【終了レポート】令和5年度地方創生実践塾in高知県四万十町

終了レポート

2024年03月21日

移住者1%戦略の実現 ~住みたいをつくるまちの秘訣~

令和5年11月17日(金)~18日(土)に、「移住者1%戦略の実現 ~住みたいをつくるまちの秘訣~」をテーマに地方創生実践塾を開催しました。

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1 開催地概要

 四万十町は、平成18年3月20日に高知県の窪川町、大正町、十和村の2町1村が合併して誕生した総面積642.28平方キロメートル、人口15,457人(令和5年10月31日現在)の町です。位置は、東から西に流れる四万十川の中流域にあり、東南部は土佐湾に面しています。集落の多くは四万十川とその支流の河川沿いや台地上にあり、一部は土佐湾に面する海岸部にあります。

2 開催地の取組

 四万十町は社会増の取組を積極的に行い、毎年、町の人口の約1%が移住して来ています。移住・定住施策で目指している1番の目標は、ただ人口を維持するだけではなく、四万十町で暮らす人、四万十町に移住した人、そしてこれから移住する人々が幸せに暮らしていけることです。

3 実践塾内容

(1) 講義「令和5年度子育て支援施策概要」 主任講師:四万十町政策監 大元 学 氏

 主任講師の大元氏から、四万十町の人口や財政状況、町の重点施策に位置付けられている人材育成施策や子育て支援施策についてご紹介いただきました。
 四万十町では、町の将来を担う人材を育成するため「未来塾」を開設しています。
 未来塾とは、中学・高校生の希望進路の実現を応援する取組で、町が放課後の学びの場を作り、学力向上の支援を行っています。これにより、町内中学から町内高校への進学割合が倍増しました。
 また、子育て支援施策では、補助金の拡充や給食費の無償化だけでなく、今年度から子育て等に関するオンライン(LINE)相談も運用しています。
 こうした支援策を通じて、町の未来を担う人材を育成し、町民が住み続けたいと思えるまちづくりをすることが重要であると学びました。

(2)講義②「移住定住推進の取り組み」 講師:四万十町にぎわい創出課主幹 小野川 哲 氏

 小野川氏からは、四万十町の移住・定住施策について講義いただいた。四万十町では、空き家や使われなくなった県職員住宅等を活用し、移住希望者が1泊から利用できる「お試し滞在住宅」や、最長2年間住むことができる「移住支援住宅」など、移住希望者のニーズに合わせた住宅を整えています。また、空き家の有効活用をスムーズに進めるため、町が空き家の所有者と12年間の賃貸契約を行い、改修をした住宅を入居希望者に貸し出す「中間管理住宅」の整備に注力しています。
 移住希望者にとって新たな土地へ移り住むことは大きな不安であるため、こういった短中期的に体験できることは、移住のきっかけにつながっていくことを学びました。

(3) 講義③「空き家活用と地方創生」 講師:空き家活用株式会社 代表取締役CEO 和田 貴充 氏

 和田氏からは、「空き家活用」による地域活性化の取組や想いを講義いただきました。
 令和5年時点で全国に約849万戸の空き家があり、10年後には約2,000万戸が空き家となる予測されており、これは全国の住宅数の約1/3にあたる数字です。これらの空き家を活用するため、和田氏が代表を務める空き家活用株式会社では、地方公共団体と連携を進め、空き家実態調査システムや空き家の市場流通等を手掛けています。四万十町でも活用可能な空き家を可視化し、活用可能な空き家は「中間管理住宅」として活用しています。
 空き家問題を解決することはまちづくりやまちのブランディングに直結し、移住施策としても活用できることを学びました。

(4) 講義④「広報戦略と情報発信」 講師:地域活性化センター 地域創生・情報広報グループ 副参事 竹村 俊斗 氏

 四万十町役場から地域活性化センターに派遣中で、四万十町勤務時は企画課で広報を担当した竹村氏に、当時の広報戦略のリブランディングについて講義いただきました。
四万十町では、広報戦略を実践していく中、「テクニックよりコンセプト」が重要だと考え、四万十町を町の内外の人がどう思っているか調査しました。調査の結果、「水」のイメージを持っている人多いことが分かり、「水と呼べる水」をキーワードとして広報戦略を実施しました。
 広報戦略の成果の一つとして、四万十川を中心に撮影した映像や写真が、全国放送の番組を含む数多くのメディアで使用されています。
 広報の強化となるとデジタル広告の拡大等と安易に考えがちですが、まずは自前でできることから実践し、コンセプトを重視したアイデンティティが確立できる広報戦略が重要なのだと学びました。

(5) トークセッション 講師:四万十町にぎわい創出課主幹 小野川 哲 氏、地域おこし協力隊隊員 井上 佳奈 氏、安村 真尚人 氏、横田 岳夫 氏

 主任講師の小野川氏のファシリテーションの元、現役の地域おこし協力隊員の3名とのトークセッションでは、地域おこし協力隊になった動機や現在の活動等について掘り下げました。
 井上氏は、農業の6次産業化等の食を軸とした地域づくりに挑戦しています。安村氏は、海洋保全活動からスマホ教室等の集落支援まで幅広く活動しています。横田氏は、認定新規就農者のフォローを行いながら自身も就農を目指しています。
 トークセッションでは、四万十町の地域おこし協力隊に対する受け入れ体制が整っていることで、3名とも自然環境だけでなく、町や住民のフォロー体制等の「人」に魅力を感じて着任したのだと語られました。

 その結果、現在20名を超える地域おこし協力隊員が活躍しており、さらに四万十町の魅力が増しているのを感じました。

(6)フィールドワークⅠ「四万十川×ドローン」

 最初のフィールドワークでは、四万十川「一斗俵沈下橋」にてドローンの撮影見学を行いました。四万十町では、地域の魅力発信や災害対応にドローンを活用しています。地域活性化センターが開催する地域プロモーションアワード2022 動画大賞では、ドローンを活用し地域活性化センター賞を受賞しました。ドローン活用の場が広がりを見せる中で、四万十町では現在3名がドローンの資格を持ち、次年度も4名分の予算を計上する予定であり、最新技術を積極的に取り入れていく姿勢を学びました。

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(7)フィールドワークⅡ「中間管理住宅・七里」

 2つ目のフィールドワークでは、これから中間管理住宅として貸し出す予定で、リフォーム中の空き家を視察しました。視察した空き家は1000万円以上のリフォーム代で修繕しており、とても奇麗な内装となっていました。リフォームには国の補助金等を活用することで、町の負担をかなり抑えることができています。

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(8)フィールドワークⅢ「短期滞在型住宅、移住支援住宅」

 フィールドワーク最後は、四万十町への移住を考えている方を対象にした、1日から試すことができるお試し住宅を視察しました。県の独身用職員住宅を改修し、1階4部屋、2階4部屋を貸し出しています。最長5泊6日宿泊することができ、営農体験の学生なども利用しています。

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(9)グループワーク「空き家の活用について」 講師:株式会社SHIMANTO TOWN STORY 代表取締役 高瀬 直史 氏

 特別講師の高瀬氏のファシリテーションのもと、「空き家の課題」、「空き家の掘り起こし方法」、「空き家の活用方法」についてグループワークを行いました。空き家は倒壊等の危険がある一方で、移住支援に活用できる有用なものでもあります。まずは、空き家の把握が重要であり、参加者からは近隣住民へのヒアリングやドローン活用による空き家把握の手法が提案されました。
 また、発見した空き家の活用方法として、ジム、シェアキッチン、シミュレーションゴルフ、シェアシアターなどの意見が挙がりました。高瀬氏は、シミュレーションゴルフとシアターを同時に行うなど、限られたスペースの中で複合的にできるものを考えていけば、町に必要なものを作っていけると述べられました。

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4 おわりに

 四万十町では、空き家の活用による移住・定住施策、清流を活かした「水と呼べる水」プロモーションなど、町に眠る資源を有効活用していることが分かりました。全国各地で人口減少が進み、地域の活力が低下する中、行政、民間、住民が協力し合い、地域を盛り上げていこうとする姿勢に大きな感銘を受けました。

受講者の声

・町職員、地域おこし協力隊、民間企業の連携がとてもうまくいっていると思いました。
・実際に自治体の方々から現場における課題や実施例を聴くことができ、非常に有意義でした。

執筆者

企画・人材育成グループ 村上 和也(京都府木津川市から派遣)
企画・人材育成グループ 川口 峻平 (鳥取県から派遣)
地域創生・情報広報グループ 市井 敦也(富山県から派遣)

連絡先

セミナー統括課
TEL:03-5202-6134  FAX:03-5202-0755  E-mail:seminar@jcrd.jp