【終了レポート】令和4年度 地方創生実践塾in徳島県

地方創生実践塾 募集終了 終了レポート

2023年02月13日

■森林(もり)から始まるサステナブルな社会

令和4年12月8日(木)~9日(土)の2日間、徳島県で「森林(もり)から始まるサステナブルな社会」をテーマとして、令和4年度地方創生実践塾を開催しました。全国各地の行政職員や民間企業の方等13名に参加いただきました。

1日目:12月8日(木)

■1 開講式

飯泉徳島県知事より国内における林業の変遷と徳島県における林業と木育の推進についてお話がありました。かつては、全国の地方で林業が地域の雇用や経済を支えていたが、円高が進むに連れて、海外から安い木材が輸入されるようになり、国内の林業が衰退していったと述べられました。

徳島県では林業の再生や飛躍を目指し、全国で初めて平成24年に「県産材利用促進条例」を制定しました。その中に木育の概念も取り入れることで、県を挙げて木育の推進に取り組んでいます。

最後に飯泉知事は受講生に対し「地方創生は何としても成し遂げていかなければならない重要なテーマである。皆様こそが地方創生の伝道者として導いていってほしい」とエールを送られました。

■2 講義「森林バンクによるSDGsの実践と地方創生」

*主任講師:熊谷 幸三 氏(公益財団法人とくしま森林バンク顧問)

主任講師の熊谷氏から、SDGsを達成するための森林の役割及び森林の適切な管理に向けた取組について、講演いただきました。

熊谷氏はSDGsの17個の目標のうち、森林と関わりのある13個の目標について、各目標を達成するための森林の重要性を述べられ、「森林がSDGsを支える」という言葉を強調されました。

しかし、国内では林業従事者の不足や木材価格の低迷から保安林を含む森林の適切な管理ができておらず、生産活動の停滞と水源かん養等の森林機能の低下を招いているとも述べられました。

これらの課題を解決するため、公益財団法人とくしま森林バンクでは、売却希望森林と購入希望者のマッチングや国内の温室効果ガス排出量削減のため、CO2等の吸収量等をクレジットとして国が認証する「Jクレジット制度」を活用し、間伐、森林の見回りといった森林管理を実施することでクレジットを創出しています。そして、創出したクレジットを利用し、更なる森林管理を実施しているそうです。

熊谷氏のご講演から、自分たちの生活に森林が密接に関わっていると同時に、森林管理において多くの課題を抱えていることを知り、林業従事者と行政が協力して森林を保全していくことが重要であると感じました。

■3 講義「木のおもちゃ美術館による木育とネットワークづくり」

*講師:松﨑 美穂子 氏(徳島木のおもちゃ美術館館長)

松﨑氏からは、徳島県内で行ってきた木育の取組を紹介いただきました。木育とは、子どもをはじめとするすべての人が「木とふれあい、木に学び、木と生きる」取組のことで、県内には木を身近に感じられる木育拠点施設「とくしますぎの子木育広場」が20ヶ所開設されています。木育の推進をしている松﨑氏は20施設の全てに木育インストラクターを1名配置し、親子で木の椅子をつくる体験等の取組を実施することで木の温もりや木の良さを伝えていると述べられました。

また、令和3年10月にオープンした「徳島木のおもちゃ美術館」は館内の99%が那賀町の杉でできています。徳島県の伝統文化である農村舞台や人形浄瑠璃等も木で再現することで、遊びを楽しみながら徳島県の自然や木の魅力、伝統、文化を幅広い世代が感じられるようになっていると説明されました。

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■4 フィールドワークⅠ「徳島木のおもちゃ美術館内視察」

徳島木のおもちゃ美術館内で、実際に木のおもちゃに触れ、伝統文化を感じられる人形浄瑠璃や赤ちゃんでも怪我をしないように工夫された館内施設を見ることで、小さな子どもから高齢者までが安全に楽しむことができる施設であると実感しました。また、徳島木のおもちゃ美術館は遊びの中でコミュニケーションが生まれることを大事にしており、親子で自然な会話が生まれるおもちゃを取り揃えています。実際に館内では親子が木のおもちゃで遊ぶ姿が多く見られ、親子間でコミュニケーションを取る場所にもなっていることを実感しました。

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2日目:12月9日(金)

■5 講義「山で働くこと、木を使うこと」

*講師:市瀬 雅志 氏(公益社団法人徳島森林づくり推進機構 副理事長)

働き方に関する感性や価値観が変わってきており、ゆったりとした時間軸で健康的に働ける山の魅力が高まっています。3K(きつい、きたない、きけん)といわれる林業ですが、近年は3S(SAFE(安心・安全)、STYLISH(スタイリッシュ)、STRONG(心強い))に向かっているといわれ、都市部でストレスを感じながら働く若者にとって、日中は自然の中で働き、夜はゆっくり家族と過ごす林業地での生活は働き方改革ともいえます。

林業は時代とともに生産ツールが進化し、ドローンや無人化技術等の導入も進み、作業の効率化、安全性の確立等が図られていますが、いまなお植林の人手不足やシカによる苗木の食害等の課題を抱えています。

徳島県では、大学・高校に林業に関する学科の新設や即戦力の技術者を養成する研修施設「とくしま林業アカデミー」を設置し、林業人材の育成を進めてきました。その結果、減少していた林業従事者が30代を中心に増加に転じています。

木材は住宅用をはじめ様々な用途で需要があるほか、CO2の排出を抑制する効果があり地球温暖化防止にも貢献します。また、品質の高い木材から順に多段階的に使い、木質ボードとしての再利用、最後は木質バイオマス燃料として利用する「カスケード利用」が可能であるなど、持続可能な資源として期待されています。木材の特質を理解し、適材適所で利用することの大切さを学びました。

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■6 フィールドワークⅡ「林業アカデミーオープンキャンパス(研修体験)」

*進行:市瀬 雅志 氏ほか

フィールドワークでは、とくしま林業アカデミーの研修生が学んでいるチェーンソー操作(木材伐採)、ドローン操作(運搬や資源量調査で活用)、ハーベスターシミュレーター(立木の伐倒、枝払い、玉切りから集積作業までを一貫して行える高性能林業機械)を体験しました。最先端の技術を活用し安全で効率的に技術を習得できるよう研修内容が工夫されていることを実感し、また実際に体験することで林業を身近に感じました。

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■7 グループワーク

進行:熊谷 幸三 氏

グループワークでは「森林環境譲与税をどう活かすか」というテーマで「都市部の人ができること」「山村部の人ができること」「都市部と山村部の関わり方」について議論しました。国内の森林整備等を目的に創設された森林環境譲与税は、多くの自治体が活用方法を模索しています。発表では、山村部の木材を都市部の施設の木質化に活用する、都市部の人が山村部に植樹を行うなど、都市部と山村部がお互いに持っている資源を提供し合い、連携・交流を深めることで活用方法を探っていこうという意見が出され、多様な関係者とのネットワークをつくり、共に考えることの重要性を学びました。最後に熊谷氏からの講評があり、異なった視点で見ることや失敗を恐れずチャレンジする姿勢の大切さを述べられました。

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■8 まとめ

徳島県では、最先端の技術を活用しながら「植える→育てる→使う→植える」という森林資源の循環利用を進めるとともに、とくしま森林バンク制度により豊かな森林を未来へ引き継ぐシステムを構築しています。また、木育による多世代交流や県産材の利用拡大を推進しています。

これら森林整備を行う川上(林業関係者)から木材製品を供給・利用する川下(消費者・実需者)までが一体となったプロジェクトを進めることで、森林・林業を核とした地方創生の実現を目指しています。

このように、今回の実践塾では豊かな森林資源を守り、SDGsを実践しながら地域の恵みを次世代に継承していく仕組みづくりを学ぶことができました。林業に関わる様々な職種の参加者と交流もでき、とても充実した2日間となりました。

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カリキュラム

〈12月8日(木)〉

1.開講式

2.講義「森林バンクによるSDGsの実践と地方創生」

主任講師:熊谷 幸三 氏(公益財団法人とくしま森林バンク顧問)

3.講義「木のおもちゃ美術館による木育とネットワークづくり」

講師:松﨑 美穂子 氏(徳島木のおもちゃ美術館館長)

4.フィールドワークⅠ「徳島木のおもちゃ美術館内視察」

〈12月9日(金)〉

1.講義「山で働くこと、木を使うこと」

講師:市瀬 雅志 氏(公益社団法人徳島森林づくり推進機構 副理事長)

2.フィールドワークⅡ「林業アカデミーオープンキャンパス(研修体験)」

進行:市瀬 雅志 氏ほか

3.グループワーク・発表・講評

進行:熊谷 幸三 氏

4.閉講式

連絡先

セミナー統括課
TEL:03-5202-6134  FAX:03-5202-0755  E-mail:seminar@jcrd.jp