【終了レポート】令和3年度地方創生実践塾 in 和歌山県白浜町

地方創生実践塾

2022年03月16日

ワーケーションを活用した都市と地域の交流による価値創造

 令和3年10月22日(金)~10月23日(土)の2日間、白浜町で、「ワーケーションを活用した都市と地域の交流による価値創造」をテーマとして、地方創生実践塾を開催しました。全国各地の自治体職員など28名のご参加をいただきました。

【令和3年10月22日(金)】

  実践塾の開催に先立ち、白浜町長の井澗誠氏より歓迎のご挨拶をいただきました。

その後、仕事ができるようにWi-Fiをはじめパソコンやプリンターを完備している「SHIRAHAMA HOTEL SEAMORE」で、主任講師である島田由香氏や和歌山県、白浜空港の取組などについて講義を受けました。講義Ⅰと講義Ⅱはオンライン上で開催されたため、受講者はそれぞれ「SHIRAHAMA HOTEL SEAMORE」の館内に移動し、好きな場所から受講しました。白浜の海を眺めながら、実際にワーケーションを体験することができました。

◆講義「真のワーケーションとは」

講師:ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社 人事総務本部長 島田 由香 氏

 島田氏から「なぜ、ワーケーションを行うのか?」という受講者への問いかけがあり、ワーケーションの本当の意味や、真の狙いについてご講義いただきました。ワーケーションとは「仕事(work)」と「休暇(vacation)」の両方がしっかりとできることが前提であり、主体は「仕事(work)」なので、まずは自分がどのように働きたいのかを考え、ワーケーションを行う必要があることが分かりました。また、ワーケーションの効果として、視界や音などの環境が普段と異なることで五感が研ぎ澄まされ、脳が活性化し、仕事の効率が向上したり、クリエイティブな発想が生まれやすくなると伺いました。身体にも心にも良い事尽くしなワーケーションについて学ぶことができました。

◆講義「白浜町の取り組み-なぜワーケーションの聖地となったのか-」

講師:和歌山県情報政策課長 桐明 祐治 氏

 

 桐明氏から、白浜町でのワーケーション導入の経緯や取組内容についてご講義いただきました。和歌山県では平成13年度からIT企業誘致に力を入れており、その入口としてワーケーション事業を開始しました。関係人口を創出することを目的とし、平成29年度からは首都圏企業を対象としたワーケーション説明会や都市部の家族を対象とした親子ワーケーション体験イベントなどを開催し、コロナ禍においても情報発信など継続的に取り組んでいます。 桐明氏が受け入れる側として大事にしていることは「一緒に汗をかくこと」とのこと。ハード面の受入体制はもちろん大切だが、無理難題にトライし、ゲストではなくパートナーとして一緒に汗をかくことで、人と人がつながり、少しづつ強いつながりになっていきます。桐明氏のお言葉の中で「大事なのは人」というフレーズが心に残りました。こうした受け入れる側の努力やマインドも高めていく必要があると感じました。

◆講義「空港を超えた空港の役割と地域活性に必要なリーダーシップ」

講師:南紀白浜エアポート株式会社 代表取締役 岡田 信一郎 氏

 

 岡田氏からは、2018年に民営化した南紀白浜空港で行っている空港型地方創生をコンセプトとした地域活性化の事業についてご講義いただきました。
 南紀白浜空港では、地域の活性化に挑むために東京から和歌山に移住された岡田氏を含む3名が筆頭に、地域に人を呼び込むための仕組みづくりや地域の魅力向上など空港の枠にとらわれない様々な事業に取り組んでいらっしゃいます。
 ワーケーションに関する事業では、歴史文化や地域産業・海山川の自然を活かしたワーケーションプログラムの企画運営、IT企業と連携したワーケーションの定量的効果の検証、ワーケーションの一歩先を目指した副業支援会社との連携などがあげられます。
 それ以外の事業では、大学との産学連携による地域人材の育成やバス会社と鉄道会社との連携によるシームレスな移動の実現などに取り組まれてます。
 その結果、民営化初年度から過去最高の旅客数となり、また、コロナ過の現在では、昨年と比較した旅客数が民営化空港で1位の回復率となるなど旅客数増加にも繋がっており、このような多様な事業により、継続的に外部から人を呼び込む要因になっていると感じました。

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◆フィールドワーク①「株式会社クオリティソフト」視察

 2016年に東京から白浜町に本社を移転し、まちづくりに貢献しているIT企業の株式会社クオリティソフトを視察しました。
 地産地消の紀州木材を使用したオフィス、コワーキングスペースや宿泊施設など建物内の施設を案内いただいた後、会社の取組内容について説明を受けました。
 移転のきっかけは、IT企業なら地方でも十分に情報発信ができ、繋がりが既にあった白浜町に移転することで地域貢献にも繋がると考えたのがきっかけの一つであると伺いました。
 具体的な地域貢献としては、元々空き物件だった現在の建物をリノベーション、社員食堂の一般開放や社員有志で企画運営する地域の婚活パーティーなどが実施されており、白浜町の活性化に繋がっていると感じました。

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◆ワークショップ 「真のワーケーションに向けて」

 ワークショップでは、実践塾に参加した理由や講義など1日を通じて学んだことなどをグループに分かれて意見交換し、各グループごとに「真のワーケーションに向けて」の重要な要素について考えました。
 グループの中では、「ステークホルダーが同じ方向を向く」、「ワーケーションは目的ではなく手段」、「ワーケーションのターゲットを明確にする」などの意見がありました。
 その後、各グループで出た意見を他のグループとシェアすることで多角的な視点を得ることができ、とても充実したワークショップとなりました。

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【令和3年10月23日(土)】

 2日目は、自分の今に目を向けるマインドフルネス体験から始まり、フィールドワーク「熊野古道working」を行いました。その後、椿温泉しらさぎの女将である熊野幸代氏から自身が取り組んでいるいる地域活動や湯治文化についてご講義をいただき、白浜町を体と頭で体感する時間を過ごしました。

◆マインドフルネス体験

 マインドフルネスとは、周りにとらわれず今のこの瞬間の自分の心に目を向けることであり、ストレス軽減や集中力強化のほか心を落ち着かせる効果があります。
 「マインドがフル」と「マインドフル」の2つの状態があり、「マインドがフル」は、心の許容範囲を超えいっぱいいっぱいになっている状態のことをさします。逆に「マインドフル」は今の自分に意識を向け、現実をあるがままに受け入れることができている状態のことです。
 今回の体験では、島田氏の問いかけにより、自分自身に意識を集中させ、5感で感じていることを素直に受けいれ「マインドフル」を体験することができました。

◆フィールドワーク2 「熊野古道Walking」

 世界遺産の熊野古道を白浜町役場の方にガイドしてもらいながら散策しました。熊野古道とは、伊勢半島南部にあたる熊野の地と大阪や伊勢、高野及び吉野を結ぶ古い街道の総称で、「熊野街道」とも呼ばれています。白浜町には、「富田坂」と呼ばれる古道があり、「伊勢山地の霊場と表詣道」として世界遺産に登録されており、この富田坂から歩き始め約2時間のフィールドワークを行いました。
 古道には、昔の石垣やなどがそのまま残っており、道中には一里松跡と呼ばれる石碑がありました。古道の距離を示すのに一里(約4キロ)ごとに松が植えられていた歴史があり、松は枯れてしまっていますが、それを示す石碑が「一里松跡」をして現代に残りその歴史を語っていました。坂を超えた跡は、「高瀬要害山城・馬谷城」へ登りました。このお城は、標高50mほどの平山城で、戦国時代に築かれておりたびたび交戦が起こっていたとのこと伺いました。お城の周りは堀で囲まれ、当時の敷石や土器の破片なども残っており、歴史を体感することができました。
 このフィールドワークでは、白浜町役場の方に案内してもらいながら歩くことで、白浜町の歴史を肌で感じることができました。地域と触れあう素晴らしさと楽しさを感じ、人と地域をつなげることの大切さを学びました。

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◆講義「地域を創るということ」

  講師 椿温泉しらさぎ 女将 熊野 幸代 氏

 熊野氏からは、自身が地域を盛り上げるため行っている取組内容についてご講義いただきました。熊野氏は、白浜町の椿温泉にある1954年創業の老舗旅館「しらさぎ」の長女として生まれ、現在は女将として旅館を経営する傍ら、地元を盛り上げるために様々な企画を行っていました。
 地元に暮らす子供から大人までが楽しめるお祭り「椿わがら祭」の開催や椿地区のご当地ソングの作成、昔から椿に暮らしている方を歴史マイスターとして区が認定する「椿マイスター認定制度」の設立などの取組事例をご紹介いただきました。
 また、熊野氏は、旅館を経営するにあたり「人との繋がり」を何よりも大切にしており、熊野氏の思いに共感してくれる人を地域外から集め「日本一女将のいる宿企画」や副業人材の雇用を行ったり、新しい湯治のスタイルとて「湯治ワーケーション」など、地域と地域外を結びつける様々な取組を行われていました。講義の前にいただいたしらさぎ名物の釜めしランチは、「日本一女将のいる宿企画」に参加した13名のサポート女将たちと考案したメニューで、地域の食材がふんだんに使用されており、身も心も暖かく包み込まれました。
 これらの取組は、熊野氏が椿温泉の湯治を体験したことで湯治文化を未来へ繋ぎたいという強い思いが生まれたことがきっかけになっていました。取組を行う中で、地域内や同業者からの反発も多く、つらい時期もあったそうですが、そんな時に主任講師の島田氏と出会い、新しい人達との繋がりが生まれ、取組の幅が広がっていったと伺いました。「人の思いはものを動かす」というフレーズが心に残っており、自分自身がいろいろな人と繋がること、そして人と人を繋げることの重要性を学びました。

◆まとめ

 今回の実践塾では、ワーケーションがもたらす地域の新しい価値創造について学ぶことができました。
 ワーケーションは目的ではなく手段であり、ワーケーションに来た人たちがどのようになってほしいか、何を求めているのかを考えることが重要です。白浜町では、ワーケーションに来た人たちを白浜で癒したい、白浜町を知ってもらいたいという思いが込められた様々な取組が行われていました。
 また、ワーケーションに来た人たちが地域の自然や人々に触れることで、新しい取組が生まれており、人と人、人と地域をつなげることの大切さを肌で感じることができた貴重な2日間でした。

カリキュラム

10月22日(金)

11:00~11:30 オリエンテーション・開講式

11:30~12:00 参加者移動 zoom準備

12:00~12:20 挨拶・講義「真のワーケーションとは」

       主任講師:ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社

       人事総務本部長 島田 由香 氏

12:20~13:20 講義「白浜町の取り組み - なぜワーケーションの聖地となったのか」

       歌山県情報政策課長 桐明 祐治 氏

13:20~13:30 休憩

13:30~14:30 講義『空港を超えた空港の役割と地域活性に必要なリーダーシップ』

       南紀白浜エアポート株式会社 代表取締役 岡田信一郎 氏

14:30~15:00 休憩/移動 ※貸切バス

15:00~16:45 フィールドワーク①  「株式会社クオリティソフト」 視察

16:45~17:00 移動 ※貸切バス

17:00~18:30 ワークショップ『真のワーケーションに向けて』

18:30~19:00 休憩

19:00~    交流会(ホテル内)

10月23日(土)

07:45~08:30 マインドフルネス体験(各自室からclubhouse使用)

08:30~10:30 出発準備・チェックアウト等

10:30~11:00 移動 ※貸切(道状況から2,3台に分かれて移動)

11:00~13:20 フィールドワーク②熊野古道walking

13:20~13:50 移動 ※貸切(道状況から2,3台に分かれて移動)

13:50~15:50 昼食 しらさぎ名物 釜めしランチ

       講義『地域を創るということ』 椿温泉 しらさぎ 女将 熊野幸代 氏

15:50~16:20 移動

16:20~16:30 閉講式

連絡先

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