平成29年度第1回土日集中セミナー「世界に認められたSAKEから学ぶインバウンド戦略 ~地域プライドからジャパンプライドへ~」

新たな知と方法を生む地方創生セミナー 募集終了 終了レポート

2017年05月13日

今年度も地方成功人材のマッチングによる土日集中セミナーが始まりました!

記念すべき第1回は、「世界に認められたSAKEから学ぶインバウンド戦略」をテーマに、酒蔵ツーリズム®などによる日本酒の産地を軸とした観光のあり方や、インバウンド対策を目指す上で重要な知識を得ることで、参加者がインバウンド対策に向けて動き出していただくことを目的に開催いたしました。

01 最初

5月13日(1日目)

「日本酒を世界酒へ、SAKEから観光立国」
株式会社コーポ・サチ 代表取締役 平出 淑恵氏

平出さんからは、世界中に広がっているワイン産業を参考に、日本酒の海外進出に必要な活動が3つあることをお話いただきました。3つの活動とは、「教育」、「コンクール」、「宣伝活動」です。

教育とは日本酒セミナーを開催することで、日本酒にまつわる歴史や伝統、原材料の米や水などについて理解を深めてもらうことが、日本酒を広める第一歩となります。2003年11月にワイン教育の本拠地ロンドンにあるWSET®(世界最大のワイン教育機関)で、日本の蔵元有志による日本酒講座を開催し、ワインのソムリエの方々に日本酒の理解を深めていただきました。

次に、コンクールとは、日本酒の専門家による日本酒の品評会を行うことです。客観的に、銘柄が評価されなければ、本当に素晴らしいお酒であるとはいえません。世界最大規模で、最高権威に評価されるワイン・コンペティションであり、世界中のワイン業者から最も注目されている「IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)」に、日本酒の部門である「SAKE部門」が2007年に誕生しました。この品評会で入賞することは、海外で認められた品質であるという証となります。

そして、コンクールで評価された銘柄は当然宣伝していかなければなりません。宣伝活動はただ単に日本酒を買ってもらうだけではなく、日本酒を通じて日本の文化や日本酒が生まれた地域の素晴らしさを伝えるツアーなどを企画し、それを伝えることが非常に大事です。佐賀県鹿島市では、2011年に市内にある富久千代酒造の「鍋島 大吟醸」が、IWCのSAKE部門のチャンピオンに輝いたことをきっかけに、「世界一の日本酒を輩出した地域」として、2012年から「鹿島酒蔵ツーリズム®」ツアーを毎年実施し、多くの観光客が訪れています。

02 平出氏

「IWC2016 SAKE部門 兵庫開催」
兵庫県庁 農政環境部 農林水産局農業改良課 磯崎 博隆氏

昨年5月に兵庫県で開催されたIWC2016SAKE部門で、当時の担当者である磯崎さんから国際大会が日本で開催されることによって、どのような効果があったのか話がありました。

2007年にIWCのSAKE部門が誕生し、10年を迎えた記念の年に兵庫県で開催されることになりました。国際大会を開催することで、日本酒の銘柄を評価してもらうことはもちろん、山田錦の田植え体験や日本酒セミナーを通じて、審査員に日本酒の文化や歴史などについて、より知ってもらえる機会にもなったことが、大きい効果だったとお話いただきました。

03 磯崎氏

「地域資源である日本酒の知識を持つことが地域のPRへどう繋がるか」
日本酒国際唎酒師(ききさけし)・講師 クリストファーヒューズ氏

イギリス人であるクリストファーヒューズさんからは、日本酒を海外でPRしていくときに大切なことについて講義いただきました。海外で商品を売る場合はその商品のストーリーに共感、感動してもらえるかが鍵になります。クリストファーヒューズさんは、「日本酒は、生産地の気候や米、水といった原材料、製法によって味わいが異なります。また、地域の歴史や伝統を語るストーリー性の強いものでもあります。これらを日本語が分からない外国人に対して、どう伝えるかが重要です」とのお話がありました。

また、日本酒と地域のPRをどのようにつなげるかの切り口として、小さな酒蔵でも海外進出に必要な戦略やターゲットを把握することができれば、酒蔵が小規模であることはデメリットではなく、小さいからこそ特別な存在になることで十分海外に進出することが可能であることを、クリストファーヒューズさんから教えていただきました。

04 クリス氏

「"酒飲みのテーマパーク"からインバウンド対策へ」
石川酒蔵株式会社 代表取締役社長 石川 彌八郎氏

東京都福生市にある石川酒蔵の石川さんには酒蔵ツーリズムの取組を教えていただきました。

石川酒造は、蔵元の見学や試飲のほかに、江戸時代からの石川酒造の歴史や、酒造り・ビール醸造に関する資料館、和食・イタリアンレストランがあるなど、酒造りの工程や試飲だけではなく、「観光」に必要とされる「体験」、「学び」、「食」が揃っているとお話いただきました。

また、外国人観光客には「英語のできるツアーガイドがいる酒蔵」が口コミで広まり、多くの外国人観光客が訪れている今、お客さんに喜んでお金を払ってもらえるような仕掛けができることが最も重要であると楽しく語っていただきました。

05 石川氏

「インバウンドと戦略について語る」
平出氏、磯崎氏、クリストファーヒューズ氏、石川氏

1日目最後のセミナーとして、講義いただいた4名にご登壇いただき、日本酒を「国際化」することについて、ディスカッションを行いました。

海外では、日本酒の味や製造方法などがわからないとどれだけ良いものであっても売れません。対策の一例として、ラベルを英語表記することが挙げられました。成分やアルコール度数をわかりやすく表記することは、手にとってもらう誰に対しても重要な情報源になります。また、商品を紹介する際には、日本酒のストーリーを伝えることで、購入する人に歴史や伝統などを理解してもらうことも重要であると議論されました。

その他に、特徴的な日本酒の取組として、山形県では、日本酒に対してGI表示(商品の品質や評価が、その地理的原産地に由来する場合に、その商品の原産地を特定する表示をすること。地理的表示ともいう)の認証を受けている事例や、兵庫県での村米制度(特定の酒米産地と酒造家が良質の酒米を購入する契約を結んだ仕組みで、米の生産者としては安定した得意先を酒造家は優良米産地の酒米の質と量を確保でき、両者にとって有益なる制度)によって、良質な米を安定して入手して、日本酒を製造していることなどの事例紹介もありました。

06 パネルディスカッション

味わわなければ語れない!

1日目のセミナー終了後の交流会では、IWC受賞の銘酒を始め、各地の日本酒が並び、試飲会が行われました。平出さんを始め、講師の方々からはそれぞれの日本酒の風味や産地、特徴などについて解説していただきました。並んでいた銘柄がすべてなくなるほど大盛況となり、日本酒をきっかけにこのセミナーに関わった人たちの新しい交流が生まれました。

講義を聞くだけではなく、実際に日本酒の味を体感することも大事です。

07 交流会

5月14日(2日目)

「酒米栽培から始まる神奈川の地酒造りと今後の展開」
泉橋酒造株式会社 代表取締役 橋場 友一氏

神奈川県海老名市にある泉橋酒造株式会社を経営する橋場さんには、世界に向けて商品を売っていくためには、地域の独自性のある生産体制が大切であることをお話いただきました。

泉橋酒造は、JA、行政と協力しながら、酒米栽培から精米・醸造まで一貫して行っています。地元の水と米を使い伝統的な製造法で「地元の酒」を作ることが、新しい日本酒や仲間を作るきっかけとなっています。

また、首都圏立地のメリットを活かし、田植えや稲刈りイベントの実施や直営レストランを駅前にオープンするなど、海外へ販売する前にまず、日本国内でのファンづくりが重要であると教えていただきました。

08 橋場氏

「酒蔵ツーリズムからみるインバンウンド戦略について」
株式会社アンカーマン 代表取締役 和田 直人氏

和田さんには、訪日外国人観光客が日本に求めているものについて解説していただきました。

外国人が求めるものは「日本でしかできないこと」で、これを体験できることが重要です。来日しなければわからない文化・習慣・歴史・美術・食・人を体験してもらうことで、ファンになってもらうことがインバウンドでは重要です。

09 和田氏

グループワークでもっと身のあるものに

講義後にグループで、酒蔵ツーリズムを進めるために必要なことや、地方ならではのインバウンド対策などについて話し合っていただきました。

酒蔵同士の連携の必要性や行政、地域住民との関わり方など、まずは地域で基盤を作ることの重要性について話し合われました。また、宿泊ができる酒蔵となれば、よりツーリズムを進めることができるのではないかという案も出ていました。

10 グループワーク

101 グループワーク2

今回のセミナーでは、日本酒を通じて、地域や世界と関わる方々にご講義いただきました。インバウンドを成功させるためには、まずは自分の地域資源を見直すこと、また、商品や地域を見る目線を一方向からだけではなく、多方面から捉えて、旅行に来てほしい人、商品を手にとってほしい人を意識して取り組むことが大切になります。今回得られた知識や手法を活かし、参加者の皆様が目指すインバウンド事業が実施されることを願っています。

12 集合1

13 集合2

最後に、参加者の声を一部ご紹介します。

  • 海外から見た日本酒の価値が改めて感じとれた。
  • インバウンド戦略として地域のことを知る重要性について気づかされた。
  • 日本酒の力、発展性については今まで知ることがなかったので非常に興味があった
  • ターゲットに合わせて発信側が変わらないとビジネスにはならないということが改めてわかった。

プログラム詳細

5月13日(土)

講義I 「日本酒を世界酒へ、SAKEから観光立国」
講師:株式会社コーポ・サチ 代表取締役 平出 淑恵氏
講義II 「IWC2016 SAKE部門 兵庫開催」
講師:兵庫県農政環境部農林水産局農業改良課 磯崎 博隆氏
講義III 「地域資源である日本酒の知識を持つことが地域のPRへどう繋がるか」
講師:日本酒国際唎酒師・講師 クリストファーヒューズ氏
講義IV 「"酒飲みのテーマパーク"からインバウンド対策へ」
講師:石川酒蔵株式会社 代表取締役社長 石川 彌八郎氏
パネルディスカッション 登壇者:平出 淑恵氏、磯崎 博隆氏、クリストファーヒューズ氏、石川 彌八郎氏

5月14日(日)

前日の振り返り 講師:平出 淑恵氏
講義V 「酒米栽培から始まる神奈川の地酒造りと今後の展開」
講師:泉橋酒造株式会社 代表取締役 橋場 友一氏
講義VI 「酒蔵ツーリズムからみるインバンウンド戦略について」
講師:株式会社アンカーマン 代表取締役 和田 直人氏
グループワーク
総括 講師:平出 淑恵氏

連絡先

クリエイティブ事業室
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