【終了レポート】令和4年度【アドバンス型】新たな知と方法を生む地方創生セミナー  地域力創造大学校®カンファレンス~地域づくりはひとづくり、地域に必要な人材になるために~

募集終了 終了レポート

2022年11月25日

1b8eb8b16e1a9414e7f8675d5c9429e4d3512c50.png


令和4年度新たな知と方法を生む地方創生セミナー「地域力創造大学校®カンファレンス~地域づくりはひとづくり、地域に必要な人材になるために~」をリアルとオンラインを併用して開催しました。

全国各地から自治体職員など30名の方々に参加いただきました。

講義Ⅰ みんなが幸せになるための自治体職員の働き方

九州大学大学院法学研究院 教授 嶋田 暁文 氏 

画像1.jpg

中央大学法学部卒業後、同大学院法学研究科に進学。その後、地方自治総合研究所非常任研究員、日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、2004年4月に、九州大学大学院法学研究院助教授として着任。准教授への職名変更を経て、2018年4月より現職。

(一財)地域活性化センター人材育成エコシステム研究会委員長

〈専門分野〉

行政学、地方自治論、公共政策論

嶋田氏からは、自治体職員の働き方について総論的にご講義いただきました。

自治体職員への意識調査結果によると、自治体で働く約3分の1の職員が自身の仕事に対して「やりがい」を持てていない反面、仕事において役職に就くよりも自分のやりたい仕事をしたい「仕事のやりがい志向」を持っているという説明がありました。しかし、職員の現状として日々の業務に追われ、自らのやりたいことに向かって一歩を踏み出すことができていないことを指摘されました。

講義を通じて、自身の働き方を今一度見つめ直し、「自分の仕事がまちを作っている」という意識で業務に取り組むことが重要であると学びました。

講義Ⅱ 今、「共創」型人材が必要とされる理由~「官民共創」地域課題解決に向けたイノベーティブなアプローチ~

一般社団法人官民共創未来コンソーシアム 理事 箕浦 龍一 氏

画像2.jpg

1991年総理府入府。行政管理局企画調整課長等を経て、総務省大臣官房サイバーセキュリティ情報化審議官を最後に2021年7月退職。総務省時代に取り組んだオフィス改革を中心とする働き方改革の実績により人事院総裁賞を受賞。日本行政学会では「機動力の高いナポレオン型管理職」として紹介される。現在は、(一社)官民共創未来コンソーシアム理事、(一社)日本ワーケーション協会特別顧問、(一財)地域活性化センターシニアフェローなどを務める。

箕浦氏からは、これからの自治体組織における官民共創についてご講義いただきました。

課題が多様化する現代社会において、既存の行政組織では新たな価値の創造に限界があるため、これからは組織外の様々な主体と弾力的に連携することが必要であると話されました。また、組織を横断してプロジェクトベースで取り組むことで、課題解決の実現や新たな価値の創造をすることができると説明されました。

ICTの活用によって、場所にとらわれない働き方が進み、個人が社会貢献や地域の課題に取り組める時代になっています。まずは、自治体が目指す未来像を主体的に描き、地域の人材や企業と連携して取組を進めていくことで、地域課題の解決に向けた新たな価値の創造ができると学びました。

講義Ⅲ 市民団体の取組事例

一般財団法人地域活性化センター理事長 椎川 忍

画像3.jpg

東京大学法学部卒。1976年自治省入省。大臣官房国際室長、財政局調整室長を務めた後、省庁再編後の総務省では自治財政局財政課長、大臣官房審議官、自治大学校長、初代の地域力創造審議官、自治財政局長などを歴任し、2012年9月退官。2014年から現職。移住・交流推進機構業務執行理事を始め各種公職を務めるとともに、内閣官房地域活性化伝道師、総務省地域力創造アドバイザーとしても全国で活動。さらに地域や分権をテーマとする執筆などでも幅広く活躍している。

椎川氏は、地域の人材育成において、個性豊かで多様な人材を地域の中で育てることが重要だと話しました。閉鎖的な環境の中では地域は活性化しないため、多様な人材が交流して新しいことを始める機会を創出するために、イノベーターとしての精神を持った人材を育成する必要性を説きました。また、外部からの人材と地域の人材を組み合わせ、官民を通じた人材育成に注力すべきであるとも説明しました。

多様な生活様式や価値観の変化によって地方の生活が若者に注目される中、コロナ禍の影響により東京への一局集中が緩和し始めています。今後地方への人の流れを加速化するために、外部からの人材を受け入れ、地域内に多様な人材の交流を生み出せるよう、地域住民の価値観を変えていくことが重要だと話しました。

地方への注目が増えている今、個性豊かで多様な人材を地域の中で育て、その人材が活躍できる環境を整えることが必要であると感じました。

飛び出す公務員(事例紹介)

【取組紹介①】青森県六ケ所村役場政策推進課 主査 中村 咲輝 

中村さん.JPG

2012年に六ヶ所村役場へ入庁。2016年から3年間、地域活性化センターへ出向。出向中に東京おもちゃ美術館や木育と出会う。出向後、六ヶ所村へ戻りおもちゃコンサルタントとして木育ワークショップを開催している。

 中村氏からは、地域活性化センター派遣時代から取り組んでいる木育の推進について紹介いただきました。中村氏は派遣時代に東京おもちゃ美術館で木育を知り、派遣元である六ヶ所村に木育を導入し、子どもたちの心を豊かに育む子育てを支援したいという思いを持つようになったといいます。東京おもちゃ美術館館長多田千尋氏の「夢を見るということは語り続けること」という言葉に感銘を受けた中村氏は、六ヶ所村長に木育の推進を提案し、地産地消の木製玩具を誕生祝い品として贈るウッドスタート宣言を青森県内初の自治体として行いました。その後、中村氏はおもちゃコンサルタントの資格を取得し、現在は木育推進に賛同した六ヶ所村立郷土館長と共同で木育ワークショップを開催しています。

自分の小さな一歩と共感してくれる仲間をつくることにより、様々な広がりができていくのだと学びました。

【取組紹介②】福井県越前市政策推進課 主査 波多野 翼 

波多野さん.jpg

2009年越前市役所入庁。市のご当地グルメ「ボルガライス」をPRする「日本ボルガラー協会」を仲間と設立し、ボルガライスの知名度を全国区に押し上げる! 子育てコミュニケーションアドバイザーとして子育ての講演活動や絵本の出版などマルチに活躍中。

波多野氏からは、越前市のご当地グルメ「ボルガライス」の情報発信を行う日本ボルガラー協会の取組について紹介いただきました。

ボルガライスは、30年以上前から地元の人に愛されてきたメニューであるにもかかわらず、活動当時は、ほとんど認知されていないご当地グルメでした。まちづくりに対する思いと市民の声や現状とのギャップに悩んでいた波多野氏は、ボルガライスを使って越前市の良さをPRする活動を始めました。波多野氏はPRポスターを制作するための協力金を地元市民から募り、返礼品として渡したPRポスターを市民が町中に貼ったことを機に、ボルガライスの認知度が上がり、市内飲食店で提供され多くのメディアで取り上げられるようになったと話されました。

やりたいことを実践するために、補助金に頼らず自分たちの力で一歩踏み出すことの大切さを学びました。

【取組紹介③】株式会社ドコモgacco 企画戦略部長 山田 崇 

山田さん.jpg

1998年長野県塩尻市役所入庁。官民連携推進課課長補佐を最後に、2022年3月退職。4月から新天地で新たな挑戦を始める。2012年から商店街に空き家を借り当事者として地域に向き合う活動「nanoda」を展開している。内閣府地域活性化伝道師。

山田氏からは、塩尻市職員時代から民間企業に転身にするまでの自身の取組について紹介いただきました。職員時代、商店街空き店舗を市民有志と共に自費で借り、人と人が出会う場を創出するプロジェクト「nanoda(ナノダ)」などの活動を展開してきた山田氏は、今年4月より民間企業に転身し、全国の地域を応援する仕事に挑戦を始めました。山田氏は、仕事や生活の中で小さな違和感を持った時、現状を変えるために「小さなことからちょっとやってみる」ことが重要であると話されました。個人ができることを小さくはじめ、やめる日を決めて成果を実証することで、行動による現状の変化に気づくことができます。

地域に寄りそうためには、自分ごとで地域と向き合い、小さな行動を起こすことがヒントになるという新たな視点を学びました。

【取組紹介④】神奈川県真鶴町政策推進課 課長補佐兼戦略推進係長 卜部 直也 

卜部氏.jpg

学生時代に「美の条例」に出会い、真鶴町の生き方に惹かれ2000年に真鶴町に移住・入庁。10年間、都市計画課などで生活風景を大切にする「美の条例」の運用を担当。様々な町民事業とも連携しながら、町民として港町の暮らしを満喫中。

卜部氏からは、真鶴町での生活と暮らしを活かした取組について紹介いただきました。真鶴町は、昔からある生活風景の美しさを守っていくための「美の条例」によって地域づくりを行っています。卜部氏は美の条例の運用を担当する中で、行政の中堅・若手職員と公募町民でチームを形成して朝市やお試し暮らし事業、起業体験プログラムなど多くの事業を立ち上げ、様々な入口から関係人口を増やして地域の人々とつなげてきました。これらの事業は、真鶴らしい風景があるからこそ人が集まったと話され、変わらない風景の中にある豊かさの重要性を説かれました。

地域独自の暮らしを守ることによって、人々がつながり新しい人の流れが生まれ、地域の未来を作っていくことができることを学びました。

4者のクロストーク

クロストークでは、事例紹介者4名に人生チャートを作成していただき、公務員時代の仕事に対するモチベーションの経過や落ち込んだ時にどう乗り越えてきたかについて、それぞれの経験を振り返りながら紹介いただきました。

36883C2E-5F78-4710-BEFA-DBC5C613EE02.jpeg.png

ワークショップ

2日間の講義を通じて学んだこと、感じたことなどをグループで意見交換しました。その後、参加者個人がこれから新たに挑戦したいことをプロミスカードとして紙に書いて見える化し、参加者全員で共有を行いました。

D933ED46-48B5-48B1-B161-ADDF6EA9F4AA.jpeg.png

セミナーを終えて

本セミナーを聴講して、日々の業務だけではなく自分の関わるものごとに対して自分事として関わり、小さな一歩を踏み出すことの大切さを学びました。また、自分のやりたいことを実現するためには、思いに共感してくれる仲間をつくり、コミュニティの広がりを持って取り組んでいくことが重要であると感じました。

スケジュール

9月15日(木)

13:15~

開校式

13:20~

講義Ⅰ(九州大学大学院法学研究院 教授 嶋田 暁文 氏)

15:00~

講義Ⅱ(一般社団法人官民共創未来コンソーシアム 理事 箕浦 龍一 氏)

16:10~

講義Ⅲ(地域活性化センター理事長 椎川 忍)

17:40~

UoCの施設、取組紹介(大里 学 氏)

18:00~

交流会

9月16日(金)

9:55~

事務連絡

10:00~

取組紹介(地域を飛び出す現役・OB・OG公務員)

11:40~

4者のクロストーク

12:10~

昼休憩

13:10~

ワークショップ(九州大学大学院法学研究院 教授 嶋田 暁文 氏)

14:40~

閉校式

15:00~

地域活性化センター見学

連絡先

セミナー統括課
TEL:03-5202-6134  FAX:03-5202-0755  E-mail:seminar@jcrd.jp