【終了レポート】令和5年度【スタンダード(平日半日型)】新たな知と方法を生む地方創生セミナー「観光まちづくり」

新たな知と方法を生む地方創生セミナー 終了レポート

2024年04月17日

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はじめに

 観光まちづくりとは、地域が主体となって、自然、文化、歴史、産業など、地域のあらゆる資源を生かすことによって、交流を振興し、活力あふれるまちを実現するための活動である。観光まちづくりを進めていくためには、地域の景観や環境の保全も考慮し、観光振興と住民の暮らしを両立させていくことが求められる。

今回のテーマ

 観光まちづくりの概論、地域資源の活用方法、地方公共団体の優良事例、景観保全の重要性等について学ぶとともに、新型コロナウイルス感染症の拡大によって変化した観光のあり方について学び、観光まちづくりによる地域の持続可能性を考えるため、本セミナーを開催した。

講義 

【講義①】講師:JTIC.SWISS代表/地域活性化センターシニアフェロー 山田 桂一郎 氏

 山田氏は、「まちそだてのための観光のあり方」をテーマに講義された。観光振興は、単に集客数や観光消費額を増やすことを目的にするのではなく、その効果が地域の人々の幸せや社会の豊かさにつながっているか、観光資源の本来価値が損なわれず活用されているかどうかが重要であると述べられた。観光地にキャパシティ以上の観光客が訪れ、住民の生活や自然環境に悪影響を与えてしまうようではいけないとのことである。
 さらに、観光で生まれた経済効果が地域内で循環するような、利益を出せる地域を育てることが大切であると指摘された。それによって、地域内の事業者同士の取り引きが増え、地域の共通課題である人口減少の抑制にも寄与する可能性があるとのことである。
 また、観光まちづくりの事例として、スイスが紹介された。スイスはあらゆる資源に質を重視する国であり、地元の人々にとって価値があるものと認識することが、地域外の人々にも魅力的に映る要因であると説明された。地域資源や商品、サービスの徹底した質の向上が本来価値や付加価値の向上につながると学んだ。

【講義②】講師:株式会社インアウトバウンド仙台・松島 代表取締役/たびすけ合同会社西谷代表 西谷 雷佐 氏

 西谷氏は、ご自身が企画したツアーを事例として挙げながら「持続可能な観光地域づくりの思考法」について講義された。地元の人が納得するツアーと観光客が求めるツアーには差異があり、そのバランスを取るためには、最初にビジョンや理念を固めることが重要であると述べられた。さらに、新商品を開発することも重要だが、既存資源を組み合わせて新たな価値を生み出すことも大切であると強調された。
 また、インバウンドの可能性にも焦点を当てられた。日本人には当たり前の経験でも、外国の方には、「アクティビティ」「自然」「文化体験」で構成される「アドベンチャーツーリズム」となる場合がある。同じコンテンツでも誰を対象とするかでその価値が変わってくるとのこと。また、訪日外国人のニーズも変化しており、東京や京都、大阪の主要観光都市以外の地域へも足を伸ばし、より日本ならではの経験を望むことが増えてきているとのことである。そういったニーズに対応するためには、一つの地域だけで完結させずに、テーマを設定し、近隣の市町村と連携していくことが大切であると述べられた。
 西谷氏によれば、観光コンテンツで重要なことは「今だけ」「ここだけ」「あなただけ」を意識すること。過去に完結した事実ではなく、地域が現在進行形で動き続けているというストーリーをつくることも大切であると学んだ。

【事例紹介】
講師:JTIC.SWISS代表/地域活性化センターシニアフェロー 山田 桂一郎 氏 
講師:株式会社インアウトバウンド仙台・松島代表取締役/たびすけ合同会社西谷代表 西谷 雷佐 氏

 山田氏は、宮城県気仙沼市のファンクラブ「気仙沼クルーシップ」を紹介された。気仙沼クルーシップは、同市とつながるすべての人を"乗組員"として迎え、新しい定義の「市民」として関係性を構築している。また、気仙沼に関わる顧客情報と地域の商品やサービスを一元化していることから、ターゲットのニーズに沿った適切な情報マッチングが行えている。
西谷氏は、気仙沼市の「KESENNUMA BREWER’S TABLE」を紹介された。気仙沼市の産品を使った料理と、相性を考え選ばれた地酒を楽しめるペアリングディナーで、美味しい地域産品を味わいながら、その背景にある作り手の想いやストーリーに触れることができる。既存の観光資源と地域の文化や歴史を掛け合わせることで新たな価値を生み出しており、他の地域でも活かせる事例だと感じた。

トークセッション

 参加者同士で講義の感想や疑問点、自身の地域の現状を話し合い、そこで出た質問に沿ってトークセッションを実施した。質問が多かった行政、民間企業それぞれの立場から考える今後の立ち位置や相互関係についてトークし、参加者全員がそれぞれの立ち位置を認識する機会となった。

おわりに

 観光まちづくりは、その地域の文化に触れたいという観光客の想いと、地域の本当の魅力を見てもらいたいという住民の想いを調和させる必要がある。
また、集客数や消費額だけが目的となってはいけない。観光はあくまで手段であり、地域を発展させながらも、景観や自然環境を保全し、持続させていくことが大切である。

受講者の声

・地元の事業者や地域産品を活用し、地域内循環を意識する必要があることを学んだ。
・ターゲットのニーズに沿ったテーマを設定し、ストーリーとともに提供することが観光客の満足度の向上につながるのだと学んだ。

連絡先

セミナー統括課
TEL:03-5202-6134  FAX:03-5202-0755  E-mail:seminar@jcrd.jp