【終了レポート】令和2年度地方創生実践塾in福島県会津若松市
終了レポート
2020年12月21日
ICTを活用したスマートシティの推進
令和2年11月13日(金)に、福島県会津若松市における「ICTを活用したスマートシティの推進」をテーマとして、地方創生実践塾をオンラインで開催しました。(地方創生実践塾のオンライン開催は初)
全国各地の地方公共団体や民間企業等から33名にご参加いただきました。
【令和2年11月13日(金)】
最初に会津若松市の室井照平市長より、歓迎のご挨拶を頂きました。
◆アイスブレイク・講義①・ワークショップ「10年後、20年後を考え、どういうアクションが必要なのか?」
講師:藤井 靖史 氏(会津大学産学イノベーションセンター客員准教授)
アイスブレイクとして、「あなたのいる場所の名物は?」というお題に対し参加者がチャットで回答を記入した後、ワークショップとして「地域(や組織)の課題を一言で表現する」というお題に対し、参加者それぞれが紙に書き出し、参加者同士で共有しました。
続いてスマートシティやデジタル化に対する考え方について、以下の事柄が重要とご講義頂きました。
・society5.0とは、仮想空間と現実空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会のことだが、「ツールにより生活が豊かになることを目指す」という点においては過去から変わっていない。
・デジタル化の本質はツール(ICT、AI、ドローン)を使うことではなく、「なんのために」ツールを使うのかということ。
・業務のICT化とは部分的に業務を情報通信技術に代替えすることだが、デジタルトランスフォーメーションは、全体的にデジタルを用いて仕組みを変えることであり、組織改革が必要となる。
・地域でプロジェクトを進める際に構造化する流れとしては、
温度差を見つける(Conversation)⇒対流する(Network)⇒構造化する(+Technology、Output)というのが正しい順番である。※しかし、経済が成熟すると構造化してから対流を起こそうとしてしまう。
・スマートシティ1.0と2.0の最大の違いは、住民を有権者(≒消費者)と見るか、共同クリエイターと見るかという点。
・10年後、20年後を見据えた活動として、行政と住民間におけるベクトルの角度を「対立」から「協働」へ変えていきたい。
講義後のワークショップとして、講義前に書き出した地域(組織)の課題に対し、「○○のために、○○をする」という具体的な行動を書き出し、内容を参加者同士で共有しました。
◆講義②「『スマートシティ会津若松』の歩みと目指す姿」
講師:川上 慎史 氏(会津若松市企画政策部副参事)
二つ目の講義では、幅広い分野においてICTを活用した産業創出や人材育成をしながら、先駆的な取組を進める会津若松市における、これまでの歩みと今後の目指す姿についてご講義頂きました。
会津若松市では実証的な取組を続けていくことで他地域へ展開可能なモデルとなることを目指しており、また「標準化」というキーワードのもとで、いわゆる「都市OS」を構築することで他自治体との連携を目指しており、広域的に持続可能な力強い地域社会の構築を目指す姿勢が大変印象的でした。
レコメンド型の情報提供プラットフォームである会津若松+(プラス)では、登録者の知りたいことに応じて必要な情報がピックアップされて届くことや、LINEを利用して24時間365日市民からの問い合わせ対応が可能となるLINEでチャット問い合わせサービスが提供されているなど、市民目線での使いやすさを重視したさまざまなサービスが提供されていました。
今後は各分野における規制改革も視野に入れつつ、本人同意に基づく「オプトイン型」での個人情報の利用を行いながら、スーパーシティの実現を目指しており、ますます他の自治体へのモデルとなるような先進的な取組が期待されます。
◆講義③「Smart Cityによる自立分散社会の実現」
講師:藤井 篤之 氏(アクセンチュア株式会社ビジネスコンサルティング本部マネジング・ディレクター)
三つ目の講義では、会津若松市という地を実証実験の場と定め、他地域へ情報発信しながら地方連携モデルとなることで、自立分散社会の実現を目指す会津若松市の取組についてご講義頂きました。
会津若松市では、デジタル産業基盤の構築や実証フィールドとしての特性を生かした企業誘致を進めるとともに、高付加価値な業務や成長産業を地方に根付かせることで、競争力の高いサービスや新しい産業を地方から全国に向けて展開する、新たな地方創生モデルを推進しており、常に革新的な取組を続ける姿勢を感じました。
今後は自治体という枠組みにとらわれるのではなく、人がどう動いているかという観点から、生活圏単位でスマートシティに取り組み、サービスを標準化していくことが必要であるとのお話から、今後のスマートシティの在り方について知ることが出来ました。
◆講義④「海外事例から学ぶスマートシティのポイント」
講師:南雲 岳彦 氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング専務執行役員)
四つ目の講義では、世界でのスマートシティへの取組の特徴について、代表的なモデルとして都市生態学的アプローチ、サーキュラーエコノミー、戦略のパッケージ化の三つの事例を中心にご講義頂きました。
世界各地の代表的な都市の取組について、データの利活用方法や収集方法の観点からそれぞれ特徴を分析し、世界と比較して日本の取組について客観的に知ることが出来ました。また、Well-Being(しあわせ実感)の向上についての観点を踏まえ、それぞれのモデルの長所や短所、そして地域性や国民性も考慮したうえで、日本はどういったモデルを目指すべきかを考えていく必要があると感じました。
日本のスマートシティ構築上の課題として、ゴールとして住民の「しあわせ」をしっかりと据えられていないことや、テクノロジーに対する信頼度の低さが挙げられ、技術ではなく「人間中心主義」を明確化する必要があるとの言葉が印象的でした。
◆講義⑤「スマートシティのアプリケーション事例、ローカルMaaSを例に」
講師:前田 諭志 氏(株式会社デザイニウム代表取締役)
五つ目の講義では、交通不便性や公共交通の担い手不足等への解決策として会津若松市で取り組んでいるMaaSの内容と、利用されているアプリケーションについて講義を頂きました。
MaaSへの取組に際しては、交通事業者を主対象とした勉強会を通して、「自由で、迷わず、快適に移動できる都市・地域」という共通の目的のもと、関係者間で協力しながら、「みんなで議論」という姿勢で取り組まれていたことから、改めて産学官その他関係者間での協力体制が重要であると感じました。
また、アプリ利用者の利便性を第一と考え、ストア検索やユーザ登録などの障壁をクリアするために、Webアプリとしての開発や、ソーシャルログイン対応、電子マネー対応に加え、リアルタイムでのピンポイントなデータ収集により、今後も利便性の向上を目指していくという言葉が印象的でした。
◆グループワーク
最後のグループワークとして、受講した感想を参加者同士で共有した後、最初のグループワークで記入した「○○のために、○○をする」という具体的な行動について、聴講後に変化があった内容について記入し、参加者同士で共有しました。本実践塾の受講により、自治体間で連携していくことや、市民のニーズ把握のためにも意見交換を進めていくといった意見が新たに出ていました。
◆まとめ
会津若松市は市独自の実証実験に積極的に取り組むだけでなく、都市OSの利用など、他の自治体とも広域連携し、広く地域創生を目指しています。
また、提供されているサービスはいずれも市民目線での利便性が重視されています。ただ技術を利用するだけではなく、技術利用の目的が明確化されています。
スマートシティの推進においては行政や企業、研究機関、その他機関との「産学官金労言」における協働が必要ですが、会津若松市においては、関係者間で定期的に協議が行われており、関係者間での目的や意識の共有が重要であると感じ、改めて関係者間で密に対話することの重要性を学びました。
先進的な技術を用いた地域課題の解決策から今後の地域創生の考え方など、技術的な講義だけでなく、とても学びの多い実践塾となりました。
カリキュラム
◆11月13日(金) |
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開講式 |
アイスブレイク・講義①・ワークショップ「10年後、20年後を考え、どういうアクションが必要なのか?」/藤井 靖史 氏 |
講義②「『スマートシティ会津若松』の歩みと目指す姿」/川上 慎史 氏 |
講義③「Smart Cityによる自立分散社会の実現」/藤井 篤之 氏 |
講義④「海外事例から学ぶスマートシティのポイント」/南雲 岳彦 氏 |
講義⑤「スマートシティのアプリケーション事例、ローカルMaaSを例に」/前田 諭志 氏 |
グループワーク・発表・講評 |
閉講式 |
交流会 |
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