【終了レポート】令和5年度【スタンダード(平日半日型)】新たな知と方法を生む地方創生セミナー「ローカルベンチャーを呼び込むまちづくり」

新たな知と方法を生む地方創生セミナー 終了レポート

2024年04月17日

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はじめに

 ローカルベンチャーとは、地域課題の解決や地域資源の活用のための新しいビジネスを手掛け、地域経済の活性化や地域コミュニティ発展への貢献が期待されている事業である。東京への一極集中や少子高齢化が進行する中、地方においては、自力で稼ぎ、安心して働けるまちをつくることが求められており、地域特性を活かした起業へのチャレンジを後押しすることが必要不可欠である。

今回のテーマ

 起業を促進する取組として、起業した人、起業を目指す人、それを支えるリソース、ノウハウを学ぶとともに、継続的に起業が生まれるために、行政はどのような役割を果たし、地域住民や中間支援組織などの地域団体とどのように連携していくべきかを考える。

講義 

【講義①】講師:NextCommonsLab ファウンダー 林 篤志 氏

 林氏は、地域資源を活用した起業を通して地域全体を活性化する取組について講義された。起業を単なるビジネスではなく、自己の生き方や価値観を具現化する手段と捉え、ビジネスの規模よりも地域とのつながりを重視する考えがあると述べられた。
 NextCommonsLabでは、ローカルベンチャー支援の取組として、移住者が自らの生業を築くだけでなく地域内で雇用を生み出すことを目指して、地域おこし協力隊制度を活用し、持続可能な地域経済の形成を促進している。起業においては事前のリサーチや合意形成、環境づくりが必要であること、そしてビジョンを関係者間で共有し、しっかりとした協力体制を作って、起業に伴うリスクをできる限り回避しながら事業の継続性をサポートしている。
 この取組により、地域外から来た起業家に刺激を受け、地域住民の活動が活発になる、若手Uターン、次なる起業家候補の移住相談などが増加する傾向がみられ、これまでに13の自治体が導入し、全国で100名を超える起業家が移住し活動している。

【講義②】講師:横瀬町 まち経営課 田端 将伸 氏

 横瀬町では、平成28年から「日本一チャレンジする町」をスローガンに掲げ、地域の活性化を図る取組として「よこらぼ」を展開している。「よこらぼ」は、横瀬町のフィールドや遊休施設を活用し、まちづくりの実践や実証実験を行うためのプロジェクトで、企業・団体・個人を問わず、実現したい取組をサポートする官民連携の場として機能している。
 この取組は、住民や民間企業からのアイデアやビジネスプランを支援し、柔軟性を持ったアイデアを持つ事業者と、地域の活性化を目指す横瀬町との間で相互にメリットがあるものとして注目されている。また既存の資源の有効活用や外部からのヒト・モノ・カネ・情報の流入を通じて、地域全体の活性化につながる。
 横瀬町がチャレンジの場を提供することで、新たなプロジェクトのアイデアが集まり、それに挑戦することで町の知名度が向上し、関係者が増える好循環を生み出している。実際にこれまで7年間で234件の提案があり、そのうち141件が採択された。この成功の背景には、人が中心となりチャレンジの場や仕組みなど関わりの余白を持つことが重要だという考えがあると述べられた。

【講義③】株式会社 小高ワーカーズベース 代表取締役 和田 智行 氏

 株式会社小高ワーカーズベースは、「地域の100の課題から100のビジネスを創出する」というミッションを掲げ、仕事や生きがいづくり、生活環境整備に取り組んでいる。震災発生による大手企業やチェーン店の撤退という厳しい状況の中で、地元の事業者が町を支え続けた経験からこの取組を始めたと語られた。
 一つの企業への依存を超え、多くの生業を持つ人々が集まり、地域の課題を解決するためのコミュニティを形成することで、活発な活動を生み出す。この環境が持続することで、次世代にも起業が当たり前の選択肢として浸透していく未来を描いている。課題があるということは新たなビジネスの種になる可能性があると捉え、この地域でしか生み出せない付加価値を与え、小高ワーカーズベースが関わることで地域内に23の事業の創出に成功した。

トークセッション

 参加者同士で講義の感想や疑問点、自身の地域の現状を話し合い、そこで出た質問に沿ってトークセッションを実施した。質問が多かった行政、民間企業それぞれの立場から考える今後の立ち位置や相互関係についてトークし、参加者全員がそれぞれの立ち位置を認識する機会となった。

おわりに

 地域で起業し、持続的な発展を遂げるためには、地域の課題に向けて地域固有の文化に根ざしたサービスを提供することが重要となる。しかし、それだけではなく起業家がやりがいを感じ、地域に定着するためには、地域と起業家の両者に対する行政や事業者からのサポートも不可欠である。本セミナーをヒントとして、地域と起業家の間に生じるミスマッチングを解消し、持続可能なローカルベンチャーが次々と誕生し、地域とともに成長し地域全体を活性化させる新しいビジネスとなることを期待したい。

受講者の声

・地域課題を自分ごと化していくために、自治体職員として、立ち位置の変化を受け入れていく必要があると感じた。
・起業というと1人でやらなければいけないというイメージがあったが、講義を通じて行政や事業者の方がチャレンジしやすい環境づくりを行っていることが分かり良かった。

連絡先

セミナー統括課
TEL:03-5202-6134  FAX:03-5202-0755  E-mail:seminar@jcrd.jp