【終了レポート】令和5年度地方創生実践塾in北海道東川町

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2024年03月06日

東川町が目指す適疎のまちづくり

令和5年10月27日(金)~28日(土)に、「東川町が目指す適疎のまちづくり」をテーマに地方創生実践塾を開催しました。

開催地概要

 東川町は、北海道のほぼ中央に位置する総人口8,589人(令和52月末日現在)の町です。日本最大の自然公園「大雪山国立公園」の区域の一部になっており、大雪山系の最高峰旭岳が東川町域に所在するなど豊かな自然と田園的景観に恵まれています。

開催地の取組

 昭和60年に写真の町宣言を行って以来、自然と文化と人が出会う写真映りのよい文化的なまちづくりを進めています。水や木材等の東川町の資源を生かしたまちづくりを推進することにより「人」・「自然」・「文化」が共生する、過密でもなく過疎でもない「適疎」な町のあり方を住民とともに追及し続けています。

 その結果、近年では移住・定住者が増加し、人口がこの20年間で約1,000人増えるなど、人口が増え続けるまちとして注目を集めています。

実践塾内容

 住民のWell-beingの向上を目的に「適疎」をコンセプトに掲げたまちづくりを進める東川町の取組を現地で学ぶため、全国各地の行政職員や民間事業者等20名が参加しました。

【事前講義】

 主任講師:横浜商科大学商学部長 小島 敏明 氏

 平成23年から東川町のまちづくりに興味を持ち、調査研究を行ってきた主任講師の小島氏による事前講義がオンラインで実施されました。

 東川町が「写真の町」を軸とした文化のまちづくりを進めてきた背景のほか、開放感があり、のびのびと学習することができる小学校の新設、東川町で生まれる子供たちに椅子を贈る「君の椅子」プロジェクトをはじめとする子育てや教育の支援といった住民福祉を高める取組が紹介され、受講者の関心を引きました。その一方で、どうしてこの取組が可能なのか、なぜ持続できるのかという疑問を投げかけ、実際に東川町に行って確かめたいという思いを呼び起こしました。

【令和5年10月27日(金)】

フィールドワーク

  訪問先:①東川町複合交流施設せんとぴゅあ

      ②キトウシの森 ③北の住まい設計社 ④東川町立東川小学校

      ⑤東川町共生プラザそらいろ ⑥KAGUの家

 東川町内の施設を訪問し、その建物が存在する因果関係を考えながら、なぜという疑問、気付きを得るフィールドワークが実施されました。

 フィールドワークでは、写真文化首都の拠点として多様な文化を発信し、人々の交流を創出するとともに公営の日本語学校もある「東川町複合交流施設せんとぴゅあ」、東川町の眺望を生かした温浴施設「キトウシの森」、家具やインテリア雑貨をそろえたショールーム、カフェ&ベーカリーも併設している「北の住まい設計社」、地域交流センターや隣接する特定地区公園と連携し、自然豊かな地域ならではの教育を展開するために新設された「東川町立東川小学校」、全世代共生型交流×活躍×健康を推進する拠点施設である「東川町共生プラザそらいろ」、建築家の隈研吾氏と連携したサテライトオフィス「KAGUの家」を訪れました。それぞれの施設に関する説明を受けつつ、その施設が住民にもたらす意味・効果を聞きました。どの施設も人との交流に重きをおいており、東川町の住民同士のつながりを感じるとともに住民を大切に思う東川町のまちづくりを実感できました。

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グループワークⅠ

 グループワークⅠでは、東川町若手職員1名と受講者4名で構成される5班に分かれて、フィールドワークで感じた疑問を共有するという形で進められました。

「公共施設が多いが財源はどうしているのか」「地元の人でUターンする人はいるのか」「町の施策に反対する住民はいるのか」等、実際に見て感じた「東川のなぜ」をグループ内で共有するとともにリアルな現場の実情について東川町職員から説明もあり、理解が深まりました。

【令和5年10月28日(土)】

特別講義・トークセッション

  主任講師:横浜商科大学商学部長 小島 敏明 氏

  講  師:東川町長 菊地 伸 氏

 特別講義では、現在の東川町の取組に加え、「これからの東川町」についてお話しいただきました。世界に向けてデザインを発信するデザインミュージアム構想や東川米関連施設の建設等、現在の東川町の「強み」を拡充・発展させる取組がある一方で、廃きょとなった温泉街の再生や地域交通の見直しといった「弱み」を克服するための取組も紹介されました。地域活性化の先進地として注目される東川町にも、他地域と同様に課題があり、地域活性化のためには、課題の克服と強みを生かしたチャレンジの両方に取り組んでいくことが重要と学びました。

 また、参加者から質問の多かった町の財政についても説明いただいた。フィールドワークで見学した町営の施設は、東川町の強み(東川町らしさ、暮らしやすさ)の象徴であるが、建設や維持にはコストがかかります。町に有利な辺地債や補助金等を活用することで、これらの事業が可能となっていました。町民のやりたいことを最優先とし、財源がなくてもあきらめるのではなく、財源を確保しようとする職員の姿勢に、受講者は感銘を受けました。

 トークセッションでは、主任講師の小島氏と東川町の若手職員が加わり、町長による特別講義の内容を踏まえ、熱い意見が交わされました。若手職員目線で「なぜ東川町に就職したか」「東川町の取組を内側から見てどう感じるか」等が語られ、東川町の強み・東川町らしさを多面的にとらえることができました。

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グループワークⅡ

 グループワークⅡでは、まず東川町で移住・定住者が増加している理由と他地域でも導入可能な施策について話し合いました。理由としては、豊富な水資源、スキー等が楽しめる大雪山、空港へのアクセスの良さという地勢的な利点といった町の強みを理解した上で、その豊かな暮らし・ライフスタイルを「ブランド」として発信していることが挙げられました。

  また、職員の住民を応援するマインドが、大きな役割を果たしているのではないかといった意見も出ました。地域の資源と向き合うこと、発信すること、職員の受け入れマインドが好循環を生んでおり、これらの取組は他地域でも導入できると結論付けました。

  次に、東川町が抱える課題と解決へのアイディアについて話し合った。課題として、先進的な取組を数多く行うがゆえの職員の多忙化や、主要産業の後継者不足、適疎を維持するためのUターン促進が挙げられました。解決に向けては、町の主要産業を含めた東川町らしさの発信やふるさとへの愛着形成を目的とした教育連携のほかに、持続可能性という点から民間連携や外部人材活用を通して、職員の負担軽減を図っていくことも重要ではないかといった意見が出ました。

 

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さいごに(まとめ)

 今回の実践塾では、事前講義やフィールドワークを通して、受講者自らが「なぜ」という疑問を持ち、グループワークにおける東川町職員、他受講者との交流からその答えを深く考察することができました。

 東川町は「開拓のまち、移住者のまちである」という小島氏の言葉どおり、いろいろな人がこの町を開拓し、公営の日本語学校やJETプログラムを通じた世界との交流や移住者の受け入れをしながら発展してきました。また、まちの資源と向き合い、ビジョンを持つことで「人」・「自然」・「文化」が共生したまちづくりを行っています。そして、その活動から生まれた豊かな暮らしは、さらに移住者を惹きつける。まちづくりの要は人であり、その人を惹きつけ、大切にするという東川町の姿勢から地方がこれから目指すべきまちづくりのあり方を知ることができました。

受講者の声

 ・人口が増加し先進事例とされる東川町の背景には、東川町職員の町を想う強い気持ちがあるからこそ実現できるのだと感じました。

 ・町としての明確なビジョンが、東川町職員はもちろん、住民にもしっかり共有されることで、何事も「予算がなくてできない」ではなく「どうやったらできるか」というマインドになり、町がいきいきするのだと感じました。

執筆者

 地域活性化センター 企画・人材育成グループ   笈田 紗希(福井県からの派遣)

                         安本 彩乃(福岡県からの派遣)

           地方創生・情報広報グループ 本間  歩(山形県鶴岡市からの派遣)

連絡先

セミナー統括課
TEL:03-5202-6134  FAX:03-5202-0755  E-mail:seminar@jcrd.jp