【終了レポート】令和2年度地方創生実践塾 in 高知県梼原町

地方創生実践塾 募集終了

2020年06月23日

小さな拠点ゆすはらづくり~集落活動を核とした、地域の再活性化~

令和2年10月2日(金)~10月3日(土)の2日間、梼原町で、「小さな拠点ゆすはらづくり~集落活動を核とした、地域の再活性化~」をテーマとして、地方創生実践塾を開催しました。全国各地の自治体職員など23名のご参加をいただきました。

【令和2年10月2日(金)】

 最初に梼原町の吉田尚人町長より、歓迎のご挨拶をいただきました。

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◆講義「梼原町のまちづくり~生きるしくみをつくるために、考え方を変えよう~」

講師:矢野 富夫 氏(前梼原町長・内閣府地域活性化伝道師)

 

 主任講師である矢野前町長から、はじめに仕事に対する考え方について、以下の事柄が重要との講義をいただきました。

・自治体の課題が複雑多様化する中で、成果をあげるためには今までの仕事の仕方、考え方を改めて見つめ直すこと。

・都市部や地方、人口の大小、行政や企業などは関係なく、「自分は、この地で生きる」と腹を据えて考えること。そうして初めて、一生懸命に考え知恵がでる。

・問題の原因を知り解決するには、「(自分が作用できない)社会現象」「相手の事情」「自分自身」等問題が起こる原因があり、それぞれに対応方法がある。「自分自身」(の能力不足等)が問題を生み出している場合には、そのことを自覚し自分が変わること。そうすれば道が開ける。

・成果を出すには、目指す方向を環境変化で揺るがないようにし、問題と課題を明確化すること、また、相手から共感を得ることができるように「伝える」ことも重要。

 次に、自治の基本は「自立」であり、「自分でできることは、自分で行う」といった自治経営の考え方の基本を定めたこと、この考え方に基づき、集落ごとの地域課題を解決する「集落活動センター」の活動の内容について講義をいただきました。

 地域の資源を見つめ直し町の方向を定めるために、職員全員で住民の生きる思いについて聞き取り調査を行い、梼原町が目指すものは何かを総合計画に定めたことに代表される住民との協働の取組が、梼原町のまちづくりの根幹を支えるものだと感じました。

 梼原町では、住民自治組織として活動する6つの「区」(明治時代に合併した旧村)に、地域住民が主体となって、地域の課題を解決していく組織として「集落活動センター」を設立しています。

 それぞれの区では、区長を中心に住民が自発的に活動しており、自らが集落を運営するといった責任感を持っていること、また、女性が多く活躍していることが非常に印象に残りました。

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◆フィールドワーク①集落活動センター四万川 「地域住民の暮らしを守る 地域のための会社」

講師:集落活動センター四万川推進委員会会長 空岡 則明 氏

 

 一つ目のフィールドワークでは、ガソリンスタンド・食用品販売・自動車整備スペースを兼ねた複合施設である集落活動センター四万川を視察しました。四万川区唯一の民間経営のガソリンスタンドが閉鎖したことをきっかけに、地域住民に危機感が生まれ課題解決に動き出したことや、「できる事から進める」を合言葉に、地域住民が出資し株式会社を立ち上げガソリンスタンド経営を始め、地域に求められる事業を徐々に広く展開しており、地域で住民が主体となって支え合い、助け合うことができる仕組みを作っているとのお話を伺いました。

 具体的には、地域で栽培されている野菜等の集荷活動や、地場産品の加工品グループの立ち上げなど、住民のニーズを汲み取りながら、地域の資源を活かして安定して暮らしていける地域を目指す取組から、住民が互いに支え合う考え方を学ぶことができました。

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◆フィールドワーク②集落活動センターゆすはら西 「捕獲鳥獣をお金に換える仕組み」

講師:NPO法人ゆすはら西 ゆすはらジビエの里施設長 平脇 慶一 氏

 

 二つ目のフィールドワークでは、集落活動センターゆすはら西が運営する「鳥獣解体処理施設ゆすはらジビエの里」を視察しました。区内や隣接区など近場で捕獲された鳥獣については施設で処理する仕組み、離れた区については全国初の「移動式解体処理車ジビエカー」によって処理する仕組みを伺いました。

 ゆすはら西で鳥獣の解体、精肉、出荷までをワンストップで行うことにより、捕獲した鳥獣を資源として食に活用する仕組みが構築されています。鳥獣被害による農家の生産意欲低下の抑制などの課題に対して、四万川区と同じく「できることから進める」を合言葉に取り組んでおり、地域資源を活用する考え方を学びました。

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◆フィールドワーク③集落活動センターおちめん 「人・物・お金が循環する仕組みづくり」

講師:越知面区長 上田 末喜 氏

 三つ目のフィールドワークでは、集落活動センターおちめんが運営する集落活動拠点「越知面遊友館」を見学し、地域の女性による地域の食材を生かした特産品づくりや、集落営農組合の立ち上げによる耕作放棄地減少の活動、廃校となった越知面小学校を利用した宿泊業務の推進などによって、地域に人・物・お金の流れをつくる取組を伺いました。

 地域の課題に対して、集落活動センター内に6つの部会を設け「今、やれることをやる」といった考えで活動を進めており、集落活動の維持のために可能なことから具合的な行動に移す重要性を学びました。また、特産品づくり部会をはじめとして、地域の女性が中心になって活動していることが印象に残りました。

上田さん.JPG



【令和2年10月3日(土)】

2日目は、当初に、西村新一副町長よりご挨拶をいただき、以後のプログラムにも同席・同行いただきました。

◆講義 ゆすはら・夢・未来館「梼原で安心して暮らし続ける仕組み」

講師:梼原町保健福祉課長 明神 孝洋 氏

 梼原町の医療・福祉の体制、取組について、地域で安心して暮らし続けることができるとの考え方を基に、梼原病院と保健福祉支援センター(役場・社会福祉協議会)が同じ建物の中で連携を密に取りながらケアを行う体制づくり、またデイサービスやケアサービス、町民の交流の場が設けられた複合福祉施設「YURURIゆすはら」の整備やその機能ついて講義をいただきました。

 梼原町では、他にも多職種によって在宅で生活されている方の情報共有を行うための「ケアプラン会」や、地域福祉コーディネータを6区に配置するなど、人と人、地域、行政をつなぐ取組を実施し、自助・共助の力を高める活動を展開しています。

 「住み慣れた地域で住み続けたい」を実現するために、ハード整備やソフト事業を実施しており、住民のニーズを把握し、必要なものは施設整備を行って地域での暮らしを支援するための考え方を学びました。

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◆講義 梼原町立図書館 雲の上の図書館「人と人をつなぐ、人と本・文化をつなぐ場」

講師:梼原町立図書館 館長 見目 佳寿子 氏

 平成30年に建築家隈研吾氏の設計により建立された初の町立図書館「雲の上の図書館」を活用した、人と人との交流の場をつくる取組についてお話を伺い、館内を視察しました。館内は、「森のなかの図書館」をコンセプトに、木の構造材と外光が優しく差し込む設計により木立の中を歩いているようなイメージの空間で、カフェコーナーやソファが設置されたラウンジ、書架テーマに沿った海洋堂制作ジオラマ展示のほか、ボルダリング施設(現在は新型コロナウイルス感染症対策で休止)もあり、子どもから高齢者まで誰もが心地よく利用できる施設となっています。

 まちづくり、人づくりを進める総合戦略の一つ「自信あふれる梼原人を育てるまち」の一環として建設された「雲の上の図書館」は、町の学びの拠点として、また、人が集い交流できる拠点として、梼原産の木材の利用と随所に見られる滞在型の心地よい空間の設計によって、町内外から人を集め、その利用する人に「豊かな時間」を提供する素晴らしい施設でした。

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◆グループワーク

参加者が4~5人に分かれて行ったグループワークでは、実践塾で気づいた点や学んだこと、地域に戻った時にどのような取組を実践できるかをまとめ、グループで共有・意見交換を行いました。グループでまとめた意見、各人の実践したいことを発表し、矢野前町長から講評をいただきました。

参加者からは、以下のような発表がありました。

・「自分はこの地で生きる」と覚悟を再認識し、地域住民のための仕事にまい進したい。

・何を実現したいのか(目的)を常に見据え、目的と手段を取り違えないように意識して仕事

にあたりたい。

・集落活動センターの「今あるものを活かす」視点と、図書館や総合福祉施設等の「今ないも

のは新しく創る」視点のバランスが素晴らしい。また、新しく造る際は思い切った財政出動

を、様々な財源を工夫しながら進めていて、参考になった。

・自分の地域の良いところに自信を持ち、情報提供し見える化したい。

・課題解決に向けて住民が納得するまで時間をかけて対話したい。

・小さな拠点づくりには行政が危機感を持って支援することが必要だと思った。

 矢野前町長からは以下の講評をいただきました。

・受講生それぞれの思いを聞き、「過去と他人は変えられないが、自分と未来は変えられる」という思いが届いたことを嬉しく思う。

・それぞれのフィールドで、その地域にあった仕組みづくりがされることを期待したい。

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◆まとめ

 本実践塾に参加して、矢野前町長の地域に対する熱い思いや強いリーダーシップに加えて、地域住民の方についても、自らが行動しなければならないといった使命感・意識を感じました。

フィールドワークで話を伺った各区は、いずれも「できることからやろう」との考えから、その地域でこれからも生活していくために話し合い、地域資源を活用して一丸となって取り組んでいました。これは、矢野前町長時代に行政と住民との協働体制を構築し、行政が掲げるビジョンを共有できたため、梼原町全体で同じ方向を向いて活動できているものではないかと感じました。

 この行政と住民との協働において、職員全員で住民に地域への思いを聞いたこと、住民との対話の中で得られたニーズへの対応など、実際に行動に移してきたことが、信頼関係を築くに至った大きな要因であると感じ、改めて住民と対話する重要性を学びました。

幕末に維新回天を志し、梼原の地から脱藩した坂本龍馬のように、受講者は2日間の実践塾で学んだことを活かしていくことが仕事に対する意識改革の第一歩として、それぞれの志を実現すべく梼原の地から「脱藩」しました。

カリキュラム

◆1日目:10月2日(金)
 開講式
 講義「梼原町のまちづくり~生きるしくみをつくるために、考え方を変えよう~」/矢野 富夫 氏
 フィールドワーク①集落活動センター四万川「地域住民の暮らしを守る 地域のための会社」
 フィールドワーク②集落活動センターゆすはら西「捕獲鳥獣をお金に換える仕組み」
 フィールドワーク③集落活動センターおちめん「人・物・お金が循環する仕組みづくり」
 交流会
◆2日目:10月3日(金)
 講義「梼原で安心して暮らし続ける仕組み」/梼原町保健福祉課長 明神 孝洋 氏
 講義「人と人をつなぐ、人と本・文化をつなぐ場」/梼原町立図書館 館長 見目 佳寿子 氏
 グループワーク・発表・講評
 閉講式

チラシ

地方創生実践塾in高知県梼原町.pdf

連絡先

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