【終了レポート】令和5年度【スタンダード】新たな知と方法を生む地方創生セミナー ウォーカブルなまちづくり

新たな知と方法を生む地方創生セミナー(ベーシック) 終了レポート

2023年06月30日

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 令和5年度新たな知と方法を生む地方創生セミナー「ウォーカブルなまちづくり」を、令和5年6月2日(金)に開催しました。
 地方公共団体などから22名の参加がありました。

【講義】

株式会社 ワークヴィジョンズ 代表取締役 西村 浩氏 

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建築家/クリエイティブディレクター

1967年佐賀県生まれ。東京大学工学部土木工学科卒業、同大学院工学系研究科修士課程修了後、1999年ワークヴィジョンズ一級建築士事務所を設立。土木出身ながら建築の世界で独立し、現在は、建築・リノベーション・土木分野のデザインに加えて全国各地の都市再生戦略の立案、まちづくりのディレクションまで、「まち」と「そこで暮らす人々」の豊かで愉しい日常づくりを実践している。

講義➀ 地方都市に見るウォーカブルなまちの在り方

 最初の講義では、㈱ワークヴィジョンズの西村さんが登壇し、佐賀市での取組事例を中心に、"ウォーカブルなまち"に対する考え方を聞くことができました。その中で印象的だったのは、講義の中で西村さんが繰り返し話していた「歩道整備は後」ということです。行政側の仕事として進捗や完結が分かりやすいハード整備を優先したくなる感覚というのはよくわかるところではあります。しかし、通りの雰囲気を作るのはコンテンツであるとの西村さんの言葉のとおり、賑わいを創出するのは店舗などそこに入るテナントであり、年配向けの店舗には年配が、子育て世代向けの店舗にはその世代が集まります。それが連なれば"歩きたい道"になっていく。どんな暮らし、どんな地域にしたいのかという思いを持って根強く工夫をしていくと投資主体が現れ、少しずつウォーカブルになっていく。そこまできてやっと歩道整備のフェーズとなることを、様々な工夫や仕掛けの具体事例を交えながら講義していただきました。

また、西村さんは講義の最後に、ウォーカブルなまちづくりの最終的な目標は自治の再生であり、芝生をはってもらうような経験が子供に帰属意識や地域愛を育むといった考えを根本に据えて、長い目でチャレンジと実行を続けていくことが大事だと話していました。

【 事例紹介①】

岡崎市役所 都市政策部 まちづくり推進課 中川 健太氏   

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1981年三重県伊勢市生まれ。
2003年岡崎市役所に土木技師として入庁。
水道局や河川課で公共施設の設計・工事監理・維持管理に携わる。
その後、都市再生の計画策定やかわまちづくりを担当。
現在はQURUWA戦略全体の推進を担当。
QURUWA戦略の立ち上げから現在まで10年間関わり続けている唯一の職員。

QURUWA戦略("公"の視点から)

 愛知県岡崎市役所の中川さんに、岡崎市の事例から、"まちづくりにおける公民連携"を中心に講義をしていただきました。岡崎市では「QURUWA戦略」を都市計画の中心に据えています。かの徳川家康ゆかりの岡崎城の外堀「総曲輪(そうぐるわ)」と重なるこのエリアの集客施設に接続する動線を、エリアの約半分を占める公共空間をつないで回遊性を意識しながら整備し、公民連携の手法を使いながら持続可能な都市経営を目指す戦略です。中川さんからは、市職員として民間投資や市民参加を呼び込む環境を整備するために行ってきた様々な取り組みをご紹介いただきました。連携のポイントは、"パブリックマインドを持つ民間"を引き込むこと、"ビジネスマインドを持つ市役所"であることの両輪が揃っていることなのですが、中川さんは双方の、行動原理や、使う言葉など、まさに異文化コミュニケーションといえるほどの違いに直面した経験を語ります。その中でも行政の役割を民間ビジネスの環境整備であると考え、奔走してきた中川さんの講義では、市役所が持つべきマインドと、チャレンジの生きた経験を学ぶことができました

【事例紹介②】

studio36 畑 克敏 氏

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1981年兵庫県丹波市生まれ。近畿大学大学院修士課程修了(建築学)。藤村龍至建築設計事務所(現RFA)の黎明期に様々な用途や規模の建築設計に従事したのち、東洋大学建築学科の設計助手として、設計教育に加えて、産官学連携の「鶴ヶ島プロジェクト」「大宮プロジェクト」等に関わる。2015年に「RF地区整備事業(QURUWA戦略)」の開始と共に岡崎市に移住し、QURUWA関連プロジェクトのコーディネート等に従事したのち、studio36を共同設立。
生活圏が著しく狭いため東海エリアの中でもほぼQURUWAのことしか知らない。

QURUWA戦略("民"の視点から)

  続いて岡崎市の取組で公民連携の片輪である民間側のキーマンの一人として活動してきたstudio36の畑さんからは、QURUWA戦略に関わる取組みを、現場のライブ感あふれる感想を中心に、民間側の目線で語っていただきました。講義では、行政とのやり取りに疲弊した初期から、双方の役割を考えた時期、出店停滞による行き詰まり突破のきっかけとなった自治会との連携など、一筋縄ではいかない状況を、行政側の中川さんと共に乗り越えてきた様子を知ることができました。特に、双方の役割において、0から1を作るのは民の方が得意だが、1を10にするときは行政との連携が不可欠というところが印象的でした。この役割分担というのは、公民双方が何となくわかってはいるものの、信頼しあえずにすれ違っている状況があるのではないかと思います。岡崎市では、この二人のように双方の立場を理解して動いているからこそ、両輪がうまく回っているのだと感じました。

【トークセッション】

 講義後のトークセッションでは、それぞれの公民連携への思い、ウォーカブルの定義や民間のパブリックマインドなどについて、西村さんの軽快な進行で、楽しくトークが展開しました。民間の二人が人事異動や市長交代時の危機感など市役所 内の動きについて行政の中川さんに質問するシーンや、畑さんの講義でもあった役割分担について、二人のようにひざを突き合わせて関係を作れればとても良いといった話もあり、講義の内容を肉付けするような充実したトークセッションでした。

セミナーを終えて

 今回のセミナーでは、ウォーカブルなまちづくりというテーマの元、現場のキーパーソンの講義から、二つの市の10年以上の取組みを俯瞰的に知ることができるものでした。さらにそれが官民双方の視点から立体的に見えてくる構造になっており、都市計画の担当者でなくても、官民を問わず公民連携事業に携わる方にとって非常に有意義なものになったのではないかと思います。個人的には、講義終了後の交流会で西村さんと畑さんがしていた建築家界隈のこぼれ話が面白く、こういったこともセミナーの醍醐味だと感じました。

スケジュール

6月2日(金)

13:30~

開講式

13:40~

講義(㈱ワークヴィジョンズ 西村 浩氏)

14:50~

事例紹介①(岡崎市役所 中川健太氏

15:40~

事例紹介②(studio36 畑 克敏氏)

16:30~

トークセッション

17:20~

事務連絡等

17:45~

交流会※現地希望者のみ

連絡先

セミナー統括課
TEL:03-5202-6134  FAX:03-5202-0755  E-mail:seminar@jcrd.jp