【終了レポート】令和3年度新たな知と方法を生む地方創生セミナー『MaaSで変わる公共交通~共創でつくる地域の未来~』

新たな知と方法を生む地方創生セミナー

2022年03月07日

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令和3年度新たな知と方法を生む地方創生セミナー「MaaSで変わる公共交通~共創でつくる地域の未来~」が令和3年10月29日(金)にリアルとオンラインを併用して開催されました。全国各地から自治体職員など12名のご参加をいただきました。

講義①経済産業省におけるMaaSの取組について

◆福永 茂和 氏(経済産業省 製造産業局 自動車課 ITS・自動走行推進室 室長

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2002年に経済産業省に入省。東京大学大学院新領域創成科学研究科修士課程修了。入省後、エネルギー、国際標準化、クールジャパンなどの政策に携わり、米国留学、在中国日本国大使館参事官などを経て、2021年7月より現職。また、内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局 SIP 自動運転サブリーダーも務める

「地域のMaaS創出で目指すべき方向性」

 福永氏からは、経済産業省で自動車産業の関連施策に取り組んだ知見をもとに、地域におけるMaaS推進の考え方について総論的にご講義をいただきました。

 地域で新たにMaaSに取り組むにはモビリティ関連のデータが重要となり、データを施策に反映させることで、住民個人の行動変容を促す必要があると話されました。特に人口減少地域では公共交通の維持が困難ですが、車両を一つのサービスで用いるのではなく、多様な目的を持ってマルチタスク的に使用することが重要と学びました。

講義②「日本版MaaS ~誰一人取り残さない持続可能な地域づくり~

安江 輝 氏(長野県伊那市企画部企画政策課 新産業技術推進係長)

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 1997年、伊那xDSL利用実験協議会代表幹事の一人として、日本初のADSL等技術よるブロードバンドインターネット網を構築。その後も、移動診療車とオンライン診療による医療MaaS実証企画の運営や、情報共有クラウドによる医療・薬局・介護・福祉等の地域包括ケアシステムの構築に取り組む。地域情報化アドバイザーとしても活躍。

「利用者となる高齢者に寄り添ったMaaS施策」

 安江氏からは、伊那市が実施しているMaaS施策についてご講義いただきました。

 AIで自動配車する「ぐるっとタクシー」では、高齢者に配慮してコールセンターを設けるとともに、人員コストを下げるため、ケーブルテレビ等で予約すると電話よりも安く予約できる体制を整備したと話されました。MaaS施策で重要なことは、医療従事者や交通事業者など課題解決のキーとなる関係者に対して、行政が声をかけて連携を進めることだと話され、関係者の理解を進めるには、新しい技術やツールに実際に触れてもらうなどの工夫もあるが、時間をかけて粘り強く進めることが重要だと強調されました。

講義③「永平寺町MaaSの取組み

◆中屋 貴大 氏(福井県永平寺町 総合政策課 主事)

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 2011年、永平寺町入庁。商工観光課へ配属され、その後建設課へ異動。2017年から県庁へ出向し、路線バスやコミュニティバスを担当。2019年に当庁総務課へ戻り、自家用有償旅客運送によるデマンド型乗合タクシー「近助タクシー」の立ち上げを行う。自動運転などの取組みも含め移動交通による地域の課題解決を目指す。

「地域が主体となったMaaS施策」

 中屋氏からは、永平寺町で実証実験している車両自動走行システムと、住民参加型のデマンドタクシー施策についてご講義いただきました。

 永平寺町では、住民の移動サービス確保を重視し、自動走行システムを観光客の移動支援だけでなく、沿線の小学校、幼稚園の下校にも利用していると話されました。デマンドタクシーでは地域が運営主体となり、郵便局が予約窓口を、地域住民がドライバーを担い、病院などの公共施設へ乗客を配送しています。利用方法や運航ダイヤの設定は地域住民の意見を取り入れたと話され、地域で一体となって取組を進める重要性を学びました。

講義④「Mobility Innovation モビリティサービスを通じて、人々の暮らしをもっと豊かに

上村 実 氏(MONET Technologies株式会社 事業推進部長

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 WILLCOM(旧DDIポケット)を経て、2011年にソフトバンク株式会社に合流。法人・コンシューマー部門、新規事業の立上げ、企画推進を歴任した後、公共事業部門の責任者を経て、2019年2月よりMONET Technologies株式会社 事業推進部長に着任。

「地域に即したモビリティのマルチタスク化」

 上村氏からは、MONETが自治体と連携して進めているMaaS事例についてご講義いただきました。

 富岡市の事例では、基幹バスとコミュニティバス、デマンドタクシーと移動手段を路線別に設定していたものを、全地域に同一車両を設定してデマンドタクシーに一本化することで、月の平均乗車回数が3,000回を達成したと話されました。他にも様々な形で自治体と連携しており、MONETは令和3年10月時点で103の自治体と連携をしています。これらの実績により集積された知見から、従来は移動でしか用いていなかった車両をマルチタスク化し、地域の状況に即したモビリティサービスの提供が重要と強調されました。

グループワーク&質疑応答

 グループワークでは、住民や地域を巻き込むことが行政の役割ではないか、単に鉄道やバスをどう改善するかではなく、その先のサービス提供まで考えなければならない、などの意見がありました。質疑応答では、講義を通して受講者からの質問に対し、講師陣から丁寧にご回答いただき、過去の失敗事例やMaaS施策を進める際の考え方を学び、講義の内容への理解がさらに深まりました

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セミナーを終えて

 モビリティはこれまで移動にしか使われていませんでしたが、オンライン診療や、役場の窓口機能を搭載した出張行政サービスなど様々な用途でマルチタスク化されており、モビリティへの認識を改めることが必要と気づきました。また、多くの地域で必要とされる交通対策に対してMaaSは有用ですが、多くの方が利用するには、地域の需要と供給を理解し、最適なサービスを提供することが重要だと感じました。

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以上、終了レポートでした!

スケジュール

10月29日(金)

13:00~13:15

開講式・アイスブレイク

13:15~14:05

講義Ⅰ 経済産業省(質疑応答を含む)

14:05~14:40

講義Ⅱ 自治体事例①(質疑応答を含む)

14:40~15:20

講義Ⅲ 自治体事例②(質疑応答を含む)

15:20~16:10

講義Ⅳ 民間事業者事例 (質疑応答を含む)

16:10~17:50

グループワーク・発表・講評

17:50~18:00

閉講式

18:10~19:00

オンライン交流会