【終了レポート】令和3年度 新たな知と方法を生む地方創生セミナー・アドバンス型 地域経済を見る眼とその方法~地域経済循環分析に基づく政策立案~(11月開催)

2021年12月03日

地域経済を見る眼とその方法 ~地域経済循環分析に基づく政策立案~

「地域経済を見る眼とその方法~地域経済循環分析に基づく政策立案~」を11月15日(月)~16日(火)に開催しました。民間企業、地方自治体から7名の方にご参加いただきました。

地域経済の実態を見える化し、現状・課題を正確に認識することで、地域活性化につながる効果的な政策立案ができます。本セミナーでは、地域経済循環分析の基礎について学ぶとともに、経済産業省と内閣官房が提供する「地域経済分析システム(RESAS)」や、環境省が提供する「地域経済循環分析自動作成ツール」を用いた分析の手順と、分析結果に基づくグループワークを行いました。

11月15日(月)【1日目】

講義Ⅰ「地域経済循環分析の基礎知識」
 講師:北村 潤一郎(地域活性化センター 常務理事)

 地域経済は地域社会の存続・発展の基盤となるもので、地域経済を分析することは、地域で起きている経済的現象の特徴や課題を認識し、有効な施策や政策の検討する際の根拠となるものです。地域経済循環分析では、地域経済を「生産」「分配」「支出」の三側面から観察することにより、所得の循環構造を把握することが可能となります。この三側面は、企業などが所得の源泉である財・サービスを「生産」し、そこで生み出された付加価値が家計や企業に所得として「分配」され、家計や企業などが消費や設備投資によって「支出」するという流れです。地域経済を考えるうえで重要なのは地域住民の所得が向上することであり、そのために所得の「分配」を大きくする構造を作り、地域の所得流入につなげなければなりません。

 また、地域経済を潤すためには、「地域内調達」が重要となります。例えば、観光関連産業が強い地域を分析すると、観光地として外部から稼ぐ力はあるものの、地域内で食材などの原材料を調達していないため、地域外へお金が流出してしまい、地域に残るお金が減ってしまいます。こうした状況を客観的に分析し、データだけでなく、住民の声を聴くことや、歴史的経緯といった多様な情報も組み合わせて政策を立案していくことが重要です。

グループワークⅠ「SWOT分析」

 今回は熊本県菊池市をモデル都市として、講義で学習した地域経済循環分析の考え方をもとに、菊池市のSWOT分析(強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat))を2つのグループに分かれて行いました。

 強みは「農業の規模が大きく、基幹産業となっている」「合計特殊出生率が上昇してきている」「市内に高校が3校ある」など、弱みは「市外就業者が多い」「若者世代の流出が顕著」「公共交通網が弱い」など、機会は「熊本空港へのアクセスが良い」「市外に通じる3つの道路それぞれに道の駅がある」など、脅威は「菊池一族がトレンドとなっていない」「特産品はあるが加工品が弱い」などが挙がりました。こうした強み、弱み、機会、脅威で分析されたことを掛け合わせ、政策の方向性をグループで話し合いました。

 自分が暮らす地域を分析してみると、漠然と感じていたことにデータの裏付けがとれたり、イメージしていたこととは全く違うデータが出てきたりします。データに基づいた地域経済分析を行うことで、地域の現状を客観的に認識し、関係者間での情報共有がスムーズにできることに気づく機会となりました。

11月16日(火)【2日目】

グループワークⅡ「政策立案」

 グループワークⅠで決めた方向性を基に具体的な政策を立案し、発表しました。

 A班は『「きくち」をまるごと食べつくす』と銘打って「農業が付加価値の高い産業」(S)×「豊富な観光資源」(S)×「空港・高速道路からの好立地」(0)を掛け合わせ、「農業×観光」によって地域外からの消費を増やし、関係・交流人口を増加させる政策を発表しました。

 B班は「農業は規模が大きく基幹産業」(S)×「市内に高校が3校ある」(S)×「若者世代の流出」(W)を掛け合わせ、「持続的な経済圏の確立」のために高校生と連携し、菊池一族と関連させるなどして地域資源を磨き上げ、6次産業化に向けた政策を発表しました。

おわりに

 当セミナーでは、人口・地域経済研究室の職員によるサポートの下、RESASや地域経済循環分析自動作成ツールによるデータを分析して意見を出し合い、政策の検討・立案のプロセスを体験することができました。受講者からは「データをどう読み取り政策に活用するのか、実例を挙げての説明がわかりやすかった」というお声をいただきました。地域経済循環分析を用いて地域社会の持続的な発展を考えるとともに、多角的な視点で議論を行う大切さも体感することができました。

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人口・地域経済研究室
TEL:03-6262-2950  FAX:03-5202-0755  E-mail:kenkyu@jcrd.jp