【終了レポート】地方創生実践塾in神奈川県真鶴町

地方創生実践塾 終了レポート

2022年03月02日

ローカルから未来をつくる~住民の力で共創する多様な暮らし~

 令和3年11月19日(金)、20日(土)の2日間、神奈川県真鶴町全体を会場に、「ローカルから未来をつくる~住民の力で共創する多様な暮らし~」をテーマとした地方創生実践塾を開催しました。全国から自治体職員や民間企業の方など総勢18名にご参加いただきました。

実践塾開始に先立ち、真鶴町参事の上甲新太郎氏より歓迎のご挨拶をいただきました。

11月19日(金)

イントロダクション「真鶴から未来をつくる」 
主任講師 卜部 直也 氏(真鶴町政策推進課課長補佐)

 主任講師の卜部氏より、現在、真鶴町民の力によって、町全体でどのような取組が行われているのか、取組みに至るまでの経緯や卜部氏と町民との関係性、今後の展望などについてお話いただきました。

 卜部氏は関西出身ですが、学生時代に真鶴町の「美の基準」に感銘を受け、真鶴町役場に入庁しました。美の基準とは、1980年代後半から1990年代のバブル経済において、真鶴町にリゾート開発の波が押し寄せてきた際、水源の乏しい真鶴町を守るために美の基準を含むまちづくり条例を制定したものです。

 真鶴町では、美の基準をもとにまちづくりが進められています。しかし、美の基準は様式美を追求するものではなく、真鶴町らしさを残すものです。町民の生活風景や仕事をしている風景、コミュニティの在り方を美しさと捉え、人間中心の生活空間を言語化しました。美の基準は数値では示されていません。昔からの真鶴での暮らしを続けていくことが美の基準を体現することにつながり、真鶴らしさを後世に伝えることとなります。

 ではなぜ、いま真鶴町が注目され、移住する人が増えてきているのか。それは美の基準を運用する際、規制から入るのではなく、対話を重要視しているからではないでしょうか。数値で示されていないからこそ、対話による納得が必要であり、そのプロセスが信頼を生んでいるのだと考えられます。町を信頼することは移住する際の重要な要素となります。移住者と居住者がともにまちに対する思いを共有することは、まちの活性化へとつながります。その転換となったのが、真鶴町活性化プロジェクトで、そこからスタートアップウィークエンド、真鶴なぶら市、お試し暮らしといった取組へとつながります。

 「現在もまちをつくっている途上にあり、町民と一緒に何かをするときは、相手の思いから会話をはじめ、プロセスを楽しんでいる。行政が押しつけるまちづくりではなく、伴走することを大切にしている。」との卜部氏の言葉が印象的で、行政や民間といった壁をつくるのではなく、そこに住む人の気持ちを大切にし、ありたい未来をともに描くことの大切さを学びました。

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パネルディスカッション①「真鶴暮らしを楽しむ」
モデレーター:主任講師 卜部 直也 氏
パネリスト:川口 瞬 氏、來住 友美 氏、草柳 采音 氏、佐野 杏 氏

 川口氏、來住氏は真鶴町に移住し、泊まれる出版社というコンセプトで真鶴出版を経営しています。草柳氏、佐野氏は真鶴町で生まれ育った生粋の真鶴町民です。それぞれの視点で真鶴暮らしについて話してもらいました。

 草柳氏は、実家が酒店を経営しており、幼いころから様々な人と交流することが日常となっていたそうです。そして、自分が暮らす真鶴をより多くの人に知ってもらうためにSNSで#真鶴暮らしといったタグをつけて発信することや、職場の人を連れてくるなど、楽しみながら真鶴町の魅力を多くの人に伝えています。
 川口氏、來住氏は真鶴町のお試し移住を経験し、実際に移住してきた方です。2人は真鶴暮らしの良さを「コミュニティを感じながら生きていられること」、「地域で子どもを見守ってくれていると感じること」と話していました。特に新型コロナウイルス感染症による外出自粛の際は、町中にはいつもと変わらない日常があり、美の基準を改めて知ることができたとのことです。

 佐野氏はアートプロジェクト「真鶴まちなーれ」に実行委員として関わっています。真鶴まちなーれは2014年から不定期に開催されており、町中の空き家や商店街を使ってアートと交流を楽しむプロジェクトで、実行委員には草柳氏も関わっており、佐野氏と草柳氏はそこで出会ったそうです。様々な人と世代を超えて関わりながら、真鶴らしさを見つけている途中にあるとのことでした。

 真鶴町で生まれ育った人も移住してきた人も、真鶴町を語る時は穏やかな表情で話していることが印象的でした。それは背伸びをせずに等身大で暮らし、自分の見ている景色を大事にしているからこそ生まれた表情なのではないでしょうか。衣食住といった生活の基本がしっかりしていることで安心して暮らすことができ、人と人との交流を楽しめているのだと感じました。

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パネルディスカッション②「新しい働き方をつくる(1)」
モデレーター:主任講師 卜部 直也 氏
パネリスト:奥津 秀隆 氏、柴山 高幸 氏

 奥津氏は一般社団法人真鶴未来塾の相談役、奥山氏は真鶴テックラボの運営者であり、真鶴での新しい働き方を実践している2人から、実際にどのような働き方をしているのかお話いただきました。

 奥津氏は、地域のことを他人事から自分事にする人を増やすことを経営理念に真鶴未来塾を運営し、地域での創業支援や、公民連携、各種イベントの支援を行ってきました。今年4月に事業承継を行い、現在は別事業の立ち上げを準備しているとのことでした。
 柴山氏は、真鶴テックラボの運営とともに、朝市の真鶴なぶら市や、世界的ハッカソンのスタートアップウィークエンドにも関わっており、真鶴町で働きたいといったスタートアップマインドを持つ方々が訪れることのできる場づくりを行っています。
 2人の根本にあるのは地域との共生を大切にする気持ちでした。真鶴町に暮らしている人に新しい働き方を提案する奥津氏と、真鶴町から起業したい人を応援する柴山氏、その2人に人をつなげる卜部氏といったバランスで成り立っており、行政と民間の枠組みを越えたつながりを感じることができました。

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パネルディスカッション③「新しい働き方をつくる(2)」
モデレーター:主任講師 卜部 直也 氏
パネリスト:山下 拓未 氏、入江 未央 氏

 山下氏は、一般社団法人地域間交流支援機構の代表理事で、真鶴町の岩地区で事業を展開しており、都会と地域が交流できる場所を提供しています。岩地区の空き家をリノベーションし、コワーキングスペースとして活用しています。真鶴町は都市の近くにありながらも観光地化されていないところが、サテライトオフィスを呼び込む際には重要なことと話していました。

 入江氏は株式会社honohonoの代表取締役で、真鶴町主催のシェアリングエコノミーやサテライトオフィスの開設に関わる中で、暮らしている女性の就業に対するニーズがわかり、地域の人が集まれるレストランをオープンしたそうです。
 2人とも町外の出身者ですが、地域のコミュニティに入り、その中で問いを立てることで、必要なことを見つけ出していました。計画を練って完璧な形を求めるのではなく、小さく始め、形を整えながら進めることで、地域にとって必要なモノやコトが生まれるのではないかと思います。

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11月20日(土)

フィールドワーク(真鶴テックラボ→コミュニティ真鶴→月光堂・ブルーツリー→真鶴出版→ロッキンビレッジ)                                     

①Techラボ(テックラボ)
 テックラボは「アイデアをすぐ形にできる場所」として、真鶴観光協会の柴山高幸さんによって運営されている、モノづくりを主としたコワーキングスペースです。元割烹料理屋を改装した店内では、3Dプリンターやパンも焼けるキッチン、ドローンなどの設備を備えており、貸レストランをすることも可能となっています。町の子供たちに「何もないまち」と思わないで、どこにいても夢を実現できるという希望をもってほしいという願いも込められているそうです。

②コミュニティ真鶴
 コミュニティ真鶴は、町民の方がサークル活動やコミュニティ活動を行うための公共施設で、美の基準を用いて建てられた第1号の建物です。
 中庭には、人が集いやすくなる「人だまり」ができるように設計されており、自然と腰を落ち着けたくなるような雰囲気が印象的でした。運営は、(一社)真鶴未来塾が担っており、子育て中のお母さん方もいきいきと働いていました。


③月光堂・ブルーツリー
 真鶴町のメイン商店街内に位置する「月光堂」と「ブルーツリー」はそれぞれシェアオフィスとサテライトオフィスとして、株式会社ヤブタ建設不動産が管理運営しています。
 シェアオフィスの月光堂は子連れで入室することが可能で、子供が遊ぶ場もあり子育て世帯に優しい空間となっていました。サテライトオフィスのブルーツリーには町内唯一のコインランドリーやカフェが併設されており、自然と町内の情報が入る場となっていました。

④真鶴出版
 真鶴出版では、「泊まれる出版社」としてゲストハウスと出版社を営んでいます。民家をリノベーションした建物では、真鶴町の作家の作品も展示されているなど時期によってコラボレーション企画も実施されています。

⑤ロッキンビレッジ
 ロッキンビレッジは、岩地区の海岸から徒歩30秒の位置にあるコワーキングスペースです。敷地内には、長屋2棟やアパートがあり、まるで1つの村のような様子でした。空いた広場では今後キャンプの受け入れをしていく予定です。

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カリキュラム

11月19日(金)≫会場:真鶴町民センター
■開講式
■イントロダクション「真鶴から未来をつくる」
 主任講師:真鶴町政策推進課 課長補佐 卜部 直也 氏
■パネルディスカッション① 「真鶴暮らしを楽しむ」
 パネリスト:川口 瞬 氏、來住 友美 氏、草柳 采音 氏、佐野 杏 氏
■パネルディスカッション② 「新しい働き方をつくる(1)」
 パネリスト:奥津 秀隆 氏、柴山 高幸 氏
■パネルディスカッション③ 「新しい働き方をつくる(2)」
 パネリスト:山下 拓未 氏、入江 未央 氏      

≪11月20日(土)≫会場:真鶴町民センター ほか
■フィールドワーク
 真鶴テックラボ→コミュニティ真鶴→月光堂・ブルーツリー→真鶴出版→ロッキンビレッジ
■グループワーク
■ 閉講式

連絡先

セミナー統括課
TEL:03-5202-6134  FAX:03-5202-0755  E-mail:seminar@jcrd.jp