【終了レポート】令和4年度【スタンダード型】新たな知と方法を生む地方創生セミナー 「地域通貨」~地域経済の活性化から生まれるまちの賑わい~

募集終了 終了レポート

2023年01月02日

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令和4年度新たな知と方法を生む地方創生セミナー「『地域通貨』~地域経済の活性化から生まれるまちの賑わい~」を

令和4年10月21日(金)にリアルとオンラインを併用して開催しました。

全国各地から自治体職員など36名のご参加をいただきました。

講義Ⅰ

株式会社トラストバンク chiica事業部長 堀江 健太郎 氏

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東京都北区出身。経営コンサルタント、海外旅行の記録でつながる旅のコレクションサービスを運営する会社の起業を経て、地域内での経済循環を促し、地域経済を活性化することができる自治体向け地域通貨プラットフォームサービス「chiica」を運営する株式会社トラストバンクに入社。現在は埼玉県深谷市をはじめとする自治体の地域通貨運用の支援や事業開発、アライアンス構築、採用などの業務を行っている。

「地域通貨の概要とその可能性について」

 堀江氏からは、地域通貨運営のプラットホームを提供する事業者として、地域通貨に関する概要や目指すべき方向性についてご講義いただいきました。

 地域通貨は古くは江戸時代に遡ることができ、2005年に稼働のピークを迎えてから数としては減少しているものの、スマホへのシフトや周辺技術の台頭により利用規模が大幅に拡大可能な「電子地域通貨」として再度注目を集めています。

 (株)トラストバンクが運営する「chiica(チーカ)」とは、それ自体が「電子地域通貨」ではなく、自治体等が自ら発行する地域通貨を電子的に実現するためのシステムです。また、同システムは新たに設定するものに限らず、これまで各自治体で個別に実施していた事業(プレミアム商品券、各種行政ポイント事業、給付金事業など)を合体させ、複合的に実施することができます。

 地域通貨が本来志向するものは、域外から獲得した資金を地域内で循環させることで、地域に雇用と所得を持続的に生み出す「域内経済循環」です。しかし、堀江氏曰く、それはあくまで地域通貨の効果の一つでしかなく、その一本足打法ではなく、それ以外の収支改善の軸として「換金手数料」、「地域課題の解決(≒行政指標の改善)」を最大化すること、それこそが地域通貨が目指すべき方向性であるとのことでした。そのため、地域通貨の導入を検討している自治体においては、明確な指標と目標を設定すること、また、その達成のための計画づくり・PDCA活動が重要であると述べられました。

 全国的な導入事例についてもご紹介いただき、地域通貨が目指す未来像について理解を深めました。

事例紹介Ⅰ 地域通貨導入自治体

埼玉県深谷市 産業振興部  産業ブランド推進室 室長補佐 福嶋 隆宏 氏

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埼玉県深谷市出身。2000年深谷市入庁。商工・財政等の部署を経て、2018年から産業振興部産業ブランド推進室 室長補佐。現在は、新たな企業を誘致するための取組として「アグリテック集積戦略」、地域内経済循環を高める取組として深谷市内で流通している地域通貨ネギーに関する「地域通貨導入戦略」等に注力している。博士(地域政策学)を取得しており、専門は、政策評価、政策科学。

「デジタル地域通貨ネギ―の取組について」

 福嶋氏からは、実際に「電子地域通貨」を導入した自治体という立場から、導入の経緯や取組についてご紹介いただきました。

 深谷市では、「深谷市産業ブランディング推進方針」の中で地域通貨「negi(ネギ―)」を導入しており、「域内経済循環の向上」および「地域課題の解決」の貢献により、地域一丸となった持続可能な地域経営を実現するためのお金として定義されています。

 また、「negi」は、コロナ禍における経済対策のほか、これまで単独の事業として行われていたポイント事業の一体化を通して多様に活用されています。これは地域内における地域通貨の循環の役割を果たすほか、これまで事務手続きで人件費がかさんでいた事業の見直しに繋げ、コストの抑制などの行政改革に貢献しています。

 福嶋氏は、更なる行政事業での活用や、自治体地域通貨運営における事業収支モデルの実現、民間での地域通貨の活用普及が今後の課題であると述べられており、自治体で地域通貨を導入する上で必要な取組や課題にについて理解を深めました。

事例紹介Ⅱ 地域通貨導入事業者

慶應義塾大学大学院 政策•メディア研究科 特任准教授 古里 圭史 氏

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岐阜県飛騨市出身。公認会計士・税理士。2012年10月に地元、岐阜県飛騨・高山にUターンし、地域密着のコミュニティバンクである飛騨信用組合に入組。2017年には岐阜県飛騨地域(高山市、飛騨市、白川村)で使用できる電子地域通貨「さるぼぼコイン」を手掛け、ローンチから4年でユーザー数、加盟店数ともに地域シェア40%超のサービスに。現在は慶応義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任准教授を務めながら、複数自治体のアドバイザーとしても活躍している。

「電子地域通貨『さるぼぼコイン』について」

 古里氏からは、飛騨地域で導入されている地域通貨「さるぼぼコイン」の概要や導入までの行程、取組内容、今後の方向性について講義をいただきました。

 2017年に飛騨信用組合により発行された「さるぼぼコイン」は、飛騨地域で生み出された価値が日本円により地域外へ漏れ出ることを防ぐため、組合のCSV経営の一環として生み出された取組でした。当時、静的QRコードを利用した利用者読み取り方式での地域通貨は国内初の試みであったため、その導入にあたり行政や地域の商工会とは連携しにくいものであったと話されました。

 その後、この取組が「夏のDigi田甲子園」で評価され準優勝したことにより、地元の自治体やや経済団体での導入が進み、Go to travel事業や地元商店街などとの連携により観光消費の拡大・地元消費の拡大を実現したほか、地元小中高生の課題研究学習の題材になるなど、地域において欠かせない存在に移り変わっていると述べられました。

 地域通貨を話すうえで「域内経済循環」が主題になりがちですが、古里氏のお話から、地域通貨の効果は「域内経済循環」ではなく、「コミュニティ内の交流の活発化」であるということを学びました。

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トークセッション・質疑応答

 トークセッションでは、受講者からの質問を基に、事業者・導入自治体・導入民間事業者の立場から、地域通貨導入の実現に向けたアドバイスをいただきました。

 堀江氏からは、「導入においてコストを覚悟することが重要」、福嶋氏からは、「単発の事業ではなかなか繋がらない。SDGsなどと絡めて、地域や環境に貢献しながらお得感を味わるといった感覚を利用者にもってもらえるようなシステム作りが必要」、古里氏からは、「理念だけではうまくいかないため、地域通貨を使って何をしたいのか明確にするべき」などとお話しいただきました。

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スケジュール

10月21日(金)

13:10~13:20

開講式

13:20~14:20

講義Ⅰ:堀江 健太郎 氏 

14:30~15:20

事例紹介Ⅰ:地域通貨導入自治体

15:20~16:10

事例紹介Ⅱ:地域通貨導入事業者

16:20~17:05

トークセッション、質疑応答

17:05~17:15

閉講式

連絡先

セミナー統括課
TEL:03-5202-6134  FAX:03-5202-0755  E-mail:seminar@jcrd.jp