【終了レポート】令和5年度 地方創生実践塾in島根県出雲市

2023年11月29日

地方創生実践塾in出雲市 まちづくりメディアラボ~地域プロモーション技法を学ぶ~

開催日

事前セッション:令和5年7月14日

現 地 開 催:令和5年7月22日~23日

1 開催地概要

 島根県出雲市は、県の東部に位置し、総人口172,967人(令和5年4月30日現在)で県内第2位である。北は日本海、東は宍道湖(しんじこ)、中央部は斐伊川(ひいかわ)と神戸川(かんどがわ)の二大河川により形成された肥沃な出雲平野、南部は中国山地で構成され、海・山・川・湖・平野と多彩な自然に恵まれている。また、日本最古の歴史書である古事記には出雲を舞台とする神話が数多く記載されており、「出雲大社」をはじめとした歴史文化が多く残る都市として発展してきた。

2 開催地の取組

 本実践塾では、地方創生イノベーターのプラットフォームである一般社団法人INSPIREの協力で「まちづくりメディアラボ」として開催した。まちづくりメディアラボは、地域マーケティングにおいて重要な役割を担う地域プロモーションを大きなテーマとし、「たった2日間でメディアプロデューサーになる」ことを目指して、技法の習得を目的とするものである。
 地域プロモーションにおいて、地方公共団体職員や地域おこし協力隊員に求められることは、プロジェクト全体の指揮をとるプロデューサー目線である。多くの場合、プロモーション関連のコンテンツ作成は外部業者に委託されている。その制作におけるディレクターやオペレーターの役割は、専門とする外部業者の力を借りるとしても、プロデューサーの役割は発注者にしか担えない。つまり、地方公共団体職員等がプロデューサーとして適切に外部業者をグリップできるか否かが、その成果物に大きな影響を与えることになる。
 そこで本プログラムは、プロデューサー目線を実践的に体験することを目的に、参加者を3~4人のグループに分け、出雲市を舞台に独自の突き抜けた観光コンテンツを考え、写真や動画等の素材集めを自ら行い、Webマガジンを作り上げるという構成である。地方創生実践塾は、地域づくりにおいて先進的な取組を行う地域を開催地としてその取組・手法を学ぶものであるが、本実践塾は事前のオンライン講義と現地2日間の講義・ワークショップ・フィールドワークを通じて具体的なアウトプットを作成する、より実践的な内容となっている。

3 実践塾内容

 「まちづくりメディアラボ」は地方創生実践塾として今回で5度目の開催となる。本実践塾を通して地域プロモーションを学びながら、今までにない、市に滞在したくなる突き抜けた観光コンテンツを生み出し、Webマガジン「出雲ウォーカー」を立ち上げるため、全国から24人が参加した。

(1)事前セッション(オンライン)「メディアプロデューサー特論」
主任講師:BBT大学経済学部教授、BBT大学大学院経営学研究科MBA教授、一般社団法人INSPIRE代表理事 谷中 修吾 氏

 現地開催前の7月14日に、主任講師の谷中氏がメディアプロデューサー特論のオンライン講義を行った。そこでは、現地でのフィールドワークに向けて、必要な基礎知識を習得した。谷中氏は、地域プロモーションの全体像を見るために必要なメディアプロデューサーの視点や基本的な考え方について解説された。また、画期的な地域プロモーションを行うための発想や企画をスムーズに推進するためのポイント等も話された。

(2)講義(現地)「メディアプロデューサー特論」
主任講師:BBT大学経済学部教授、BBT大学大学院経営学研究科MBA教授、一般社団法人INSPIRE代表理事 谷中 修吾 氏

 7月22日、23日の現地開催では、出雲市で講義とフィールドワーク等を行った。
 はじめに、谷中氏が事前セッションの振り返りとフィールドワークに向けた講義を行った。
 「2泊3日で出雲市に滞在したくなる突き抜けた観光コンテンツを生み出し、Webマガジン『出雲ウォーカー』を立ち上げよ!」というミッションのもと、8つの実践プロセス(①プロモーション戦略の策定、②コンセプト設計、③現地ロケ、④写真の撮影・編集、⑤動画の撮影・編集、⑥Webデザイン、⑦サムネイルの制作、⑧プロトタイプの発表)について順に説明された。
 次に、事前セッションでも述べられたポイントを再確認し、ターゲットの設定を明確にすることが重要であることが述べられた。また、様々な自治体の突き抜けたPR動画の紹介もあり、2日目に制作するWebマガジンのイメージをつかんだ。
 この講義からは、地域プロモーションにおいて、その地域ならではの歴史文化や観光名所、特産品等を突き抜けたアイディアと掛け合わせることで、新しい地域の魅力を生み出し、それらを地域課題の解決に結び付ける考え方を学んだ。

(3)講義「出雲市の観光について」
特別講師:出雲市副市長 井上 夏穂里 氏

 出雲市の概要や観光戦略、今後の展望等について井上氏が説明された。
 井上氏は、出雲大社や美しい海等観光資源に恵まれているが、市内に滞在する観光客は少なく、外国人宿泊客延べ数も島根県は全国で46位と滞留が生まれていない。この現状を抜けるため、周遊滞在・消費環境整備のほか、高付加価値につながるコンテンツの準備や市に愛着を持ち何度も繰り返し来訪し、市の良さを発信し続けてくれるロイヤルカスタマーの獲得につながる情報発信等に取り組んでいると話された。
 この講義からは、市が出雲大社を中核として歴史文化に深く関わりがあり、市内エリアごとに違った魅力があることを学んだ。


(4)出雲市2泊3日の観光コンテンツを紹介するWebマガジン『出雲ウォーカー』の制作

 受講者はグループに分かれ、観光客の誘致を目的とした「2泊3日で出雲市に滞在したくなる突き抜けた観光コンテンツ」を考え、写真や動画等の素材を収集しWebマガジンの制作を行った。
 まず、制作にあたり、撮影トレーニングを兼ねて出雲大社にて写真や動画の撮影技法を学んだ。
 谷中氏より「今はスマホで簡単に撮影できる。グリット線等スマホの機能を十分に使用し、体を使いながら撮影しましょう」と話があり、受講者は、撮影時の体勢や画角の角度を変え、躍動感と迫力のある構図を探し撮影練習を行った。他にも、グリッド線を活用し画面を縦横三分割にし、その交点に被写体を配置して撮影する「三分割構図」や被写体を対角線上に配置して撮影する「対角線構図」等様々な技法を学んだりした。
 その後、フィールドワークとしてグループごとに市内を周り、Webマガジン制作をイメージしながら、学んだ撮影技法を実践し現場ロケを行った。

集合写真.JPG

↑集合写真

フィールドワークの様子.JPG

↑フィールドワークの様子

Webマガジン制作の様子.JPG

↑Webマガジン制作の様子


(5)発表・講評

 グループごとに作成したWebマガジンの発表を行った。
 各グループとも、Webマガジンのコンセプトやターゲットを明確にしており、出雲大社をはじめとした出雲市内の観光資源を生かした、突き抜けたアイディアを具現化した発表であった。
 発表後の公表で、谷中氏は「明確にターゲットの絞り込みができており、それぞれのWebマガジンで市の特徴を生かした突き抜けたコンセプトを具体化できている」と講評された。
 また出雲市副市長の井上氏からは「これまでにない視点で市を見ることができた。すぐにでも実践できそうなほど具体的な企画を提案してもらい有意義だった」と講評された。
 最後に、表彰式では3グループに「最優秀賞(Gグループ)」、「IZUMO賞(Bグループ)」、「地域活性化センター賞(Aグループ)」が授与された。

4 おわりに

 本実践塾では、メディアプロデューサー視点での地域プロモーションの実践プロセスを学ぶことができた。
 地域プロモーションというと、今あるコンテンツをどう発信するかというディレクターや制作スタッフの視点で考えがちになる。しかしそれでは、目を引くような新たな魅力の発信には繋がらない。需要があるコンテンツの創出や新たな魅力の発信を行っていくには、まずは自分自身がその地域におけるコンテンツや魅力について理解した上で、企画全体の設計・運営を行うプロデューサーの視点に立ち、コンセプト設計やターゲット設定等を細かく決めることが、最も重要であると感じた。写真・動画の撮影方法やWebマガジン制作技法だけでなく、メディアプロデューサーとしての着眼点を習得することで、今後の地域プロモーションに大きく生かすことができると考える。


受講者の声

・短い時間でWebマガジンの作り方や、マーケティングのコツや考え方を学ぶことができた。とても有意義な時間だった。
・全体構成が固まっていれば短時間でホームページが完成できると知れたことは大きな収穫であった。
・フィールドワーク中に他者と話す中で、他県他市の取組の知見や、出雲の魅力を再発見することができた。


執筆者:地域活性化センター 編集室

吉澤 利能(熊本県菊池市から派遣)