【終了レポート】令和3年度 新たな知と方法を生む地方創生セミナー・アドバンス型 地域経済を見る眼とその方法~地域経済循環分析に基づく政策立案~

新たな知と方法を生む地方創生セミナー 終了レポート

2021年07月16日

地域経済を見る眼とその方法 ~地域経済循環分析に基づく政策立案~

「地域経済を見る眼とその方法~地域経済循環分析に基づく政策立案~」を6月18日(金)~19日(土)に開催しました。学生、民間企業、地方自治体から3名の方にご参加いただきました。

地域経済の実態を可視化させ、多角的に分析をすることで、地域活性化につながる効果的な政策を立てることができます。本セミナーでは、政府が公開・提供する「地域経済分析システム(RESAS)」や「地域経済循環分析自動作成ツール」が前提としている地域経済循環構造等の知識を学び、その分析を基にしたグループワークを実践しました。

6月18日(金)【1日目】

講義Ⅰ「地域経済循環分析の基礎知識」
 講師:北村 潤一郎(地域活性化センター 常務理事)

地域経済循環分析とは、地域経済を「生産」「分配」「支出」の三側面から観察し、所得の循環を把握する分析方法です。この三側面の流れは、企業などが財・サービスを「生産」し、そこで生み出された付加価値が家計や企業に所得として「分配」され、家計や企業などが消費や設備投資を行い「支出」するという流れです。

地域経済を潤すためには、「地域内調達」の重要性を理解し、地域住民の「所得」の向上を目指す必要があります。例えば、山村地域に売上げの高い人気旅館があっても、域外の沿岸部から仕入れた魚料理ばかり提供していては、地域経済に貢献しているとは言えません。山菜など地元産品を使用することで、地元農家の所得向上を図れ、仕入れ額も抑えることができます。まずは地域に出入りするお金の流れを知り、いかに地域内でお金の循環を促すことができるかが大切です。

こうした地域経済の状況は、RESASや地域経済循環分析自動作成ツールのデータを活用することで、簡単且つ客観的に知ることができます。また、単にデータを鵜呑みにするのではなく、その土地の地域性などから多面的に現状を分析し、根拠をもった政策を考えることが重要です。

グループワークⅠ「SWOT分析」

 今回は北海道北斗市をモデル都市として、講義で学習した地域経済循環分析の考え方をもとに、北斗市の強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の分析を2つのグループに分かれて行いました。

 強みは「第一次産業の付加価値額が高い(550万円、全国220位)」「山や海に囲まれた良質なキャンプ場がある」「農業高校、水産高校がある」などが挙がりました。弱みは「市民活動が弱い」「15歳から24歳の流出が顕著」「空き家の増加」などが挙がりました。機会は「北海道新幹線の発着駅、駅前地区整備」「道内有数の観光地(函館市)に隣接している」「海外の寒冷地からの留学生や実習生の可能性」などが挙がりました。脅威は「農業経営者の年齢が高齢化」「新型コロナウイルスの影響」などが挙がりました。こうした強み、弱み、機会、脅威で分析されたことを掛け合わせ、政策の方向性をグループで話し合って導き出しました。

自分が暮らす地域をRESASで調べてみると、主要産業が10年前から変化しているなど、イメージしていたことと違うこともあります。イメージは裏付けがないものもあると気付き、データに基づき地域経済分析を行うことで、地域の現状を客観的に認識することができることを共有しました。

6月19日(土)【2日目】

グループワークⅡ「政策立案」

グループワークⅠで決めた方向性を基に具体的な政策を立案し、発表しました。

A班は「農業高校、水産高校がある」(S)×「海外の寒冷地からの留学生や実習生の可能性」(0)×「函館市に高等教育機関が多く、北斗市に初等教育の学校数が多い」(0)を掛け合わせて「地域の国際化×初等教育機関の量と質の充実」などを立案し発表しました。

B班は「良質なキャンプ場がある」(S)×「市民活動が弱い」(W) ×「SDGsの推進」(0)×「新型コロナウイルスの影響」(T)から「シビックプライドと地域コミュニティの醸成による地消地産の推進」を立案し発表しました。

おわりに

当セミナーでは、人口・地域経済研究室の職員がファシリテーターとしてサポートに入ります。受講者からは「不明な点は随時聞くことができたので、丁寧に学びを深めることができた」というお声をいただきました。少人数での現地開催だからこそ、一人一人の状況に応じた学びを持ち帰っていただくことができたように感じます。

連絡先

人口・地域経済研究室
TEL:03-6262-2950  FAX:03-5202-0755  E-mail:kenkyu@jcrd.jp