平成29年度第2回地方創生実践塾 山梨県富士吉田市
地方創生実践塾 募集終了 終了レポート
2017年06月09日
平成29年度第2回地方創生実践塾 in山梨県富士吉田市
人々の「つながりのチカラ」が支える"交流と定住の戦略"
―「地域コミュニティの一員」になりに来る まちづくりの実践―
第2回地方創生実践塾の舞台は2013年に世界文化遺産に"信仰の対象と芸術の源泉"として登録された「富士山」を中心に「水」「信仰」「織物」のまちとして発展してきた山梨県富士吉田市です。
今回の実践塾は大きく分けると3部構成となっており、第1部で富士吉田市の「地域コミュニティの一員」になりに来る戦略を学び、第2部で全国各地の実践モデルから「地域コミュニティの一員」になりに来る戦略を考え、第3部のフィールドワークとワークショップを通して学びを更に深めていきました。
まず、最初のオリエンテーションの中で主任講師の慶應義塾大学総合政策学部教授玉村雅敏氏の専門分野「ソーシャルマーケティング」にちなんで、「社会」という言葉の意味から「地方創生」を考えることから実践塾はスタートしました。
玉村氏からは「社会」とは「つながりのネットワーク」であり、人口減少が進み、人と人とが出会いにくくなることで起きる社会課題は「つながりのネットワークの課題」として捉えることができるとの話がありました。更にその社会課題の解決に取り組む地方創生は「つながりの創生」であるという話があり、私は「つながり」というポイントを探ることがこの実践塾を学ぶうえで重要であると感じました。
そして、最初の講義は一般財団法人富士吉田みんなの貯金箱財団代表理事の齊藤智彦氏です。齋藤氏がなぜ富士吉田市に関わることになったのかを紐解くと、2007年当時に山梨県、富士吉田市、慶應義塾大学の三者による地域活性化に関する包括協定をきっかけにスタートした富士吉田プロジェクトがあります。このプロジェクトにより大学の研究チームが様々な視点から調査を実施し、市への提言を行ってきました。一般財団法人富士吉田みんなの貯金箱財団の設立と地域おこし協力隊はその提言の内容から実現した事業です。
齊藤氏からは運営団体の仕組みや「空家リノベーションコンテスト」の具体事例を交えながら「仲間を集めること」「場所をつくること」の必要性について話がありました。
続いて、地域おこし協力隊として空き家の利活用を通じて移住者支援等を実施し、2015年に宿hostel&salon SARUYAを開業した赤松智志氏、同じく地域おこし協力隊を経て教育現場から地域の未来を変えていくNPO法人かえる舎代表となった斎藤和真氏を加えた3名を玉村氏がコーディネートしながらトークセッションが行われました。この中で赤松氏と斎藤和真氏の取組と人とのつながりをつくるための地域に関わるポイントの説明が行われ、第1部が終了しました。
第2部の全国の実践モデルのケースとして最初にお話しがあったのは、津屋崎ブランチ代表の山口覚氏でした。山口氏からは福岡県福津市で行われている対話の場づくりによるまちづくりの取組についてお話されました。
具体的な取組として、「まわしよみ新聞」というみんなで持ち寄った様々な社会・ジャンルなど新聞から気になった記事を切り抜き、意見交換をしながら切り抜きで一枚の全く新しい新聞を作るワークショップや「福津プチ起業塾」という企業支援を行う中で趣味を活かして地域を元気にしたいという思いをつなぐ活動の紹介がありました。これらの話を通じて特に印象的だったことは、課題解決型ではなく未来解決型思考が求められていることです。私自身が課題から物事を考えてしまいがちであり、新たな発見でした。
次のお話は、鳥取県の大山町でサテライトオフィスを設立し、ケーブルテレビによる住民参加型の番組制作をコンセプトにつながりを創出している貝本正紀氏からでした。貝本氏は東京の番組制作会社に入社し、被災地や衰退する地方や観光地を取材するにつれ、第三者として地域に関わるのではなく、自ら地域に移住し、映像の力で地域課題の解決に尽力されています。住民が自分の地域や人が出演するテレビを通してつながっていく取組や実際の内容を視聴しながらの講義となりました。
次は慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授の小島敏明氏から北海道東川町で取り組まれている、写真の町としてのお話やスモールビジネスが生む多様性についてのお話がありました。
第2部、最後の講義は株式会社博報堂の博報堂生活者アカデミー星出祐輔氏から富山県氷見市で実施された、地域の生活者となりきって暮らす中から感受した事を地域に生かす「五感留学」の事例を取り上げてのお話しでした。ワクワクするような未来を発想し、そこにたどり着くように逆説的に行動するデザインシンキングの手法が話されました。これらの考え方を翌日のフィールドワークで実践していくことが説明され、全ての講師からの話が終了しました。
最後に、登壇した講師全員による創発セッション、初日の振返りを行い、一日目の講義が終了しました。講義終了後はロンリープラネットにも取り上げられ、外国人の方にも人気のスポットである新倉山浅間公園のパネルをバックに講師を囲んだ集合写真を撮りました。
その後、参加者や講師の皆さんによる大交流会が開催され、取り組んでいる業務や組織の壁を越えて多くの議論が交わされました。
2日目の会場は富楽時(ふらっと)から始まりました。まず、玉村氏による昨日の振り返りが行われ、次に、鹿児島県長島町前副町長・井上貴至氏から、地域づくりにどうやって取り組んでいくべきか井上氏自身の体験を交えながらお話がありました。地域づくりでは地域に飛び出し、現場のニーズを把握する必要があることや、地域の人が一番輝くホームグラウンドに入っていくことが重要であるというお話でした。
続いて、フィールドワークに向けて星出氏による昨日のデザインシンキングに関する詳しい説明が行われ、富士吉田市の地域資源を使った新たな方策の提案を行うため、各グループがフィールドワークへと移動しました。
フィールドワークを終えた各グループはその後、人形や積木、粘土などを使った玉村教授独自方法によるワークを経て更にイメージを膨らませ、発表へと移っていきました。各グループの発表はどれも個性的なものとなっており、興味深いものばかりでした。
今回の実践塾のテーマは人々の『「つながりのチカラ」が支える"交流と定住の戦略"―「地域コミュニティの一員』になりに来る まちづくりの実践―」でした。これを実現するためには富士吉田市に住み、コミュニティの一員になりたいと思ってもらうことが必要です。それは一時的な金銭的支援だけでは達成できるものではなく、「まち」自体の魅力や人と「つながり」により自発的に行動してもらう必要があると思いました。地域の魅力は今までの歴史や人が紡いできたものであり、表面的な条件にとらわれることなく、自分も「まち」の魅力をもう一度探してみたいと思います。
ここで、他の参加者の方からの感想や意見を掲載します。
- 「まちづくりに関して無関心な人たちをどう巻き込んでいくかという取組のヒントや、課題解決のみを考えすぎない事業の考え方について学ぶことができた。」
- 「大変有意義でした。持ち帰って、職場に限らずいろんな人に共有して、仲間を作りながら実践していきたいと思います。」
- 「自分事=自分の居住地で実践されている方とコーディネートをされている方とでの言葉の重みが違ったような気がします。実践者の「地元」に対する思いを聞いてみたかったです。」
今後の地方創生実践塾も各地で開催されますので、ご期待ください。開催の詳細は当センターHPをご覧ください。
6月9日(金)1日目
13:00~13:30 | 開講式・オリエンテーション |
---|---|
13:30~15:15 |
富士吉田に学ぶ「地域コミュニティの一員」になりに来る戦略
|
15:15~18:30 |
全国各地の実践モデルで考える「地域コミュニティの一員」になる戦略
|
19:00~21:00 |
交流会
|
6月10日(土)2日目
8:00~9:00 | 【任意参加】みんなの貯金箱財団案内とまちあるき ※ 下吉田駅集合 |
---|---|
9:15~10:30 |
「地域コミュニティの一員」になりにくる戦略のポイント(玉村雅敏×山口覚・井上貴至・貝本正紀・星出祐輔・小島敏明・齊藤智彦・赤松智志・斎藤和真)
|
10:30~17:30 |
「地域コミュニティの一員」になりに来る"交流と定住の戦略"を発想するフィールドワーク&ワークショップ
|
17:30~18:00 | 総括・閉講式 |
連絡先
セミナー統括課
TEL:03-5202-6134
FAX:03-5202-0755
E-mail:seminar(at)jcrd.jp ※メールアドレスの(at)は@に変更ください。