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平成29年度第3回土日集中セミナー「人と地域を豊かにする生涯木育~木育と地域を結び付ける企画・実践力強化講座~」
新たな知と方法を生む地方創生セミナー 募集終了 終了レポート
2017年06月03日
平成29年度第3回土日集中セミナーは、6月3日(土)~4日(日)に東京都新宿区四谷の東京おもちゃ美術館にて「人と地域を豊かにする『生涯木育』」をテーマに開催されました。北は青森県、南は鹿児島県から多くの方にご参加いただきました。
1日目
講義I「人と地域を豊かにする生涯木育」
まず、認定NPO法人芸術と遊び創造協会 理事長 多田 千尋氏に「人と地域を豊かにする生涯木育」をテーマにお話いただきました。
日本は森林率が約7割と世界第2位を誇りながら外国から安い木をたくさん買い、自国の資源を有効活用できていません。そのような状況から日本の森林を守るために、多田氏は国産材の木製おもちゃ等を活用した子育て環境を整備し、子どもはもちろん全ての人が木の温もりを感じながら豊かに生活を送ることができるようにする取り組み「ウッドスタート」を全国の自治体や企業とともに展開するなど、木育を推進しています。
ウッドスタートを宣言した自治体は誕生祝い品として地元産や連携先産の木製玩具を贈り、企業は子育てサロン木育広場を設置しています。山口県長門市や奈良県吉野町、ドコモショップ等の事例についてもご紹介いただきました。
講義II「檜原村のトイビレッジ構想」
次に東京都西多摩郡檜原村で地域材を活かした地場産業の形成に取り組んでいらっしゃる株式会社東京チェンソーズ 代表取締役 青木 亮輔氏、株式会社Tree to Green 代表取締役の青野 裕介氏のお二人に事例をご紹介いただきました。
檜原村は森林率が90%を超えており、平成26年12月にウッドスタート宣言をしています。トイビレッジ構想とは、村を元気にするために地域の財産を活かした新しい産業として、玩具の製作販売を中心に林業に携わる人材育成や観光名所化をめざしたものです。
構想の提案者である青木氏は「木のおもちゃは親戚や兄弟の子ども等誰にでも贈りやすく波及効果が高い」と語られました。
森林業の活性化のため「ものづくり」「まづくり」「ことづくり」の3つの事業を推進している株式会社Tree to Green 代表取締役の青野 裕介氏は、都内の保育園や商業施設でワークショップを行うと、人がとても集まってくることを実感し、内装を木質化するだけでなく実際に木に触れ感じることが大切であると語られました。
(写真左 青野氏、写真右 青木氏)
パネルディスカッション
登壇した3名に地域活性化センターの椎川理事長を加えた4名によるパネルディスカッションを行いました。青木氏、青野氏の前職からの転職理由からトークは始まり、従事者数の少なさ等、日本の林業における厳しい状況についても触れられました。
木育は長い時間がかかるものではあるが、森林という共有財産をみんなの課題として捉え、中長期で計画を立て小さな一歩から動き出すことができればよいのでは、という講師の意見に、参加者も「自分たちが踏み出せる一歩は何か」を考えるきっかけとなったのではないでしょうか。
(写真左から、多田氏、椎川、青野氏、青木氏)
東京おもちゃ美術館見学
セミナーの会場である東京おもちゃ美術館は、旧四谷第四小学校校舎を利用しています。館内には、国産材で作ったおもちゃが各教室にテーマ別にあり、訪れた人はそこで遊ぶことができます。
セミナーの参加者たちも館内をまわり、おもちゃに触れていると自然と笑顔が溢れていました。この美術館内はパステルカラー等の使用をおさえて木の色を活かしているためか、子ども連れのお父さんも多く来るそうです。
実際にセミナー開催期間中も多くの親子連れがこの美術館に遊びに来ていました。
グループワーク
1日目の最後は、7〜8人でグループを組み「森のめぐみを届ける施設とは」というテーマについてグループワークを行いました。
これまでの皆さんの木育への関心・興味・知識・経験や、講師の方々の話から得たヒントをもとにたくさんのアイデアが溢れ、時間内にまとめるのが難しいほどでした。木が持つ癒しの力を活用した「森の中の美容室付きのレストラン」など実在すれば行ってみたくなるアイデアも飛び出していました。
2日目
2日目は木育の各分野で活躍されている方の講義とグループワークを行いました。
講義III「木と地域のストーリーと木育」
日本には世界に誇る「銘木」技術があります。銘木とは日本の木々の中でも美しい、杢目が珍しいなど選りすぐられた木材のことです。
株式会社千本銘木商会常務取締役 中川 典子氏は「もったいない」の意識に基づいた日本ならではの技術や知識の素晴らしさを継承し、また地域の特性を活かした木育を推進していくことが必要であると考えています。
皆さんは木の名前をいくつご存知でしょうか。親しみをもつためにも、「まず今住んでいる都道府県の木や、ご出身の特産の木の名前を覚えることから始めてみてはどうか」とお話されていました。
講義IV「高齢者よし、赤ちゃんよし、子育て世代よしの多世代交流」
熊本県にある老人総合福祉施設グリーンヒルみふねの施設長である吉本 洋氏は五感への刺激を重視し、自然に触れる活動を介護に取り入れています。世代間交流事業も行なっており、小学校低学年の子どもと100歳を迎える高齢者の交流事例等をご紹介いただきました。
従来の高齢者は「安全という名の施設に閉じこもっている」のではないかと考え、自然に触れ外出することの大切さを感じたことから、アクティビティ・ケアを学び、それを園児と高齢者の交流に取り入れた活動は大学からの視察が訪れるほど注目されています。
講義V「人間が本来持つ感覚を取り戻す木育・森育の事例」
長野県の白馬村で大自然をフィールドに人材育成等を行っている株式会社ON-WIPPS(オン・ウィップス) 代表取締役 田口 眞嗣氏には、要介護高齢者が森の中で過ごした場合どのような効果が得られるのか映像を用いてご説明いただきました。
自然を体験することは、子どもから高齢者まで様々な効果があります。森の中は全てがバリアフリーでないからこそ歩くだけでも全身運動に繋がるため、高齢者の身体機能の維持にも効果的です。また、森には木の葉の擦れる音や生き物の感触、木漏れ日のまぶしさなど五感で感じとる刺激が溢れているため、室内で過ごすよりも多くの情報を身体が処理するので、それをきっかけに昔の記憶を思い出すことさえあるそうです。
森の中は転倒する恐れもあるため高齢者を連れて入ることは容易ではないが、それ以上に得られるものがあると語られていました。
講義VI「高齢者のアクティビティと木育活動」
高齢者の体だけでなく心の栄養補給を目的にしたアクティビティ・ケアについて研究されている認定NPO法人芸術と遊び創造協会の磯 忍氏には、木製家具の導入による即効性と継続性の両面の効果を紹介していただきました。
認知症の高齢者が木製家具がある部屋に入ると精神的に落ち着き、昼間そこで時間を過ごすことで夜の徘徊が少なくなったという結果が出ています。
またセミナーの参加者は大人もわくわくドキドキするアクティビティ・トイ「サボテンバランスゲーム」や「チロリアンルーレット」に挑戦しました。指先でものをつまんだり、頭の中で数字を足して計算したりするため、遊びながら運動的・心理的・脳活性化効果が得られ、みんなと一緒に遊ぶことでコミュニケーションをとることもできるおもちゃであり、参加者もその効果を体感していました。
グループワーク「木育と地域を結び付ける方法とは」
最後に、グループで「木育と地域を結び付ける方法」をテーマに意見交換を行いました。
2日間の内容を踏まえて様々なアイデアが飛び出し、参加者が職場に戻られたときに踏み出すスモールステップに繋がるワークになったのではないでしょうか。
この2日間でよく出てきたワード、「五感」と「つながり」。
「五感」を取り戻すことができる木育を手段に、人と人、また自然との「つながり」を大切にした取り組みが皆さんの地域で進められることを願います。
スケジュール
<1日目>平成29年6月3日(土)
ケーススタディI 生涯木育で地域経済を元気に!
13:00~13:10 | 開講式&理事長挨拶 | |
---|---|---|
13:10~13:40 | 講義I | 「人と地域を豊かにする生涯木育」 |
13:40~14:40 | 講義II | 「檜原村のトイビレッジ構想」 |
14:40~16:10 | パネルディスカッション① | 「風が吹いたら桶屋が儲かる木育」 |
16:10~16:50 | おもちゃ美術館見学 | |
17:00~18:00 | グループワーク | 「生涯木育で地域を元気に」 |
18:00~18:30 | 一日目のまとめ | |
<2日目>平成29年6月4日(日)
ケーススタディII 木育と地域を結び付ける方法とは
9:00~ 9:40 | 講義III | 「木と地域のストーリーと木育」 |
---|---|---|
9:40~10:00 | 講義IV | 「高齢者よし、赤ちゃんよし、子育て世代よしの多世代交流」 |
10:00~10:20 | 講義V | 「人間が本来持つ感覚を取り戻す木育・森育の事例」 |
10:30~11:00 | 講義VI | 「高齢者アクティビティケアと木育活動」 |
11:00~12:00 | グループワーク | 「木育と地域を結び付ける方法とは」 |
12:00~12:30 | まとめ・閉講式 |
連絡先
クリエイティブ事業室
TEL:03-5202-6134
FAX:03-5202-0755
E-mail:creative@jcrd.jp