【終了レポート】令和6年度【スタンダード(平日半日型)】新たな知と方法を生む地方創生セミナー「ウェルビーイングな職場づくり」
2025年01月06日
はじめに
令和6年度新たな知と方法を生む地方創生セミナー「ウェルビーイングな職場づくり」を、2024年10月28日(月)に開催しました。地方公共団体などから現地会場7名、オンライン16名の参加がありました。
今回のテーマ
ウェルビーイング(well-being)とは、身体的・精神的・社会的に満たされている状態であることを指し、近年ではWHO(世界保健機関)が憲章で言及するなど世界的に注目されている概念です。
本セミナーは、ウェルビーイングの概要から実践事例までを幅広く紹介することによって、ウェルビーイングな職場づくりに対する考え方や取り組み方を学ぶことを目的として開催しました。
講義
【主任講師】一般社団法人オーセンティックライフ協会代表 栗原 大 氏
東京都東村山市生まれ、早稲田大学商学部卒、国際医療福祉大学修了。元ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカルカンパニー 人材開発責任者、元立教新座高校非常勤講師。大手企業で働く傍ら、コンサル、研修講師、プロコーチ、高校の非常勤講師など複数の名刺を持ち活動をしている。専門領域は、ウェルビーイング×組織開発、人材開発。リモートワーク、ワーケーションも積極的に活用し、現在は、東京と鎌倉の2拠点生活をしている。
【講義 ウェルビーイングの概要】
栗原氏は、「ウェルビーイングの概要」をテーマに講演されました。ウェルビーイングの認知度は、2022年に20.8%でしたが、2024年には31.1%となっており、世の中で徐々に注目されるようになっています。ウェルビーイングについて、WHOは「肉体的にも、精神的にも、社会的にも、全て満たされた状態にあること」と定義していますが、栗原氏個人の定義としては「イキイキワクワク、自分らしく、強みを発揮して、家族や仲間と、豊かな人生を送ること」であると述べられました。
現在日本でウェルビーイングが注目されてきている背景として、予測不可能な出来事が次々と起こり、従来の常識が通用しなくなってきているという状況があります。この状況の中、課題を解決する手段としてウェルビーイングが用いられるようになりました。ウェルビーイングは、企業だけでなく、地方公共団体においても導入しているところが増えてきています。多くの企業は、「ウェルネス」に限定し、従業員に健康的な食事と運動を推奨してきましたが、最も焦点を当てるべき要素は、「キャリア」であると述べられました。
また、職場のウェルビーイングを高めるために必要な因子について、企業数社が実施した調査結果をご紹介いただきました。職場のウェルビーイングを高めるためには、心身が健康であることに加えて、仕事への向き合い方が、必要な因子であると各社が共通して挙げていました。その他、人間関係、経済面、感謝・親切心など、ウェルビーイングには多くの因子があります。
事例紹介
【登壇者①】 奈良県三宅町長 森田 浩司 氏
1984年奈良県磯城郡三宅町生まれ。大阪商業大学を卒業後、土木作業員や国会議員秘書などを経験し三宅町議選に立候補。1年間の議員生活を経て、2016年に32歳で三宅町長選挙に初当選。全国で二番目に小さい町「三宅町」で、全国で二番目に若い町長として就任して以降、職員や住民との「対話」を心がけながら町政の改革を進める。
まちづくりセンター「MiiMo」をオープンさせ、地域の交流をさらに生むなど、誰もが住みやすいまちづくりに取り組んでいる。
【事例紹介①】
本事例紹介では、「三宅町が目指す未来」をテーマにご講演されました。三宅町では、皆が同じ方向を向いてまちづくりをしていくために、「Vision」「Mission」「Value」を掲げており、こちらには失敗を恐れずに自分らしいチャレンジができるまちを目指していきたいという想いが込められています。
行政は新しいことに挑戦すると、反発を受けやすいという傾向にありますが、挑戦する人が褒められなければ、まちは衰退していく一方であるため、失敗を恐れずにチャレンジしていく必要があると述べられました。この失敗を恐れずチャレンジする風潮は、職員だけにとどまらず、住民にも広がってきているとのことでした。
また、自分らしくハッピーに生きるために必要な変化として、「アンコンシャスバイアスに気付く」「心理的安全性を担保する」など意識すべきポイントを、森田町長の経験を交えてご紹介いただきました。
最後に、自治とは無理に成長を目指すのではなく、自分のできる範囲内で、分相応になにかを作り出すことであると述べられました。三宅町役場では日々の業務を遂行しながら、チャレンジする余白を作るために、業務内容の見直しや生成AIの活用について検討しているとのことでした。
【登壇者②】 埼玉県横瀬町長 富田 能成 氏
1965年横瀬町生まれ。国際基督教大学(ICU)卒業後、日本長期信用銀行(現新生銀行)に入行。法人営業、海外留学、海外勤務等を経て、不良債権投資や企業再生の分野でキャリアを積む。
2011年4月から横瀬町議会議員を経て、2015年1月より現職。現在3期目。官民連携プラットフォーム「よこらぼ」を立ち上げ、都市圏の人材や民間活力を町に呼び込むなど、「日本一チャレンジする町」を標榜しユニークな施策を展開している。横瀬町は、「2022年度ふるさとづくり大賞」優秀賞を受賞。
【事例紹介②】
本事例紹介では、「"カラフルタウン"横瀬町の取り組み」をテーマにご講演されました。横瀬町では、外部からプロジェクトを誘致するための官民連携プラットフォーム「よこらぼ」の立ち上げをきっかけに、様々なチャレンジがされる町になり、横瀬町らしさである「日本一チャレンジする町 日本一チャレンジを応援する町」「オープン&フレンドリー」が形成され始めました。
実際にウェルビーイングを取り入れている例として、総合計画策定にあたり、町民を対象としたアンケートにウェルビーイングの項目を導入し、ウェルビーイング指標の基礎データの収集を行うとともに、総合計画ではウェルビーイングを明文化し、各施策にウェルビーイング指標を設けました。また、ウェルビーイングなまちづくりを推進するための協議会が設立され、ウェルビーイングに関する活動に支援を行っています。さらに、地域おこし協力隊によるウェルビーイングの推進活動を行っています。
また、ウェルビーイングな町は、ウェルビーイングな役場(職場)から作られるという考えのもと、職場づくりを行っているとのことでした。横瀬町らしさである「日本一チャレンジする町・日本一チャレンジを応援する町」「オープン&フレンドリー」について、職員に共有しているほか、「対話」「連携」「お役所仕事を超えていく」ことが職場づくりの重要なポイントとして挙げていました。
トークセッション
トークセッションでは、参加者からの質問をもとに議論が進められました。ウェルビーイングを定着させるための工夫に関する質問については、ウェルビーイングという言葉をいきなり使うと抵抗が生まれるため、まずは課題から入り、そこにウェルビーイングを結び付け、さらに数字などのデータを結び付けることが効果的であるという意見が出ました。
ウェルビーイングを向上させるための研修を企画する場合、どのようなテーマが良いかという質問については、仕事以外のテーマを取り上げることや、対話形式で実施すること、所属や役職の壁を越えて多様な人を参加させることが有効であるという意見が出ました。
また、今回の研修で「対話」というワードが多く出てきたことに関連して、対話のコツはリアクションをしっかりとること、丁寧に聞こうとする気持ちを持つことが重要であるとお話されていました。
セミナーを終えて
本セミナーでは、ウェルビーイングに関する知識や取組事例を学ぶことができました。ウェルビーイングは人々の心身の健康に寄与することはもちろんのこと、組織のパフォーマンス向上のためにも必要であることが分かりました。また、講師の方々が共通して、対話の重要性を述べていたのが印象的でした。まずは周囲の人との対話を意識的に取り組むことが、ウェルビーイングへの一歩となるのではないかと思いました。
連絡先
セミナー統括課
TEL:03-5202-6134
FAX:03-5202-0755
E-mail:seminar(at)jcrd.jp ※メールアドレスの(at)は@に変更ください。