平成29年度第7回土日集中セミナー「住民が主役となる地域ビジネス~困りごとから生業へ~」

新たな知と方法を生む地方創生セミナー 募集終了 終了レポート

2017年09月30日

平成29年度第7回土日集中セミナーは、9月30日(土)~10月1日(日)に「住民が主役となる地域ビジネス~困りごとから生業へ~」をテーマに開催しました。

9月30日(1日目)

講義I「地方創生戦略における地域ビジネス~外部人材の活用と広域連携による新たな都市販売ルートの確保~」
斉藤 俊幸 氏(地域再生マネージャー)

まず、斉藤俊幸さんから、今回のセミナーの導入となるお話をしていただきました。

地域ビジネスの起業とは地域住民による地域力向上を図るための起業、地域の雇用を支える起業であり、地域貢献や社会貢献などの意義を有する重要なものと考えられます。

斉藤さんからは、全国の様々な事例の紹介がありました。その中で、「ビジネスはどうなるかわからない。いっぱい挑戦すれば、そのうちの一つは当たる。それが大事なこと」と語られました。

斉藤俊幸

講義II「米日本一!高知県本山町の挑戦~米のブランド化と6次産業化~」
和田 耕一 氏(一般財団法人本山町農業公社 専務理事)

和田耕一さんは、高知県本山町の職員で、一般財団法人本山町農業公社に出向して、15年間勤務しています。

同社は平成6年に、四国で初めて市町村立の農業公社として設立しました。設立以来、野菜苗を農家に販売する種苗事業と、離農した農地の管理や農作業を請け負う農地利用推進事業に力を入れてきました。

しかし、本山町も担い手農家の減少により集落の崩壊の危険性を帯びていました。いかに農地を守り、担い手をつくるか。そこで希望の懸け橋となったのが米のブランド化でした。

本山町では「歴史」「環境」「品質」を柱に、この地域にしかないオンリーワンのブランドを作ろうという思いで取り組んできました。具体的には、きれいな水や気温差がある土地といった米作りに適した産地の特徴を示し、米の品質を向上させ、生産者の熱意と努力を伝えました。その結果、同町のブランド米「土佐天空の郷」はお米日本一コンテストで、史上初となる2度目の日本一を受賞しています。

また、都市農村交流活動や、お酒や米粉(ポン粉)などブランド米の加工品作り・販売にも取り組み、本山町に足を運んでもらえるようにしています。

和田さんは「これらの取り組みにより、後継者も少しずつ増えてきたようなので、今後も利益を得られる方法を考え、この地域で生活できることをPRしていきたい」とまとめられました。

和田耕一

講義III「奈良県曽爾村地域イノベーション創生戦略~農林業公社と地域創業~」
細谷 忠弘 氏(曽爾村企画課 課長)

曽爾村では、基幹産業の農業や林業が後継者不足により衰退していくことを危惧し、平成27年12月に曽爾村地域イノベーション創生総合戦略を策定し、その中で、官民協働で村の課題解決に取り組む「曽爾村農林業公社」を立ち上げる方向性を打ち出しました。

公社では、曽爾村ブランド化協議会を設立し、米のブランド化に取り組みました。実践者の栽培指導を受けながら100%有機肥料を使用し、農薬も一般的な栽培に比べ3割~5割抑えた米作りを展開し、700円/kgで販売することに成功しました。

また、高原野菜の産地復活に向け、地域おこし協力隊制度を活用した農業後継者の育成や、先輩農家のノウハウをデータ化するためにソフトバンクと連携しています。

さらに、村内の各集落でイノベーションが起こっており、地区住民による団体等が漆の産地復興やゆず加工商品の開発、米焼酎の製造などを行っています。

細谷忠弘さんは「これから成功や失敗がわかってくると思うが全体一丸となっていきたいと思っている」と話されました。

細谷忠弘

"全員参加型"パネルディスカッション

1日目最後のプログラムとして、講師の方々全員に登壇していただき、パネルディスカッション・全員参加討論を行いました。

斉藤俊幸さんから講師や参加者へ質問を投げかけていくというかたちで進行しました。

ディスカッションでは、地域存続への危機感や地域に対する郷土愛などに触れ、これらが地域ビジネスを起こすきっかけになるかなどを中心に展開し、参加者同士で意見を共有しました。

パネルディスカッション

10月1日(2日目)

講義IV「モルツウェルmission"ふるさとを守る"~変わらないために変わり続ける~」
野津 積 氏(モルツウェル株式会社 代表取締役社長)

野津積さんからはモルツウェル株式会社の取り組みについてお話しいただきました。

モルツウェル株式会社は賞味期限が3週間はもつ完全調理済み真空パック食材をつくり、毎日1万食を全国に配送しています。また、在宅高齢者弁当配食サービス等を行い、島根県の過疎地域の高齢者を支えています。

野津さんは東日本大震災をきっかけに「ふるさとは永遠ではない。また、物流の衰退・消滅は、ふるさとの衰退・消滅につながる」と感じ、物流も担うようになったとのことでした。

また、事業を進めるにあたり、人との関わりが大きく、「地域ビジネスを成功させるには仲間作りが大事。入ってきた情報を組み合わせながら、ビジネスに変えていき、その中から大きな成功を掴んでいければ」と話されました。

野津積

講義V「地域ビジネス広域連携の種~人おこし事業・協力隊起業について~」
藤井 裕也 氏(NPO法人山村エンタープライズ 代表理事)

藤井裕也さんから、人おこしや地域おこし協力隊の起業についてお話しいただきました。

藤井さんは、岡山県美作市で地域おこし協力隊として活動していました。そして任期終了後にNPO法人山村エンタープライズを立ち上げ、山間部でひきこもり・若者自立支援のための寮運営と就労プログラムを開発(人おこし事業)し実践しています。

人おこし事業は、若者の自立を支援し、地域での生活と仕事、地域活動を織り込んだ事業で、担い手のいない事業所と人材をマッチングしています。現在は、空き家を改修したシェアハウスにひきこもりの方が年間120人ほど集まっており、そこに集まった方と地域の困りごとをマッチングすることで、地域と若者の出会いの場を作っています。この取り組みにより仕事に興味を持った若者が自立するケースも増えているそうです。

藤井裕也

ワークショップ

2日目の最後のプログラムとして、参加者全員によるグループワークを行いました。

「地域ビジネスを作ってみよう」をテーマに、農林業分野、福祉・教育分野に分かれて積極的な議論がなされました。

グループワーク

セミナーを終えて

今回のセミナーではこれまでの地域ビジネスをテーマに、それぞれの地域で活動されている講師の方々をお招きし、お話を伺いました。郷土愛や危機感をきっかけに地域ビジネスを起こし、熱意と工夫で成功していく事例を学ぶことができました。

また、講師からはたびたび、たくさんの小さなチャレンジを行い、その中で当たるものを見つけていくことが大事と話されました。地域の課題に対して、まず取り組んでみるということも必要ではないでしょうか。

今回の学びを活かし、参加者の皆様の地域でも地域ビジネスが起こり、地域活性化に結びつくことを願っております。

集合写真1

プログラム

1日目(9月30日)

12:30~13:00 30分 受付
13:00~13:10 10分 開講式・常務理事挨拶
13:10~14:10 60分 講義I 斉藤 俊幸 氏
14:10~14:20 10分 休憩
14:20~14:25 05分 情報共有
14:25~15:10 45分 講義II 和田 耕一 氏
15:10~15:55 45分

講義III 細谷 忠弘 氏

15:55~16:05 10分 休憩
16:05~16:10 05分 情報共有
16:10~16:30 20分 「ディスカッションに向けた自己紹介」と「翌日講義のイントロダクション」
16:30~17:50 80分 "全員参加型"パネルディスカッション
18:30~20:00 90分 交流会

2日目(10月1日)

8:30~8:35 05分 前日の振り返り
8:35~9:20 45分 講義IV 野津 積 氏
9:20~10:05 45分 講義V 藤井 裕也 氏
10:05~10:10 05分 休憩
10:10~11:40 90分 グループワーク「地域ビジネスをつくってみよう」
11:40~11:50 10分 総括
11:50~12:00 10分 閉講式

連絡先

クリエイティブ事業室
TEL:03-5202-6134  FAX:03-5202-0755  E-mail:creative(at)jcrd.jp ※メールアドレスの(at)は@に変更ください。