【終了レポート】平成30年度 第3回土日集中セミナー

新たな知と方法を生む地方創生セミナー 終了レポート

2018年08月15日

平成30年度 第3回土日集中セミナー
「森の恵みで豊かな輪を編む~森林資源を活用した新たな循環の仕組み~」

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 平成30年度第3回新たな知と方法を生む土日集中セミナーは、7月14日(土)~7月15日(日)に東京都中央区日本橋にある(一財)地域活性化センターと東京都新宿区四谷にある東京おもちゃ美術館にて開催されました。  現在、自伐型林業推進に伴うものづくりや林産業を基盤とした循環型まちづくり、木材業界のIT化など、森林を重要な資源として活用する動きが注目されています。今回は、実際に現場で活躍されている方々を講師としてお招きし、森林との関わり方・活かし方について教えていただきました。

【1日目】
講義Ⅰ:自伐型林業とそれにともなうものづくり事業
講 師:堀見 和道 氏(高知県佐川町 町長)

自伐型林業の先進地

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川町は、森林率が70%を超えており、堀見氏が佐川町長に就任後、5年前から地域活性化のために、自伐型林業を町政の柱に据えています。自伐型林業とは、自伐林家の経営理念を取り入れ、他社の山林や地域の山林を管理していく小規模林業です。佐川町では、自伐型林業推進のため、担い手の育成や林地の集約、森林情報の整備を行っています。なかでも担い手育成では、地域おこし協力隊を毎年継続して雇用し、自伐型林業チームをつくり、技術研修などを積極的に行っています。また、間伐された木材は、「さかわ発明ラボ」というものづくり体験型講座で活用されているとのことです。

講義Ⅱ:林業を基盤とした循環型のまちづくり
講 師:上山 隆浩 氏(西粟倉村産業観光課 参事)

百年の森林構想

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西粟倉村は、面積の95%が森林であり、そのうち85%が人工林です。この森林は、未来を生きる子や孫のため、木を植えた先人が50年間守ってきました。その想いを大切にし、立派な百年の森林に育てるため、これから50年先も村ぐるみで森林を守り続けることを決断しました。2008年には「百年の森林構想」を策定、2009年から「百年の森林事業」に取り組んでいます。森林所有者と西粟倉村が10年間の管理協定を締結し、森林の集約化を進め、所有者に費用負担を求めることなく、造林や間伐、作業道の整備等が行われています。また、地域資源である森林をものづくりに活かすため、行政と民間が連携して様々な事業に取り組んでいることも西粟倉村の特徴です。このような西粟倉村の取組から、森林資源を活用した持続的な地域内での経済循環について上山氏の講義から学ぶことができました。

講義Ⅲ:地域材を活用した木育による地方創生
講 師:多田 千尋 氏(東京おもちゃ美術館 館長)

廃校を再利用!東京おもちゃ美術館

DSC07463.JPG本は、世界第2位の森林大国でありながら、木を十分に活かすことができていないのが状況です。また、森林自給率が低いため、私たちの社会と同様に木もまた深刻な少子高齢化が進んでいます。ゆえに活樹という出口を見出す必要があります。多田氏は、旧新宿区立四谷第四小学校の校舎を利用した「東京おもちゃ美術館」という体験型ミュージアムを運営されています。ここは、木のぬくもりが溢れる空間であり、木のおもちゃで親子が楽しめる憩いの場として人気を集めています。この東京おもちゃ美術館で取り組まれている木育活動を全国に広めていくため、現在、各地で姉妹おもちゃ美術館プロジェクトが計画されています。今年は、山口県長門市と秋田県由利本荘市にて姉妹おもちゃ美術館がオープンしました。全国で拡大されている木育やおもちゃ美術館による地方創生の取組と効果について、多田氏の講義では深く学ぶことができました。

グループディスカッション

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日目の最後のプログラムでは、参加者が3つのグループに分かれてディスカッションを行いました。講義後の質問時間を設けなかったため、参加者はこの日の講義の内容を踏まえた質問を積極的に講師に話し、それぞれの地域の情報を共有する密度の高い時間となりました。

 

 

 

【2日目】
東京おもちゃ美術館見学

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ミナー2日目のはじめには会場である東京おもちゃ美術館の見学を行いました。館内には様々なおもちゃが置かれていますが、特に木のおもちゃが多くあり、一歩部屋に入ると心地よい木の香りが漂います。また、おもちゃづくりを楽しむことができる工房や、木の恵みを全身で感じられる「赤ちゃん木育ひろば」などがありました。

 セミナーの参加者たちは館内をまわり、所々で懐かしい学校の雰囲気を味わいながら、あたたかい木の魅力に惹きつけられていました。

 

講義Ⅳ:木材業界のIT化について
講 師:小友 康広 氏(株式会社小友木材店 代表取締役)

IT×木材事業

DSC07647.JPG友氏は木材店の代表取締役だけではなく、リノベーションによるまちづくりに励む㈱花巻家守舎の代表、IT企業であるスターティアラボ㈱の取締役も務めており、木材店・リノベーションまちづくり・ITの多分野でワクワクするようなプロジェクトを手掛けています。この多分野の知識と経験を活かし、小友氏は「世界で一番カッコイイ木材店」をコンセプトに、2019年までに日本で一番ITを活用した木材店になることを目指しています。ITを活用した取組について、「Shop Bot」というデジタル製造加工機を用いて、複雑な切断を正確かつスピーディーにできることや、スマートフォンで丸太の直径を検知するアプリケーションソフトなどの紹介がありました。これから先の木材業界でのビジネスの可能性を教えていただき、講義を聞く参加者もワクワクしながらIT×木材事業について学ぶことができました。

パネルディスカッション

DSC07684.JPG日目の最後のプログラムでは、講師全員によるパネルディスカッションを行いました。多田氏をコーディネーターにむかえ、講師陣の地域や取組で共通している部分、講義で強調していた部分について、参加者の意見を交えながらディスカッションを行いました。50年後の自分たちの地域がどうなっているか、将来から遡って今の自分が踏み出せる一歩が何かということを、参加者一人ひとりが考える有意義な場となりました。林産業の知識の学びだけに留まらず、参加者の具体的なアクションに繋がるような意識や自己目標を持つことのできた素晴らしい時間となりました。

 

木育に関するセミナーは毎年行っていますが、毎回活発な意見が交わされます。今回も多くの議論とともに、森林資源の重要さと貴重さについて実感できたセミナーになったと思います。

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今後の開催予定

今後の開催予定はこちら!

講演者紹介 

多田 千尋 氏(東京おもちゃ美術館 館長)

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 東京都新宿区生まれ。明治大学法学部卒業後、プーシキン大学に留学し、幼児教育や児童文学などを研究。 認定NPO法人芸術と遊び創造協会理事長。2008年に東京おもちゃ美術館を創設。多くの入館者を集める経営手法が評価され、経済専門誌からは日本の社会起業家30人の一人に選ばれる。さらに、月刊誌『ソトコト』からはロハス大賞などを受ける。新宿区で開始した地産地消のおもちゃ促進「ウッドスタート」をはじめとした「生涯木育」を推進。大学講師も多数務める。

【ホームページURL】http://goodtoy.org/ttm/

         (東京おもちゃ美術館ホームページ)

堀見 和道 氏(高知県佐川町 町長)

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 高知県佐川町生まれ。東京大学工学部建築学科を卒業後、新日本製鐵株式会社ほかを経て、2000年に経営コンサルティングなどを手掛ける株式会社堀見総合研究所設立。2013 年佐川町にUターン後、全国で初めて自伐型林業政策を公約化し、町長に就任。町の7割以上を占める森林は重要な資源と位置付け、中山間地域である佐川町に仕事を生み出すため、個人レベルで行う自営型の林業形態である自伐型林業の推進と、切り出してきた木材を活用したものづくり事業に力を入れて取り組んでいる。

【ホームページURL】http://www.town.sakawa.lg.jp/

         (佐川町ホームページ)

上山 隆浩 氏(岡山県西粟倉村役場 地方創生特任参事)

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岡山県西粟倉村生まれ。西粟倉村内の地域資源を活かしながら地域活性化に取り組む。「百年の森林構想」の推進や「環境モデル都市構想」「バイオマス産業都市構想」を掲げ、小水力発電事業の収益を新たな再生エネルギーの導入や二酸化炭素の削減に再投資することで、村の地域資源を活用した新たな地域経営モデルの構築と魅力ある中山間地域の将来像を提示したいと考え、実現に向け力を注いでいる。現在上映されている、自然エネルギーによる地域再生を描くドキュメント映画「おだやかな革命」にも出演。

【ホームページURL】http://www.vill.nishiawakura.okayama.jp/

         (西粟倉村ホームページ)

小友 康広 氏(小友木材店 代表取締役)

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 岩手県花巻市生まれ。「世界で一番、カッコいい木材店」を目指している㈱小友木材店や、リノベーションによるまちづくりに励む㈱花巻家守舎の代表、IT企業であるスターティアラボ㈱の取締役を務める。木材店・リノベーションまちづくり・ITの多分野でワクワクするようなプロジェクトを手掛けている。元マルカン百貨店(花巻市)の建物を活用した東京おもちゃ美術館の姉妹美術館プロジェクトが現在注目を浴びている。

【ホームページURL】http://www.otomoku.co.jp/

         (株式会社小友木材店ホームページ)

スケジュール

1日目(7月14日)

12:30~13:00 (30分)    受付
13:00~13:10 (10分)    開講式
13:10~13:30 (20分)    イントロダクション 「今回のテーマについて、セミナーの目的」
13:30~14:20 (50分)

   講義Ⅰ 「自伐型林業推進とそれにともなうものづくり事業」

14:30~15:20 (50分)

   講義Ⅱ 「林業を基盤とした循環型のまちづくり」

15:30~16:20

(50分)

   講義Ⅲ 「地域材を活用した木育による地方創生」

16:30~17:40 (70分)

   グループディスカッション

17:40~18:00 (20分)

   1日のまとめ

18:30~20:00 (90分)    交流会

2日目(7月15日)

9:00~ 9:40 (40分)

おもちゃ美術館見学

9:50~10:40 (50分)

講義Ⅳ 「木材業界のIT化について」

10:50~12:10 (80分)

パネルディスカッション

12:10~12:20 (10分)

まとめ

12:20~12:30 (10分)

閉講式

連絡先

企画グループ
TEL:03-5202-6134  FAX:03-5202-0755  E-mail:creative@jcrd.jp