【終了レポート】平成30年度 第8回地方創生実践塾(大分県竹田市)

地方創生実践塾 終了レポート

2019年01月08日

平成30年度第8回地方創生実践塾in大分県竹田市「全国最多規模の地域おこし協力隊の現場から~『農村回帰宣言市』の実力に学ぶ~」

平成30年11月3日(土)~4日(金)の2日間、大分県竹田市において、「全国最多規模の地域おこし協力隊の現場から~『農村回帰宣言市』の実力に学ぶ~」をテーマとして、平成30年度第8回目の地方創生実践塾を開催しました。全国各地の自治体職員など28名のご参加をいただきました。

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【11月3日(土)】

◆講義1「時代にふさわしい地域の価値づくりと地域おこし協力隊-竹田市の実践に学ぶ-」

 主任講師:宮口 侗廸氏(早稲田大学名誉教授)

 人口減少の克服に不可欠な発想として、人が複数の地域に関わる「交流・対流」の考えが非常に重要であることや、都市にしか住んだことがない若者に地方を経験させることは、若者に地方という選択肢を与えるとともに地元住民の方と若者の接点を作ることによって相互刺激と相互成長を誘発し交流の成果に繋がることなどについてご講義いただきました。

 また、全国最多規模の地域おこし協力隊数である竹田市において、地域づくりと農村回帰が進む背景にどのような仕掛けがあるかについて、現場から学びを得て欲しいとのお話がありました。

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◆講義2「人を育て、人をつなぎ、地域を創る!」

 講師:江藤 訓重氏(公益財団法人 阿蘇地域振興デザインセンター事務局長)

 地域おこし協力隊制度創設までの地方・地域の動きを含め、九州各地で行ってきた地域内外の人々をつなぐプロジェクトや都市の大学生と農山村地域をつなぐ地域づくりインターン事業の取組等についてご講義をいただきました。

 都市と農村を結びつけることによる横断的な関係性構築や交流を通じた相互成長が人材を育成し、人づくりに繋がっていくといったお話が非常に印象的でした。また、地域に入る方と受け入れる方、都市と農村を仲介するコーディネーターのそれぞれに役割を与えることが大切といったお話も非常に印象的で、これからの地域おこし協力隊を導入する上で必要になる考え方ではないかと感じました。

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◆講義3「新しい人材と地元住民の繋がり」

 講師:工藤 隆浩氏(竹田市企画情報課課長)、後藤 雅人氏(竹田市企画情報課TOP戦略推進室主査)

 後期高齢化率が全国1位である竹田市において、竹田市の人口動態等は日本全体の40年後に似た状況であり、竹田市の未来は日本の未来を想像する上での見本になるかもしれないとのお話が印象的でした。平成21年4月には、「農村回帰宣言」を標榜し、全国に竹田市への移住を促す政策を進めてきた結果、若い世代が新たなライフスタイルを求めて移住してきたこと、また、平成13年から実施してきた「地域づくりインターン事業」では、地域と学生の交わる機会が創出されてきた結果、地域によそ者や若者を受け入れる土壌が形成されてきたこと等が地域おこし協力隊のスムーズな受入れに繋がっているのではないかといったお話もありました。

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◆地域おこし協力隊活動報告

 竹田市地域おこし協力隊 藤原 美樹氏・吉峰 拡氏

【藤原 美樹氏】

 「竹田市の人が面白かったこと」に魅力を感じ、地域おこし協力隊として竹田市に移住。

 移住ガイドブック作成や空き家バンクのサイト管理・運営、移住促進記事制作等の地域おこし協力隊としての活動を行いつつ、並行して独立に向けた勉強や人間関係の構築、自己プロモーションに取り組まれているといったお話をいただきました。

 今後のビジョンとしては、「不動産+ライター」としてのスキルを活かし、竹田市の編集者として、「町を再生し、発信していきたい」と話されていたことが非常に印象的でした。

【吉峰 拡氏】

 「大学の修士研究のため竹田市で調査を行っていたら、いつの間にか暮らしていた」と話す吉峰氏は、文化政策の角度から見た移住者の獲得と文化振興の一体化に興味を持ち、地域おこし協力隊になられたとのことでした。現在は、竹田市の文化政策に関する企画・制作・運営業務等をミッションとして、2018年10月にオープンした竹田市総合文化ホール「グランツたけた」を拠点に様々な活動をされており、「面白いことが起こらないと思われたホールは終わり」とお話をされていたことが非常に印象的でした。

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【11月4日(日)】

◆フィールドワーク「竹田総合学院」

 農村回帰宣言による移住定住、既住定住の促進と雇用の創出を目指すため誕生した、「竹田総合学院」を訪問しました。当学院は、旧竹田中学校校舎が利活用されており、空き教室はアーティストの方々の創作活動スペースにもなっています。地域おこし協力隊として創作活動を一つのミッションに活躍されている方々も多く、陶芸家や彫刻家、画家等の方々から作品に込める想いやコンセプトなどについてお話を伺いました。

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◆フィールドワーク「城下町地域おこし協力隊活動場所」

 「かどぱん」

 古民家をリノベーションしたベーカリーカフェ「かどぱん」は、「たけた駅前ホステルcue」と一体となった施設で、地域のよりどころとしても機能している。「たけた駅前ホステルcue」代表の堀場貴雄さんが「ゲストハウスは手段。目的は若い人達の働ける場所をつくることです」と話されていたことが非常に印象的でした。

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 「みんなのいえカラフル」

 「みんなのいえカラフル」は、赤ちゃんからご高齢の方まで、障害の有無に関わらず誰もが気軽に集える場所。代表の奥結香さんからは、「交流できる場所をつくることにより、なじみの関係を形成し、助け合い・支え合いができる地域を目指す。差別のない住みやすい地域を目指すとともに、一人一人の力を最大限生かすことができる機会を創出し、延いては地域の活性化に繋げることを目的としています。今後も、気軽に「人」が集まる場所、繋がり合う場所にしていきたい」とお話をいただきました。お話を伺い、奥さんの想いや取組は、地域共生社会やSDGsの基本理念的な部分と重なっているように感じました。

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 「たけたから」

 「たけたから」は、竹田で活動するクリエイターの作品を中心に展示・販売を行うアートギャラリーとなっています。竹田総合学院で創作活動に取組むアーティストの方の作品も販売されていました。陽のあたる店内は、コワーキングスペースとしても利用されているとのことでした。

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◆グループワーク・発表・講評

 グループワークでは、「今回の実践塾で学んだことの共有」をテーマに、各グループで感想や今回の気づき、疑問等について共有を行うとともに、全体で発表を行い、主任講師の宮口氏からフィードバックをいただきました。

 グループ内での意見交換を通して、各地域における地域おこし協力隊の運用方法や隊員自身の活動内容、中間支援組織としてのサポート体制などを共有することが出来ました。

 また、実践塾で学んだ内容を参考にして、参加者の地域が抱える課題の解決手法について意見交換を行えたことは、新しい視点を持つことにも繋がり、非常に貴重な機会となりました。

 宮口氏の講評の中で、「人が住み続けたいと思う地域になるため、人が人に何かをしてあげることによって自分が嬉しくなるというような関係性が地域に出来てくると素晴らしい。そういう関係性があれば人口が半分でも幸せだろう」とお話をいただいたことが非常に印象的で、地域おこし協力隊制度の運用にあたっても、行政・地域・協力隊間の連携はもちろんのこと、コミュニティにおける、人と人の繋がりや補い合える環境、一人ひとりの役割が重要になるのではないかと感じました。

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<最後に参加者の方から頂いたお言葉の一部を紹介します>

・協力隊と職員の方との信頼関係が築かれていてとても素晴らしいと思います。隊員の方がイキイキとされていたのが印象的でした。

・宮口先生、江藤さんの講義では「相互刺激と相互成長が交流の成果」と交流の意義を言葉として理解するとともに整理することができました。交流の大切さを協力隊にも伝え、活動にとりいれてもらいたいと思いました。全般的に学ぶことが多く、参加させていただき、ありがとうございました。

・講師及び開催地とテーマ全てが参加の決め手であり、十分に体感することができた。受講内容はもちろん、人との交流が何より良かった。久しぶりに刺激(ここちよい)を頂きました。

・竹田市地域おこし協力隊の方、OB・OGの方の活躍を実際に目で見て話を聞け、意見を交わすことが出来、とても参考になりました。勉強しに来ましたが、"また来たい"そう思わせる人・まち・時間でした。ありがとうございました。

カリキュラム

11月3日(金) 

14:15~14:30 開講式
14:30~15:30 講義1「時代にふさわしい地域の価値づくりと地域おこし協力隊-竹田市の実践に学ぶ-」                    主任講師:早稲田大学名誉教授 宮口 侗廸 氏
15:30~16:20 講義2「人を育て、人をつなぎ、地域を創る!」                                     講師:(公財)阿蘇地域振興デザインセンター事務局長 江藤 訓重 氏
16:30~17:30 講義3「新しい人材と地元住民の繋がり」                                        講師:竹田市企画情報課課長 工藤 隆浩 氏、竹田市企画情報課TOP戦略推進室主査 後藤 雅人 氏
17:30~18:30 地域おこし協力隊活動報告  竹田市地域おこし協力隊 藤原 美樹 氏、吉峰 拡 氏

11月4日(日)

8:45~9:35 フィールドワーク1「竹田総合学院」
9:50~11:10 フィールドワーク2「城下町地域おこし協力隊活動場所」 ・かどぱん ・みんなのいえ「カラフル」 ・たけたから
11:30~13:10 グループワーク
13:10~14:00 グループ発表・講評
14:00~14:10 閉講式

連絡先

セミナー統括課
TEL:03-5202-6134  FAX:03-5202-0755  E-mail:seminar@jcrd.jp