるそうです。

【1日目】
講義Ⅲ:「子ども大学で育む子どもと地域」
講師:清水 隆 氏(北本市教育委員会教育長)

地域の子どもを地域で育てる!

 

IMG_8054.JPG水氏は、学びをとおして地域の子どもを地域で育てる仕組みづくりすることが大切であると述べられました。

 埼玉県では、子どもの学ぶ力や生きる力を育むとともに、地域で地域の子どもを育てる仕組みを創るため、子ども大学の開校を推進しており、小学校4~6年生を対象として、大学教授等の専門家による知的好奇心を刺激する講義・体験活動等を行っています。また、民間企業と連携し、講義や体験する機会を子どもたちに提供しています。

 県内どこに住んでいても子ども大学に参加できる仕組みができたことが成果であり、今後の課題は子ども大学の内容を充実した上で継続していくことであるという説明がありました。

 継続できる取組が大事であるので、実行委員会の立ち上げから自立した運営への支援を行うための取組、運営側の職員の意識改革、地域を知ること、きちんとした役割分担等、継続できる自主自立の取組が大切です。

【1日目】
講義Ⅳ:「コミュニティ・スクールでつなぐ東山田中学校区の仕組み」
講師:竹原 和泉 氏(NPO法人まちと学校のみらい代表)

子どもの未来のために!

 

IMG_8059.JPG原氏は、コミュニティ・スクールと地域学校協働活動を一体的に推進し、新しい時代の教育、地方創生を実現していくことが大切であると述べられました。

 東山田中学校区をひとつのコミュニティとし、地域と学校を結んでいる地域学校協働本部(やまたろう本部)では、小学校1年生から中学3年生を対象に、地域と連携協働により行う学習活動、体験活動を教科ごとや放課後、土曜日の活動としてまとめた、「まちのたからを学びに活かす9 年間(やまっぷ9)」を作成しており、「社会に開かれた教育課程」を展開していることを学びました。

 さらに、一体的に推進するためには、プロセスを共有することが大切であり、例えば、コミュニティカレンダーを作成する際には、作業の過程で多くの人が関わるような工夫を行うことにより、地域の活性化を実現したという説明がありました。コミュニティカレンダーには、学校の行事予定や地域の情報が記載されており、このような取組は全国に広がっているそうです。

 また、中学校内にコミュニティハウスを併設し、日常的に「人と情報」がつながるように工夫した事例の紹介や、中学校のキャリア教育の一環として、例えば、2年生に地域の事業所への職場体験の場を提供し、小さな成功体験を共有する機会を設けたという説明がありました。生徒達は学校に近いところで職場体験することにより地域に親しみを持ち事業所の人と顔見知りになることができます。

 学校・家庭・地域の役割を確認し、それぞれの強みを活かし協働することは、子どもたちの未来やさらにはまちの未来を創っていくことにつながります。

【1日目】
全体質問会

 

IMG_8080.JPG日の最後のプログラムとして行われた全体質問会では、小中高の教育課程で地域と学校が何に留意して関わればよいかなど、参加者から講師に対し多くの質問がありました。

 講師からは、現状として中学校で一度地域との関わりが切れてしまっているので、高校が地域デビューになってしまい、できることが限られているという説明がありました。

 中学校で身近な大人へ信頼感、地域に対する親近感を持てるように、それぞれの教育課程で丁寧に関係を作り上げることの重要性を参加者全体で共有しました。

【2日目】
講義Ⅴ:「益田市の地域と教育をつなぐ人づくり~ライフキャリア教育、始めました。~」
講師:大畑 伸幸 氏(益田市教育委員会ひとづくり推進監)

地域づくりは人づくり!

 

地域づくり掲載用(大畑氏).JPG畑氏は、地域全体で地域のことを考える必要があり、それがない限り、学校と地域との協働はないと指摘されました。

 益田市では、総合戦略の中にひとづくりを位置付けました。どんな人になりたいか、何を大切にしたいかを考えながら地域活動を行うことは人生観を変えます。日々を前向きに生きている「益田びと」との出会いは、人のブランド化を図ると説明がありました。

 また、行政が一方的に行う教育ではなく、学校のカリキュラムに合わせ、地域の人の本音、生き様に触れながら行うことで、どんな環境でも、生き抜く力を身につけることが期待されます。

 「持続可能な地域づくりは、持続可能な人づくり」という言葉のとおり、地域の人と出会い、地域の人の想いに触れることで、子どもを中心に世代がつながり、コミュニティの再構築にもつながります。

 ふるさとを舞台に地域の人と地域活動をすることができるように、学校の外につながりをつくることが最大のミッションであると述べられました。

【2日目】
グループワーク

 

IMG_8169.JPGループワークでは、まず3グループに分かれ、学校と地域が支え合う上で何が課題になるのかを「人(学校・地域)」、「組織(学校・地域・各機関)」、「文化」、「ハード面」の4項目に分類して付箋に書き出し、課題出しを行いました。

 その後、グループで出た課題の解決策を見つけるため、それぞれどうしたら解決できるかを付箋に書き、模造紙に張り出しました。140分間のグループワークでしたが、疑問点はすぐに講師に質問するなど常時熱い意見が飛び交い、それぞれの想いが詰まった1枚のシートが完成しました。

 最後にグループ毎に発表を行い、地域と教育をつなぐ場づくりをするには、まずは地域資源である「人」が重要であり、人と人をどう繋いでいくかが課題であるという意見が出ました。講師からのフィードバックとして、まずはプライベートなネットワークをいかに築いていくかが大切であるという助言をいただきました。

 また、コーディネーターの重要性を再認識したという意見もあり、どのグループ討議も現実的でそれぞれの地域課題を解決するための具体的な内容になっており、地元に戻ってからすぐに取り組める実践的なものとなりました。

セミナーを終えて

 今回のセミナーでは、改めて地域で取り組む教育の重要性を認識していただくとともに、地域における教育の新しい波を感じ取っていただけたのではないでしょうか。

 今回の学びを活かし、参加者の皆様の地域でも地域と連携した教育が進み、地域活性化に結びつくことを願っております。

講師紹介

浦崎 太郎 氏(大正大学地方創生学部地方創生学科 地域構想研究所 教授、中央教育審議会生涯学習分科会 学校地域協働部会専門委員)

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平成29年4月より、地域構想研究所教授に着任。

 中学校や博物館での勤務、まちづくり活動など、広範な現場体験を通して、教育再生の鍵が大人の協働性再生にあると考えた。前所属の岐阜県立可児高等学校(平成23年4月~29年3月)では、国が地方創生やアクティブラーニングを打ち出す前から、地元自治体や諸団体と連携し、地域課題の解決にむけて多様な大人が協働する現場に高校生を送り込む「地域課題解決型キャリア教育」や、この活動と調和性の高いアクティブラーニング型授業の確立に尽力。こうした経験から学校と地域を一体的に再生するビジョンを発信するとともに、高校と地域が協働する体制の確立にむけた支援を全国各地で行っている。

 平成27年5月より、中央教育審議会生涯学習分科会学校地域協働部会専門委員として、子どもたちの豊かな学びと確かな成長のため子どもを軸に学校や地域の人々が協働・参画する社会を目指している。

【主な著書】

◆「教育再生は大人の関係性回復から」(博進堂)

【ホームページ】

https://www.tais.ac.jp/chinavi/result/no-0172/

斉藤 俊幸 氏(地域再生マネージャー、イング総合計画㈱ 代表取締役)

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 地域再生マネージャー(総務省・ふるさと財団)、地域活性化伝道師(内閣官房)、地域力創造アドバイザー(総務省)、地域経営の達人(総務省)など。

 買い物難民の存在を日本で初めて問題提起した熊本県荒尾市地域再生事業が地域づくり総務大臣表彰受賞。千葉県立松尾高校SGH「地域から考えるグローバル・エイジング研究」(文部科学省2015年)など。

【主な著書】

◆「ふるさと再生~架け橋を創る人たち~」(講談社)

◆「知られざる日本の地域力」(今井印刷)

【ホームページ】

http://zofrex.co.jp/lecture_career/index.html

竹原 和泉 氏(NPO法人まちと学校のみらい 代表、中央教育審議会生涯学習分科会 学校地域協働部会専門委員)

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 神奈川県横浜市都筑区にある東山田中学校に併設されているコミュニティハウス館長として11年、地域と学校をつなぐ「場」を運営するとともに、小中学校と地域の行事を1つに集約した「コミュニティカレンダー」等を作成。全国各地で地域学校協働本部とコミュニティ・スクールを両輪に「地域とともにある学校」の推進にかかわり、まちづくりにおける社会教育の役割の大切さを伝えている。

 平成27年5月より、中央教育審議会生涯学習分科会学校地域協働部会専門委員を行っている。

【ホームページ】

http://npofocas.org/

大畑 伸幸 氏(益田市教育委員会ひとづくり推進監 社会教育課長)

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 小学校8年、中学校11年、社会教育14年と様々な教育現場を体験。平成11年から島根県独自の「地域教育コーディネーター」として「学社融合」を推進。子どもたちの育成では、「ライフキャリア教育」を推進し、小中高での「益田版カタリバ」、中学校での「新・職場体験」、小学校での「夢の教室」、学校外での中高生の「マイプロ」などを展開している。

【ホームページ】

https://www.city.masuda.lg.jp/site/hitodukuri/detail-38439.html

清水 隆 氏(前 深谷市立常盤小学校長)

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 埼玉県の小学校教諭として採用され、様々な教育現場を経験し、平成22年度に埼玉県教育局・生涯学習文化財課主席社会教育主事在席時に埼玉県で「子ども大学」を立ち上げた。「子ども大学」では、大学教授や地域の専門家等が講師となり、子どもの知的好奇心を刺激する講義や体験活動が行われている。平成29年3月に深谷市立常盤小学校長退職。その後も地域の未来を担う子どもたちの育成に尽力している。

【ホームページ】

http://www.pref.saitama.lg.jp/f2216/kodomodaigaku/

スケジュール(予定)

※内容が変更となる場合もあります。また、講義タイトルは仮題ですのでご了承ください。変更があった際は、このページなどでお知らせさせていただく予定です。

1日目(7月28日)

12:30~13:00  受付

13:00~13:10  開講式

13:10~14:00  講義Ⅰ「地域のあるべき姿と学校の連携」(斉藤 俊幸 氏)

14:10~15:30  講義Ⅱ「地域とともにある学校づくりが今、なぜ大切なのか」(浦崎 太郎 氏)

15:30~15:40  講義を聞いて感じたことの意見交換

15:50~16:40  講義Ⅲ「子ども大学で育む子どもと地域」(清水 隆 氏)

16:45~17:35  講義Ⅳ「コミュニティ・スクールでつなぐ東山田中学校区の試み」(竹原 和泉 氏)

17:35~17:45  講義を聞いて感じたことの意見交換

17:45~18:30  全体質問会

18:30~20:00  交流会

2日目(7月29日)

9:00~9:10   昨日の振り返り

9:10~10:00   講義Ⅴ「益田市の地域と教育をつなぐ人づくり」(大畑 伸幸 氏)

10:00~10:10  これまでの講義を聞いて感じたことの意見交換

10:20~12:40  グループワーク

12:40~12:50  2日間の総括

12:50~13:00  閉講式

地方創生カレッジ受講推奨について

地方創生カレッジ「地域教育 学校と地域との連携」の講座に浦崎 太郎 氏と斉藤 俊幸 氏が講師をされています。地方創生カレッジを受講後にこのセミナーを受講することで、より理解が深まりますので、ぜひ受講してください。

地方創生カレッジ「地域教育 学校と地域との連携」→https://chihousousei-college.jp/e-learning/basic/other/126.html

参加にあたって

このセミナーは、地域活性化センターの賛助会員に対するサービスの一つとして実施しています。参加にあたっては賛助会費をお支払いください。なお、賛助会費にはA会員、B会員、C会員、S会員の種別があり、それぞれサービス内容が異なります。

個人賛助会員について

A会員 90,000円

各セミナー6回参加無料

※追加参加の場合は、1回あたり15,000円をご負担ください。

B会員 60,000円

各セミナー3回参加無料

※追加参加の場合は、1回あたり15,000円をご負担ください。

C会員 25,000円

各セミナー1回参加無料

※追加参加の場合は、1回あたり25,000円をご負担ください。

S会員(学生) 10,000円

各セミナー1回参加無料

※追加参加の場合は、1回あたり10,000円をご負担ください。

詳細はこちらをご覧ください。

申込みについて

①参加申込フォームへの入力、またはチラシ裏面記載②参加申込書に記入しE-mail:creative@jcrd.jpまたはFAX(03-5202-0755)にてお申込みください。

また、連絡なしの不参加や当日キャンセル等の場合は返金できかねますので、ご注意願います。

下記、チラシをご参照ください。

連絡先

企画グループ
TEL:03-5202-6134  FAX:03-5202-0755  E-mail:creative@jcrd.jp