【終了レポート】地方創生実践塾in島根県邑南町

地方創生実践塾 終了レポート

2022年02月15日

12地区の力で描く地方創生~「地区×福祉・教育」で支える地域の暮らし~

 令和3年10月29日(金)~30日(土)の2日間、島根県邑南町を舞台に、「12地区の力で描く地方創生」をテーマとして、令和3年度第5回目の地方創生実践塾を開催しました。全国各地の自治体職員など17名のご参加をいただきました。

地方創生実践塾開講式に先立ち、邑南町の石橋町長から歓迎のご挨拶をいただきました。

10月29日(金)

基調講演:「田園回帰の時代と持続可能な地域社会~邑南町の地区別戦略の取り組みと今後の変化~」
特講師:(一社)持続可能な地域社会総合研究所所長 藤山 浩 氏

 邑南町の地区別戦略の取り組みを中心に、田園回帰の時代における地区単位の人口分析と予測、地域経済循環、部門を横断した組織と拠点づくり、今後の持続可能な循環型社会づくりについてご講義いただきました。
 邑南町の地区別戦略では、地区ごとのデータ分析を基に、それぞれの地区が具体的な目標と戦略を立てています。その取り組みの成果については、平成28年度から実施されている年度末報告会において発表・共有することにより、各地区での多彩な取り組みにつながっているそうです。各地区でUターン・Iターン者が多く、戦略の成果が出始めていることを藤山氏は大きく評価されていました。
 お話しいただくなかで、藤山氏は持続可能な地域社会を目指すには小さな拠点形成が必要であり、循環型地域社会の全体最適化には時間がかかるため、長期的な視点でプロジェクトを進めていく必要があることを強調されていました。

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講義:「地区別戦略会議(ちくせん)の概要主任講師:(一社)小さな拠点ネットワーク研究所 監事 白石 絢也 氏

 邑南町の概要と町がこれまで力を入れてきた3つの柱である「日本一の子育て村」、「A級グルメ」、「地区別戦略」の概要についてご講義いただきました。中でも地区戦略については、12地区それぞれの取り組みの違いや状況を具体的な事例を交えてご講義いただきました。
地区別戦略については、令和2年度より実現事業から発展事業というフェーズに入り、将来的に各地域組織が町からの支援を受けずに、自走した運営ができるようなスキームを作り上げています。

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講義:「~邑南町のちくせん×福祉・教育~」
①~見守りスーパーにこ丸くんの取り組み~ 
特別講師:中野ちくせん新鮮組/合同会社にこ丸 飛弾 智徳 氏

 中野地区別戦略によって生まれた、移動販売車「にこ丸くん」を通じて、スーパーから離れた集落に住む高齢者等の買い物支援や見守りについてご講義いただきました。また、熟年婚活大作戦や地域内6次産業化といった取り組みを行っており、これらの取り組みを通じて、住民の方からは多くの称賛と激励を受けており、地域内では非常に知名度の高い取り組みとなっています。

 「見守りスーパーにこ丸くん」の取り組みについては、現状毎月の収支をしっかり黒字化することに成功していることから、非常に有効な取り組みであると考えました。一方で、訪問世帯数の確保や事業に携わる人材の確保などの課題も残っているため、持続可能な地域づくりの難しさも実感しました。

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②~矢上高校の魅力化事業とコンソーシアム~
特別講師:矢上高校魅力化コーディネーター 小林 圭介 氏

 魅力的な高校(教育プログラム)をつくるには、何が必要でありその成果はどのように決まるのかという観点から、教育と地域の連携による地域づくりの新たな可能性についてご講義いただきました。

 高校の魅力化、教育の充実を考える際、地域づくりの観点を加え、学校と地域を掛け合わせることで、「教育制度・体制」とヒト・モノ・カネ・情報といった「経営資源」の2軸からでは創出しえなかった、新しい地域の付加価値を生み出すことができるとわかりました。地域づくりをする上で、教育という分野は非常に重要なテーマであると理解しました。

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10月30日(土)

 口羽公民館に移動し、講師である小田博之氏と森田一平氏から講義を受けた後、阿須那公民館で瀧本昭平氏から講義を受けました。

講義:「ちいさな拠点づくりの現場から」
特別講師:口羽をてごぉする会 理事長 小田 博之 氏                                      

 口羽地区では、全国の多くの集落が課題としている地域自治の継続や日常生活の不便さという行政が介入しにくい困り事に対し、有志の自主組織を立ち上げて課題解決を図りました。はじめは活動費のない小規模な組織でしたが、町のコミュニティ再生事業である新聞配達や指定管理業務の受託を通じて、徐々に活動資金を稼ぐことに成功し、今では地域に欠かせない組織となっています。また、今後も持続可能な組織を運営していくために、次世代を担う地域マネージャーの確保が今後の課題だとお話されていました。

 今後、総務省の特定地域づくり事業協同組合制度を利用し、派遣社員の人件費や事務局の運営費を抑えながら、有能な人材を確保していくというお話はとても参考になりました。

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講義:「関係人口との協働にみる地域再生の可能性~過疎地域だからこそできる挑戦~」
講師:NPO法人江の鐵道事務局 森田 一平 氏

森田氏は、2018年JR三江線の廃線に伴い、その跡地を活用する「旧三江線跡地活用プロジェクト」を提案し、鉄道ファンを関係人口として迎え入れ、地域住民と共同で賑わいを創出しました。また、地域のイベントである「INAKAイルミプロジェクト」を通じて、地域に住む若者達のシビックプライドの醸成にも取り組んでおります。この他にも空き家のリノベ事業を行い地域住民と地域外の人が出会う場を設けるなど、関係人口をキーワードに様々な取り組みを実施しています。

 森田氏は、関係人口をキーワードにした様々なプロジェクトに取り組んでいます。そのために、まずは関係人口の定義の分析から地域再生の方程式を生み出したりしていました。また、最後にお話しされていた、ここでしかできないことに今後も挑戦していきたいという言葉が非常に印象的でした。

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パネルディスカッション
パネリスト:小田 博之 氏、森田 一平 氏
コーディネーター:白石 絢也 氏

 小田氏は、地域づくりはまず地域の人から信頼を得ることが非常に重要であるとお話しされていました。また、地域づくりは地域のためにではなく、自分の幸せのためにという考えのもとで取り組むことにより、その取り組みに継続性が生まれてくるとお話されていました。小田氏は、自分の幸せは自由な時間と自然、仲間の3つであるためにそれらを充実させるため、森田氏は、そもそも鉄道が好きであったことから「旧三江線跡地活用プロジェクト」を実施した経緯があることから、やはり自分が好きなことや幸せなことを軸に地域づくりを行う必要があるということを理解しました。

 その他にも、白石氏から今後の地域づくりの課題として、地域づくりを行う上で住民を束ねる地域マネージャーといった人材が地域には必要であり、地域に存在する大工や農家といった専門的な職をもっている方々の意見を整理してくれる人材を確保することが必要だとお話しされていました。この意見に対して小田氏も森田氏も同意見であり、今後どのようなスキームでそのような人材を呼び込み、人件費などを確保していくか非常に重要であるとお話しされていました。

 住民を束ねる地域マネージャーを担う人材を求める意見が多く出されていましたが、既に国のほうでは地域おこし協力隊や集落支援員制度の他にも、特定地域づくり事業協同組合といった制度を新たに制度化しているため、それらの制度を積極的に活用していく必要があると感じました。また、県や町からも組織の運営費や人件費等を補助する制度などを設けていく必要があると考えました。

講義:「ちいさな拠点づくりに向けた組織づくりの現状」
特別講師:阿須那自治会会長 瀧本 昭平 氏

 阿須那地区では、地区別戦略発展事業の他に、島根県の小さな拠点づくりモデル地区推進事業、町の地域支え合い会議に取り組んでいます。これらの取り組みは、地区の住民のみならず、羽須美振興会や社会福祉協議会と連携しこれらの取り組みを実施しています。現在の課題としては口羽地区と同様、地域マネージャーの存在が必要だとお話していました。

 地域づくりを行う上で、あすな地区応援隊といった組織を立ち上げており、その部構成として生活部、地域産業振興部、交流部といった3つの部に役割を分け、各部の取り組み状況や年間スケジュールについて詳細にお話しいただきました。地域組織の運営の難しさをあらためて理解しました。

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カリキュラム

10月29日(金)

■開講式 開催自治体代表挨拶 邑南町長 石橋 良治 氏

■基調講演「田園回帰の時代と持続可能な地域社会~邑南町の地区別戦略の取り組みと今後の変化~」/藤山 浩 氏

■講義「地区別戦略会議(ちくせん)の概要」/白石 絢也 氏

■講義「見守りスーパーにこ丸くんの取り組み」/飛騨 智徳 氏

■講義「矢上高校の魅力化事業とコンソーシアム」/小林 圭介 氏

<10月30日(土)>

■講義「ちいさな拠点づくりの現場から」/小田 博之 氏

■講義「関係人口との協働にみる地域再生の可能性~過疎地域だからこそできる挑戦~」/森田 一平 氏
■パネル・ディスカッション/白石 絢也 氏、小田 博之 氏、森田 一平 氏
■講義「ちいさな拠点づくりに向けた組織づくりの現状」/瀧本 昭平 氏
■個人ワーク・発表
■閉講式

連絡先

セミナー統括課
TEL:03-5202-6134  FAX:03-5202-0755  E-mail:seminar@jcrd.jp