【終了レポート】令和2年度 新たな知と方法を生む地方創生セミナー 「地域経済を見る眼とその方法 ~地域経済循環分析に基づく政策立案~」(11月開催)

新たな知と方法を生む地方創生セミナー 募集終了 終了レポート

2020年08月19日

地域経済を見る眼とその方法 ~地域経済循環分析に基づく政策立案~

当セミナーを11月14日(土)~15日(日)に開催し、自治体職員3名の方にご参加いただきました。
地域経済を活性化させるためには、思い込みや勘ではなく実態を可視化させ、現状・課題を正確に認識した上で政策を立案することが求められます。今回は、データに基づいた現状把握と効果的な施策立案ができるようになることを目的に、政府が公開・提供する「地域経済分析システム(RESAS)」や「地域経済循環分析自動作成ツール」が前提としている地域経済循環構造等の知識を学び、その分析を基にしたグループワークを実践しました。

11月14日(土)【1日目】

講義Ⅰ「地域経済循環分析の考え方について」
 講師:北村 潤一郎(地域活性化センター 常務理事)

地域経済とは、地域が持続・発展していくための基盤となるもので、地域経済循環分析は地域経済を「生産」「分配」「消費」の三側面から分析し、お金の流れを可視化する手法です。三側面は、財・サービスを「生産」し、その売上の一部が給与や利益として「分配」され、給与や利益から財・サービスを購入して「消費」するという流れです。地域経済を考える上で大切なことは「地域住民の所得が向上すること」であり、最終目標は分配をいかに大きくするかです。例えば、工場を誘致して生産が向上してもそれに対する労働者への分配が小さく、また周辺企業からの部品供給がなければ本社への利益送金が大きくなるだけで、その恩恵が地域住民に還元されることはありません。こうした状況を客観的に分析し政策を立案していくことが大切です。
RESASや地域経済循環分析自動作成ツールのデータから地域の強みや弱みを分析し、地域住民の所得を向上させるために、根拠をもった政策を考えることが重要です。

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グループワークⅠ「SWOT分析」

今回は秋田県大館市をモデル都市として、講義で学習した地域経済循環分析の考え方をもとに、大館市の強み(Strength)、弱み(Weekness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の分析を2つのグループに分かれて行いました。
強みは「2013年から2015年までで生産額が8.6%、付加価値額が6.8%増加している」「林業が全国と比べて盛んである」「化学が域外から所得を稼いでいる」などが挙がりました。弱みは「民間投資が地域外へ流出している」「1人あたりの付加価値額が全国平均より低い」などが挙がりました。機会は「秋田犬が人気である」「大館能代空港から30分ほどの立地である」「渋谷区が交流都市である」などが挙がりました。脅威は「少子高齢化が進んでいる」「病院が減少する可能性がある」「秋田市までのアクセスが悪い」などが挙がりました。こうした強み、弱み、機会、脅威で分析されたことを掛け合わせ、政策の方向性をグループで話し合って導き出しました。
自分が暮らす地域をRESASで調べてみると、納得することもあればイメージしていたことと違うこともあります。イメージは裏付けがないものもあります。データに基づき地域経済分析を行うことで、地域の現状を客観的に認識することができることを共有しました。

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11月15日(日)【2日目】

グループワークⅡ「政策立案」

グループワークⅠで決めた方向性を基に具体的な政策を立案し、発表しました。
A班は「通勤・通学が流入している」(S)×「食品加工を域外に頼っている」(W)×「秋田犬が有名である」(O)×「人口減少が進んでいる」(T)から「若者の雇用創出を行い将来人口の減少率の緩和を目指す」を立案し発表しました。B班は「林業が盛んである」(S)×「情報通信業が移輸入超過である」(W)×「渋谷区が交流都市である」(O)×「少子高齢化が進んでいる」(T)から「産業・教育で渋谷区との交流循環」を立案し発表しました。

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おわりに

当セミナーでは、当センター人口・地域経済研究室の職員のサポートの下、実際にRESASも操作しながら意見を出し合い、政策立案のプロセスを一通り学ぶことができました。受講者からは「今回のセミナーでは実践的な活用方法が経験できるよい機会となった。」という声も挙がりました。今年度はコロナ禍で東京会場開催のセミナーがほとんど開催できない中、体感的に学ぶことの楽しさを改めて感じることができました。

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連絡先

人口・地域経済研究室
TEL:03-6262-2950  FAX:03-5202-0755  E-mail:kenkyu@jcrd.jp