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【終了レポート】平成30年度第7回土日集中セミナー
新たな知と方法を生む地方創生セミナー 終了レポート
2018年10月23日
平成30年度 第7回土日集中セミナー
「今、取り組むべき成長分野のインバウンド戦略」
平成30年度第7回新たな知と方法を生む土日集中セミナー「今、取り組むべき成長分野のインバウンド戦略」を、10月6日(土)~7日(日)に開催しました。今回は、全国各地から自治体職員など32名のご参加をいただきました。
【1日目】
講義Ⅰ:「インバウンド戦略の展望」
講師:中村 好明 氏((一社)日本インバウンド連合会 理事長/(一社)国際22世紀みらい会議 議長)
観光立国とは、哲学立国である!
中 村氏は、「観光立国とは、哲学立国(Philosophy)である」と定義し、自分のことに加え、社会全体のことも考える視点、公共哲学的な視点を持つ重要性について説明されました。
将来のわが国の観光立国実現に向け、「米仕事=自分・自社の稼ぐための仕事」に加えて、「花仕事=持続可能な地域社会のための公共への奉仕・貢献」が重要になり、各地域のインバウンドの成功には、この2つの仕事を同時並行的に行うことが不可欠であると述べられました。
インバウンドの成功には、飲食・物販・宿泊施設・観光拠点、そして行政や観光協会など、これらのすべての担い手が有機的に連携して世界に情報発信し、訪日外客をおもてなしする必要があります。上記の関係者を酒の原料である酒米に例えた場合、どんなに良質のお米があっても、これを発酵させ、糖分・アルコールへと醸すためには、その化学反応を引き起こし続ける、良き「糀(こうじ)」が不可欠となります。
「米仕事」と「花仕事」の2つの仕事を同時並行的に行う、「糀(米+花)」となる人材は、地域の利害関係や官民の壁を越えて各要素を統合し、一体感のある地域を醸す力を備えたリーダーであり、「糀」、すなわち醸す人こそが、地域でのインバウンド成功の鍵であると述べられました。
【1日目】
講義Ⅱ:「インバウンド戦略で地域全体の価値向上を目指す」
講師:山田 桂一郎 氏(JTIC.SWISS 代表)
持続可能で自立的な地域社会の実現を!
山 田氏は、住民が幸せになり、まちが豊かになる真の地域活性化とは、持続可能で自立的な地域社会の実現であることから、地域内経済循環の推進の必要性について述べられました。
現在、日本が抱える問題の1つとして、人口減少とそれに伴う市場の縮小が挙げられ、特に人口減少のスピードが加速度的に進む地方では地域の死活問題になっています。
地域外からの外貨獲得手段として、観光振興が全国的に推進されている背景には、人口減少による地域内の消費額減少により、地域経済に大きな打撃を与えていることがあります。
よって、訪日外国人旅行者による消費を増やす必要性は今後さらに重要になっていくと説明がありました。
また、地元ならではの生活文化や伝統風習、自然環境や景観の良さ、地場産業が提供する本質的な価値に裏打ちされたきめ細かな商品や製品、サービスの提供が大切であり、地域再生や活性化を実現させるためには、地域が一体となった経営が出来る仕組みと組織が必要であると述べられました。
【1日目】
トークセッション
講師:中村 好明 氏 × 山田 桂一郎 氏
観光地から感幸地(かんこうち)へ!
ト ークセッションでは、中村氏からインバウンドの持続的成功は、地域のシビック・プライドの形成が重要であり、シビック・プライドに基づく、まちの全住民の主体的な関与とおもてなしが今後の成否を左右するという説明がありました。
シビック・プライドという概念には、自らのまちをよくするために自分自身が主体的に関わるという当事者意識が含まれ、自分のまちを誇りに思うだけでなく、その共同体の一員としての責務と自覚の促しが内包されているそうです。
なお、シビック・プライドの形成プロセスは、インバウンド振興と一体不可分であり、インバウンドの振興なくして地方創生はないと述べられました。
また、山田氏は、地域活性化には5段階(①知名度UP・話題性UP、②客数増加、③売上増加、④所得増加、⑤地域内経済循環の拡大)あり、地域内経済循環の拡大を目指す必要があると指摘されました。
さらに、日本各地が観光地化するのではなく、旅行者も住民も幸せを感じることが出来る「感幸地」になれば、日本は世界中から羨望される観光大国に自然となっていくことが出来るので、全国各地の観光地が少しでも「感幸地」となってほしいと述べられました。
【1日目】
グループワーク
シビックプライドの醸成と協働の関係づくり!
9 0分間のグループワークでは、5つのグループに分かれ、①講義を聞いて、目から鱗だったこと、②地域の自慢できるもの、③講義を聞いて一歩踏み出したいことについて、議論しました。
自分達の意識や感覚、地域について様々な意見が飛び交い、それぞれの想いを模造紙に書き出し共有しました。
【2日目】
講義Ⅲ:「人口動態統計から見るインバウンド戦略」
講師:藻谷 浩介 氏((株)日本総合研究所 主席研究員)
常に事実を数字で確認せよ!
藻 谷氏は、「イメージ」や「空気」は事実と異なるので、常に事実を数字で確認することの必要性を指摘されました。
入国管理局が提供している出入国管理統計によると、アメリカ人からは234人に1人、中国からは187人に1人、韓国からは7人に1人、台湾からは5人に1人、香港からは3人に1人が日本を訪れていることが分かり、普段自分たちが思っていることがいかに事実と異なるかが分かると述べられました。
また、いかに訪日外客を増やすかではなく、いかに多くのお金を落としてもらうかが大切で、一人あたりの消費額を高めるには、「時間を使ってもらう」発想が重要であり、上手に滞在時間を延ばすことができれば、地域内での飲食や購買、宿泊のチャンスは自然に増加するという話がありました。
さらに、知名度は集客に無関係であるということも指摘され、自分の浅知恵と、日本の狭い世間の「常識」にとらわれているから分からないが、相手の目線に立てば、可能性は無限であるということがわかるという説明がありました。
【2日目】
パネルディスカッション
講師:中村 好明 氏、山田 桂一郎 氏、藻谷 浩介 氏
観光立国の正体~観光地再生の処方箋~
パネルディスカッションでは、ファシリテーター中村氏、パネリスト山田氏、藻谷氏による議論が行われました。
人口減少による地域内の消費額減少が地域経済に大きな影響を与えており、年々減っていく定住人口分の消費を補うために地域外からの外貨獲得手段として観光振興が全国的に推進されています。
観光(外貨獲得)による地域経済の活性化を進めるには、地域内に落ちるお金の量を増やさなければならず、観光が地域経済を支える柱の一つとなり、最終的に多くの事業者が得をするためには、お客様が落としたお金が様々なルートで地元に還元する仕組みを構築することが重要です。
よって、観光関連事業者と地域内の事業者や住民が自分たちで考え、お互いに支え合う関係を構築しなければならないという発言がありました。
さらに、その地に人が住み着いた理由が必ずあるので、まず、自分たちの住んでいる地域の歴史を勉強することが大事であるという説明や、バックキャスティングを行うことが非常に重要であり、インバウンドを延命措置としてではなく、持続可能を目的としたインバウンドを行うべきであると指摘され、ガバメントクラウドファンディング(GCF)の活用等についての説明がありました。
【2日目】
テーブルトーク
テーブルトークでは、3つのグループに分かれそれぞれの講師へ質問を行いました。
自分達が実際に直面している地域課題を解決するための具体的な取組みに関する質問に対し、講師から経験を踏まえた的確な意見や助言、考え方がフィードバックされました。
セミナーを終えて
今回のセミナーでは、受け入れる側の体制整備と訪日外客の行動範囲の変化や事例から学びを深めることができたのではないでしょうか。
今回の学びを活かし、参加者の皆様の地域で一体となった総合的なインバウンド戦略が進み、地域活性化に結びつくことを願っております。
講師紹介
中村 好明 氏((一社)日本インバウンド連合会 理事長/(一社)国際22世紀みらい会議 議長)

ドン・キホーテ入社後、分社独立し、ジャパン インバウンド ソリューションズを設立、代表就任。官民のインバウンド振興に従事。ハリウッド大学院大学および神戸山手大学客員教授。「儲かるインバウンドビジネス10の鉄則」など多数執筆。
山田 桂一郎 氏(JTIC.SWISS 代表)

「世界トップレベルの観光ノウハウを各地に広める観光カリスマ」として、内閣府・国土交通省(観光庁)・農林水産省から認定。内閣官房地域活性化伝道師、総務省地域力創造アドバイザー、内閣官房クールジャパン地域プロデューサー、北海道大学客員教授、和歌山大学客員教授等。
藻谷 浩介 氏((株)日本総合研究所 主席研究員)
東大法学部卒業、日本開発銀行入行、米国コロンビア大学ビジネススクール留学、日本経済研究所出向などを経ながら、2000年頃より地域振興の各分野で精力的に研究・著作・講演を行う。「里山資本主義」「観光立国の正体」など多数執筆。
スケジュール
1日目(10月6日)
12:30~13:00 | 受付 |
---|---|
13:00~13:10 | 開講式 |
13:10~14:10 | 講義Ⅰ「インバウンド戦略の展望」 講師:中村 好明 氏 |
14:25~15:25 |
講義Ⅱ「インバウンド戦略で地域全体の価値向上を目指す」 講師:山田 桂一郎 氏 |
15:35~16:05 |
トークセッション 「観光地から感幸地へ」 中村 好明 氏 ×山田 桂一郎 氏 |
16:25~17:45 |
グループワーク |
17:45~17:55 | 1日のまとめ |
18:30~20:00 | 交流会 |
2日目(10月7日)
9:00~ 9:05 |
前日の振り返り |
---|---|
9:05~10:05 |
講義Ⅲ「人口動態統計からみるインバウンド戦略」 講師:藻谷 浩介 氏 |
10:10~10:40 |
パネルディスカッション「観光立国の正体~観光地再生の処方箋~」 |
10:55~11:55 |
テーブルトーク |
11:55~12:00 |
全体のまとめ |