【終了レポート】令和4年度 地方創生実践塾in富山県
地方創生実践塾
2023年02月21日
テーマ「『eスポーツ×高齢者福祉』~みんなでワイワイ!!eスポーツによる介護予防と福祉コミュニティの新たな形」
令和4年9月30日(金)~10月1日(土)に、「『eスポーツ×高齢者福祉』~みんなでワイワイ!!eスポーツによる介護予防と福祉コミュニティの新たな形」をテーマに地方創生実践塾を開催しました。全国の行政職員や福祉に関連する職員の方など25名に参加いただきました。
1日目:9月30日(金)
■講義①「eスポーツの概要と富山県内の状況」
*主任講師:堺谷 陽平 氏(株式会社ZORGE)
講師の堺谷氏からは、eスポーツの概要と富山県内の状況、活動実績についてお話しいただきました。eスポーツは、対戦型ゲーム競技のことを指し、世界の競技人口は2億人以上と推定されており、その中でも若い世代の人口が多く、国内外で人気が高まっています。
富山県では、老舗酒蔵や廃校舎を会場としてeスポーツ大会の開催や県内市町村の首長対戦を行うなど、地域とeスポーツを掛け合わせたイベントを開催しています。また、大会の景品に伝統産業の工芸品や地場産品を採用することで、地域内外から参加する若者が地域に触れるきっかけを作っています。また、令和2年より介護予防の一環としてeスポーツを高齢者に体験してもらう取組を開始しています。
このように、富山県では、子ども向けのイベントから高齢者向けの介護予防対策まで幅広く活動することでeスポーツによる新たな価値創造に挑戦しています。その結果、小・中・高校生の事業等にeスポーツを取り入れるなど、eスポーツを通して学びの機会創出や高校生・大学生のeスポーツ部の活動支援を行う自治体も増えていると話されました。
■講義②「eスポーツによる介護予防とコミュニティづくり」
*講師:中家 立雄 氏(富山県厚生部高齢福祉課)
富山県では、高齢者同士の交流の場である「通いの場」で、eスポーツを体験する機会を提供しており、eスポーツ体験を通じて、参加者同士のコミュニケーション促進や、身体を動かすことで脳に刺激を与え、集中力向上や心身の健康増進、介護状態にならないためのフレイル予防に寄与しています。
また、富山県立大学の学生がゲームを開発することで大学との連携や学生が高齢者福祉について考えるきっかけになっていました。
さらに、高齢者と若者等が集まり楽しい時間を共有できる機会となるため、多世代交流や新たなコミュニティづくりを実現していると話されました。
このほか、富山県内におけるeスポーツを活用した先進的取組事例として、高岡市高齢介護課高齢福祉係長の鍵主氏から、老人クラブ連合会と連携したeスポーツによる介護予防の取組が紹介されました。
■講義③「eスポーツの介護分野への応用の研究」
*講師:鳥山 朋二 氏(富山県立大学工学部 教授)
鳥山氏は、介護予防につながるゲームの開発を研究されています。
富山県立大学が開発するゲームは、高齢者にも理解しやすい身体を動かすゲームです。
そうすることにより、高齢者の参加を促すとともに運動の継続性や関節可動による運動効果が得られ、介護予防につながっていると説明がありました。
また、運動量に応じた得点を設定することで、参加者はゲームを楽しみながら、運動量や関節可動域の広がりを実感できると話されました。
■講義④「産官学連携による地域活性化の取組みと地域包括ケアの実現に向けたeスポーツの活用事例」
*講師:高木 康彦 氏(NTTビジネスコミュニケーションズ バリューデザイン部 担当課長)
高木氏は、産学官が連携して実施している、eスポーツを通じた高齢者の生きがいの醸成や健康増進の可能性に関する実証実験について話されました。
日本では、高齢化の進行により、高齢者の医療費が増加する傾向にあり、社会保障に関する負担も増加しています。医療費の抑制には、フレイル予防や介護予防に注力することが重要であり、昨今の取組事例について説明されました。
複数の民間企業が持つヘルスデータを活用し、高齢者の健康状態の把握、大学等によるデータ分析を経て関係機関が検証結果を共有し、その現状に沿ったサービスを開発・提供し実証するという内容でした。
そのひとつが、eスポーツを通じた認知症の予防です。認知症の予防には、脈拍をあげることが効果的であるとされ、楽しみながら気軽に脈拍をあげることができるeスポーツは、認知症予防に効果があるとの仮説のもと、研究が進められていました。
今後も、eスポーツを通じて、高齢者の生きがいの醸成や健康増進の可能性について検証し、新たな発見や価値創造につなげるとともに、合わせてNTTとしてネットワーク基盤の整備を行うことで新たな地域包括ケア実現の可能性を広げていくと話されました。
2日目:10月1日(土)
■eスポーツ体験
高岡市内にあるeスポーツ専用施設「Takaoka ePark」にてeスポーツ体験を行いました。ここでは、高齢者でも取り組みやすいリズムに合わせて太鼓を叩くゲームや大会に使用される本格的なシューティングゲーム、車の運転を体感できるゲームなどを体験しました。日常では行う機会が少ない瞬時の判断や、実際にプレイする時間や順番待ち時間に参加者同士のコミュニケーションが多く生まれたことから、eスポーツは、脳への刺激やコミュニケーションツールとして有効であることを実感しました。
■グループワーク「eスポーツの活用行事等の検討」
グループに分かれてeスポーツを活用した地域活性化や介護予防につながる事業等について検討を行いました。ふるさと納税を活用した事業プランやお祭りにeスポーツを取り入れるなど、活発な意見交換により様々なアイディアが出されました。
参加者数の減少や参加者の世代に偏りがあるイベント等にeスポーツをかけあわせることで、世代間交流や参加対象者が拡がり、イベント等の活性化につながると学びました。
まとめ
今回の実践塾を通して、eスポーツが介護予防やコミュニティづくりに有効な手段であることを学びました。また、多世代間でコミュニケーションが取れるツールであるため、新たな形のコミュニティを創ることができる可能性を感じました。eスポーツを、行政施策に盛り込んでいる富山県の先進的な取組を産官学それぞれの担当者から聞くことができ、学びのある2日間となりました。