【終了レポート】地方創生実践塾in長野県小布施町

終了レポート

2022年01月14日

地域内外の人々が溶け合う小布施流まちづくり~「協働」と「交流」を軸とした、未来志向の地方創生~

令和3年10月15日(金)~16日(土)の2日間、長野県小布施町で、「地域内外の人々が溶け合う小布施流まちづくり~『協働』と『交流』を軸とした、未来志向の地方創生~」をテーマとして、令和3年度地方創生実践塾を開催しました。全国各地の行政職員や大学生など24名のご参加をいただきました。

10月15日(金)

オリエンテーション:主任講師 林 志洋 氏(小布施町総合政策推進専門官

主任講師の林氏からは、オリエンテーションとして町の概要やまちづくりの歴史について紹介がありました。小布施町の有名な取組である「町並修景事業」については、地域目線でのまちづくりを大事にしたという点を強調し、「住民の作りたい町を作る」をモットーとして住民の理解を得るべく、地道に交渉を重ねていった背景があると語った。また、小布施町がまちづくりの先進地として有名になったのは、こうしたまちづくりの取組を積極的に情報発信したことが功を奏した結果と考えられ、その結果外部との交流が多数生まれ、地域課題の解決に向けて取り組む「協働と交流のまちづくり」につながったとのことでした。

講義1「地域内外の人々が溶け合う小布施流まちづくり ~「協働」と「交流」を軸にした未来志向の地域創生~」        特別講師 桜井昌季氏(小布施町長)

桜井町長からは、小布施町の地域内外の人々が溶け合う小布施流のまちづくりについてご講演いただきました。

町並修景事業に関しては、「内は自分のもの、外はみんなのもの」というコンセプトのもと住民が自分の家の庭を開放するオープンガーデンの取組を例として話されました。住民が心地良く暮らしながら観光客が見て楽しめる町並を形成したことによって、町民全体の景観への意識が高まり町全体に浸透したと考えられ、「近代化」「保存」「再現」ではなく、古いものを活かしながら現代の生活にあった暮らしを形成するためには、景観を「整える」ことが重要だと強調されました。

最後にまちづくりのポイントとして、定住人口を増やすことよりも、先ずは今住んでいる人の幸せを第一に考えることが重要と訴え、先を見据え観光地から地域内外の人々が集う交流地へと発展させていきたいと述べられました。

フィールドワーク①まちあるき~40年前から蓄積してきた小布施町の古いまちづくりを中心に                  【行き先:中心部の「町並み修景事業」の実施地域】

 3つのグループに分かれ、小布施町中心部の「町並み修景事業」の実施地域でまちあるきを行い、必ずしも従来のものにとらわれない"保存ではなく修景"のまちづくりについて、実際に目で見て学びを深めました。

まち歩きで驚いたのは、「オープンガーデン」の多さです。(現在では130軒ほどの家が参加)「外はみんなのもの、内は自分たちのもの」というコンセプトのもと、住民主体の「花」によるまちづくりが行われていました。小布施町では、庭での会話を楽しむ「縁側文化」が根付いており、古くから伝わる文化で人々の心の交流を実現しているのだなと感じました。

まちあるき

講義② 「クリエイターハブとしてのハウスホクサイの取り組み                                特別講師:(一社)ハウスホクサイ代表理事 塩澤 耕平 氏    会場:ハウスホクサイ 

 使われていなかった町有施設を活用した「ハウスホクサイ」は、コワーキングスペース機能に加え小布施町に研修やワーケーション来訪者の宿泊施設を兼ね備えたものであり、近年では、地域内外からクリエイターが集まり、新規プロジェクトの起点として機能しています。今後は、大学のサテライトキャンパスを誘致するなど、小布施町の「山エリア」全体を盛り上げたいと述べました。

10月16日(土)

講義③:「防災に強いまちづくりに向けて:台風19号からの教訓」                              特別講師 大宮 透 氏(小布施町総務課長)                                        特別講師 林 映寿 氏 (浄光寺副住職/一般財団法人日本笑顔プロジェクト 代表)                                            

 2日目はまず、小布施町の防災対策として、行政の立場から大宮氏が、民間の立場から林氏がそれぞれ講義を行った。

大宮氏は、令和元年10月の東日本台風災害は想定外のもので対応が遅れてしまったことを教訓とし、行政では避難所・防災訓練の見直しや各家庭での避難計画の普及啓発、民間組織との防災協定締結し、連携強化による災害発生後の対応力・回復力(レジリエンス)を強化していく必要があると述べた。

 林氏は、災害状況下では個々の能力の必要性を感じ、行政に頼らない自助・共助の役割として、一般市民が災害復旧時に必要となる重機の運転資格を取得できるアミューズメントパークnuovo(ノーボ)を設立した。実践塾では、バギーの体験講習をし、災害時における重機の重要性を体感できる機会となった。

 毎年のように未曾有の災害が発生している近年において、困ったときこそ応援してもらえる体制づくりには、平時からのファンづくりや信頼関係の構築が重要であることを学んだ。また、災害という新しい方面からのアプローチを用い自助を高め公助と連携するネットワークづくりは、どの地域にも求められていることであると感じました。

パネルディスカッション                                                 主任講師 林 志洋 氏                                                 一般社団法人小布施まちイノベーションHUB事務局長 日髙 健 氏                                小布施町立図書館まちとしょテラソ館長 志賀 アリカ氏

 パネルディスカッションでは、主任講師の林氏、「協働による地域課題の解決」を民間の立場から推進する日髙健氏、小布施町立図書館長の志賀アリカ氏の3人が登壇し、小布施町との関わりや現在の取組などについて議論が交わされました。

「小布施町はどういうまちか」というテーマでは、町の共通項として「巻き込む・巻き込まれる」の連鎖が生まれるという点が論点となりました。何らかの形で町の取組に巻き込まれ移住してきた結果、自らがまた新たなプロジェクトを創出し周囲の人を巻き込んでいく。この連鎖が移住者をひきつける町の魅力だという。また、「まちづくりで大事なこと」というテーマでは、「声に出す」「継承」「短所をカバーできる体制やつながり」などを重要視する意見があり、地域づくりは個人で成し遂げられるものではなく、人とのつながりが大切であることの提言がなされました。

パネルディスカッション.jpg

グループワーク・振り返り

 2日間の講義やまち歩き、フィールドワークなどを通して、小布施町の「協働と交流のまちづくり」について学んだことや感じたことをグループに分かれて意見を出し合いました。付箋を使ったワークで、自分の考えを見える化し、グループ内で共通項を探りました。

最後に今回の学びを今後どのように実践していきたいかを考え、共有しました。

 今回の実践塾in小布施町では、人口減少対策としての宅地分譲や町並修景事業、オープンガーデン事業などの「小布施町のまちづくりの歴史」から始まり、観光地ではなく交流地であるための観光施策や、日本笑顔プロジェクトによる自助・公助による災害支援の取組、そして、しあわせをキーワードにした小布施町の今後について学ぶことができた。

 これら全ての取組の根底に共通していることが、「協働と交流」であり、このことは、桜井町長が語った「民間が起こしたものを行政が否定するのではなく、行政がサポートしていく姿勢こそが重要」との言葉や、町外からの人材を積極的に登用している様子からも感じとることができた。この徹底した「協働と交流」こそが、小布施町の強みだと考えられました。

集合写真.jpg

カリキュラム

10月15日(金)

1.開講式

2.オリエンテーション  主任講師 林 志洋 氏 

3.講義 ①地域内外の人々が溶け合う小布施流まちづくり 

    ~「協働」と「交流」を軸にした未来志向の地域創生~」

             特別講師:桜井昌季 氏  

4.フィールドワーク① ~新しいまちづくりの芽生えを巡る~

5.講義②「クリエイターハブとしてのハウスホクサイの取り組み」会場:ハウスホクサイ

             特別講師:塩澤 耕平 氏 

6.交流会(希望者のみ)

10月116日(土)

1.講義③「防災に強いまちづくりに向けて:台風19号からの教訓」 会場:浄光寺

             特別講師:大宮 透 氏

                  林 映寿 氏

   

2.フィールドワーク②  体験型ライフアミューズメントパーク「nuovo(ノーボ)」 見学

3.パネルディスカッション「協働の先へ これからの小布施が目指すもの」

             モデレーター:林 志洋 氏、

             パネラー  :特別講師 日髙 健 氏

                    特別講師 志賀 アリカ 氏

4.グループワーク、振り返り

5.閉講式

連絡先

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