【終了レポート】平成30年度第8回土日集中セミナー

セミナー・研修 終了レポート

2018年11月15日

平成30年度 第8回土日集中セミナー 「地域の力を引き出す創発の場づくり~ゆるやかなつながりを生む"余白"のデザイン~」

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 平成30年度第8回新たな知と方法を生む土日集中セミナー「地域の力を引き出す創発の場づくり~ゆるやかなつながりを生む"余白"のデザイン~」を10月27日(土)~28日(日)に東京・原宿のコワーキングカフェ「W CAFE」で開催しました。5名の講師をお招きし、多様な人が集い・交流する場が求められる意味や、そこで生まれる新たな価値・発想の重要性について学びました。

【1日目】 講義Ⅰ:坂倉 杏介 氏(東京都市大学都市生活学部准教授)

創発の場が地域課題を解決する!

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倉氏は、「多様な主体の相互作用によってつながりと活動を創出する『創発の場づくり』」について説明されました。

 創発とは、多様な人々の活動や繋がりの中で様々な作用が起こり、予測できない又は予測を超えた価値が生まれることを意味します。

 坂倉氏が設立に携わった港区の「芝の家」は、多様な人や資源が偶発的に出会う場となっており、多様な人々が批判なく認め合い、互いに刺激し合い作用することで新たなビジネスが生まれるなど、思いもよらない価値が生み出されています。多様な価値観を持った人と交流することは気づきや学びが多く、当初は何気なく参加した人も信頼できる仲間ができると考え方や行動が変わり、「芝の家」での活動が新たな生きがいに繋がることもあります。

 SNSなどバーチャルな繋がりが発達する現代社会においても多様な人と実際に会い、意見を交換することは極めて重要です。これからの時代は誰もが存在を認められ、自分らしくいることができる場が求められており、創発の場づくりが地域にとって望ましい未来を生み出すきっかけになると述べられました。

【1日目】 講義Ⅱ: 高田 友美 氏(一般社団法人神山つなぐ公社)

多様な人々との繋がりが地域を活性化させる!

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田氏は、徳島県神山町における「人々が集まって住むことで、より嬉しいことや活動が生まれやすい拠点づくり」について説明されました。

 徳島県神山町は転入を望む家族の物件が不足していること、近所に同世代の子どもが少なく、子どもの遊び場や育ち合いの機会が失われているといった課題がありました。そこで高田氏は、子育て世代をターゲットとした集合住宅を建設し、子どもたちにとって良い生育環境や多様な人との繋がりを生み出す仕組みをつくっています。

 特に集合住宅に隣接する「鮎喰川コモン」は町民に広く開かれた場となっており、居住者だけでなく地域の子どもたちが放課後や休日に集まって楽しむことができる遊び場になっています。町民と移住者の交わりを深める場としての機能も備えることで、町民と移住者に新しい関係が構築され、新たな活動が創発されることを狙っています。

 多様な人との繋がりが地域を活性化させ、人を呼び込む好循環を生み出しています。

【1日目】 トークセッションⅠ:坂倉 杏介 氏(東京都市大学都市生活学部准教授)×山 田 茂義 氏(スタジオ八百萬代表)×齋藤 拓也 氏(置賜広域行政事務組合)

人と地域のゆるやかな繋がりの中で地域の未来を志向せよ!

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藤氏は、「多様性を認め、違いを超えて包摂する『ゆるふわ』」をテーマに、山形県置賜地域における「人と地域が繋がる基盤づくり」について説明されました。

 「ゆるふわ」とは、「ゆる:開かれていて多様性があること。違いを超えてともにあること。」「ふわ:まだ見えていない価値を模索すること。未来を志向すること。」です。

 斎藤氏は、置賜地域で人と地域を繋ぎ、地域づくり人材を育成する事業を行っており、一人ひとりが持ち味を発揮することができる場づくりに取り組まれています。

 一人ひとりの思いを応援し、サポートする体制を整備することで、予期しない偶然の出来事や自然な広がりが生まれることがあると述べられました。ふとした偶然をきっかけに予想外の価値あるものを見つけ幸運をつかみ取る「セレンディピティ」を大切にしたいと説明されました。

 山田氏は、スタジオ八百萬における「物事の価値を見直し、偶発的な価値を創出する交流拠点づくり」について説明されました。

 スタジオ八百萬では多彩な催しを開催しており、チャレンジカフェ「青の家」では仕事や家事の合間にキッチンと客席を使って飲食店営業にチャレンジすることができます。「フォーラム八百萬」では、地域の個人・企業・行政がテーマを決めてプレゼンし、それをきっかけに新たな活動や発想が創発されることがあります。

 スタジオ八百萬はビジネスユースな雰囲気とが誰もが参加しやすいアットホームな雰囲気の双方がうまく作用し、多様な人々をゆるやかに惹きつける魅力がある場所となっています。

【1日目】 グループトークⅠ

余白のデザインの必要性!

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ループに分かれ、学んだことの振り返りや創発の場づくりに関する想い、知識、経験を参加者で共有しました。

 トークテーマは、「セレンディピティについて」や「余白を作る意味や価値とは」、「多様な者や価値を受け入れる場を作るうえで必要なアイデアや手法」、「地域に人が集う場を作っていくうえで、自治体ができることは何か。」など6つ用意され、各グループがサイコロでトークテーマを決めて議論を交わしました。

【2日目】 講義Ⅲ:成瀬 友梨 氏(株式会社成瀬・猪熊建築設計事務所代表取締役)

誰もが入りやすい雰囲気づくり対話型のデザイン手法が重要!

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                 成 瀬氏は、千葉県柏市の31 ventures koil(サンイチ ベンチャーズ コイル)や名古屋市のDENSO(デンソー)新オフィス、静岡県三島市のみしま未来研究所の取組事例から、ハード面における「余白」のデザイン作りについて説明されました。

 創発の場とは、ポジティブな気持ちを持った多様な人々が相互に刺激し合う場所で、他人に寛容で他人がしていることを面白いと思えるところです。 

 成瀬氏は、天井の高さや照明を工夫することで、老若男女誰もが入りやすく落ち着くことができる雰囲気づくりを心掛け、利用者が気持ちよく創発の場として使用できる設計を綿密に行うと説明されました。

 成瀬氏の設計の特徴の一つは、設計の段階で依頼主を交えて分析、整理、判断することです。

 DENSO新オフィスの設計では様々な部署の担当者が集まり、全国の物件をリサーチしながら全員の知識レベルを揃えて理想のオフィスを追求しました。みしま未来研究所も同様に、ターゲット層の選定からレイアウトの決定まで依頼主が主体的に取り組むことで自分ごとに意識が変わり、より充実した設計を行うことができたと説明されました。

 様々な価値観を持つ人々によって行われる議論は順調に進まない場合もありますが、多様な人々との繋がりの中で作られたデザインは20年後、30年後の未来に想像を超えた価値を生み出す可能性があると述べられました。

【2日目】 トークセッションⅡ:坂倉 杏介 氏(東京都市大学都市生活学部准教授)×成瀬 友梨 氏(株式会社成瀬・猪熊建築設計事務所代表取締役)

創造的な欠如が多義的な価値を創出する!

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倉氏は、余白とは創造的な欠如であると述べられました。余白がある空間は不明確だからこそ使用者によって見え方が変わり、創造性が生まれると説明されました。

 成瀬氏は、性別や年齢関係なく居心地の良い空間作りが必要で、照明や家具、音楽などで工夫を凝らすことが大切だと述べられました。坂倉氏も誰もが入りやすい雰囲気の場所こそ偶発的な出会いが起こりやすいと述べられました。

 未完成・半完成のデザインだからこそ人は何かの予兆を感じて惹きつけられることがあります。

 また、創発の場に参加する動機付けやきっかけづくりも重要です。時には「方便」も必要で、人が参加したいと思うような楽しいイベントと組み合わせることも有効な手段だと言えます。

 

【2日目】 グループトークⅡ

第8回土日_グループトーク2.jpgグループに分かれてグループトークを行いました。

 坂倉氏、成瀬氏、高田氏、齋藤氏、山田氏が各グループに加わり、参加者が実際に直面している地域課題を解決するための具体的な取組など、講師から経験を踏まえた的確な意見や助言、考え方がフィードバックされ、様々な価値観や想いを共有する場となりました。

 

 

 

セミナーを終えて

 今回のセミナーでは、多様な人が集まる創発の場がいかに地域の力を引き出し、地域に望ましい未来の創出につながるかについて学びを深めることができたのではないでしょうか。

 今回の学びを活かし、参加者の皆様の地域でゆるやかなつながりを生む"余白"のデザインが進み、創発が生み出されることを願っております。

講師紹介 

坂倉 杏介 氏(東京都市大学都市生活学部准教授)

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 多様な主体の相互作用によってつながりと活動を創出する「コミュニティ・プラットフォーム」という視点から、コミュニティの形成過程やワークショップの体験デザインを実践的に研究。地域コミュニティ拠点「芝の家」や大学地域連携の人材育成事業「ご近所イノベーション学校」の運営などを通して港区のコミュニティ活性化事業なども手掛ける。慶應義塾大学文学部哲学科美学美術史専攻卒業。凸版印刷株式会社で勤務後、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。2015年4月より現職。

成瀬 友梨 氏(株式会社成瀬・猪熊建築設計事務所代表取締役)

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 専門である建築・設計の分野のみならず、場をシェアすることについても造詣が深く、建築とその空間の運営を一体的に支援していくことも実践。りくカフェ本設及び柏のオープンイノベーションラボイノベーションフロアがGOOD DESING AWARD 2015、グッドデザイン賞を受賞。東京大学工学部建築学科卒業後、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了、同大学院工学系研究科建築学専攻博士課程単位取得退学、2007年に成瀬・猪熊建築設計事務所を設立、代表取締役を務める。

高田 友美 氏(一般社団法人神山つなぐ公社)

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 静岡県浜松市出身、学生時代にイギリス、社会人時代にはスウェーデンに留学、アジア・アフリカ諸国でフィールドワークを行うなど海外経験も豊富。滋賀県においてエコヴィレッジづくりに取り組んだ後、滋賀大学で教員を務める。2016年徳島県神山町への移住後は一般社団法人神山つなぐ公社で活動。「人々が集まって住むことで、よりうれしいことや、活動が生まれやすい拠点づくり」をテーマとした集合住宅のコミュニティづくり等に取り組んでいる。

山田 茂義 氏(スタジオ八百萬代表)

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 山形県米沢市出身。大学卒業後、画像認識のハードウェア開発に携わった後に、実家の八百屋をリノベーションしたコワーキングスペース「スタジオ八百萬」を設立、代表を務めている。スタジオ八百萬では、「革命をデザインする」をテーマに、物事の価値を見直し、偶発的な価値を創出する交流拠点づくりに取り組んでいる。

齋藤 拓也 氏(置賜広域行政事務組合)

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 置賜広域行政事務組合の職員。山形県置賜地域(米沢市、南陽市、長井市、高畠町、川西町、小国町、白鷹町、飯豊町)において、「おきたま地域づくり~人と地域をつなぐ事業~」を展開。同事業においては「多様性を認め、違いを超えて包摂する『ゆるふわ』をテーマに、人と人がつながり、地域において新しい価値を生み出す基盤を創り出すことに尽力。

スケジュール

1日目(10月27日)

12:30~13:00 受付
13:00~13:10 開講式
13:10~14:40 講義Ⅰ 坂倉 杏介 氏
14:50~15:50

講義Ⅱ 高田 友美 氏

15:55~16:55

トークセッションⅠ 坂倉 杏介氏 × 山田 茂義 氏 × 斎藤 拓也 氏

17:00~18:00

グループトークⅠ

18:00~18:10 1日のまとめ
18:15~20:00 交流会

2日目(10月28日)

9:00~ 9:10

1日目の振り返り

9:10~10:10

講義Ⅲ 成瀬 友梨 氏

10:10~10:40

トークセッションⅡ 坂倉 杏介 氏 × 成瀬 友梨 氏

10:50~12:00

グループトークⅡ

12:00~12:20

全体のまとめ

連絡先

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