2001年13月号 子どもを支える地域づくり

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事例2 千葉県千葉市

 こども・若者とともに成長するまち

  ― 千葉市のこどもの参画推進事業 ―

 筆者 こども未来局こども未来部こども企画課主査 宮内博道

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 千葉市では、こども未来局を設置した平成22年、「こどもの参画推進事業」を始めました。さまざまな調査で社会との関わりに消極的とされるこどもの自立を促す必要性と、まちづくりには未来を一番持っているこどもの意見が大切、との理念のもと、「社会の一員としてのこどもの自覚と自立を促すとともに、こどもの参画によるまちづくりの実現」を目的としています。

 現在は、小学生から大学生程度の人を対象に「こどものまちCBT」など三つの事業を実施し、年度末に参加したこども・若者による事例発表や、市長との対話会により構成される「こども・若者フォーラム」を開催しています。

市民と取り組む「こどものまち」

 「こどものまち」は、ドイツのミュンヘンが発祥で、こどもだけでまちをつくり、運営するプログラムです。疑似社会体験をする中で、協働作業や協議による課題解決を通して、社会に参画することを学ぶことができます。本市では「こどものまちCBT(ChiBaTown)」として実施し、令和5年度も子ども交流館などを会場に、3日間で延べ1200人以上が参加しました。

夏休みの開催に向けて、18歳ぐらいまでのこどもがコアスタッフとして、毎月1回程度、準備のための活動をしています。こどものまちCBTではボランティア以外の大人は原則として会場には入れません。こどもはまちの中にある市役所で登録し、おしごとセンターで仕事を探します。食べ物屋さんやゲーム屋さん、市役所等で働いたり、清掃の仕事をしたりしてまちで通用する通貨を得て、買い物や、ゲームを楽しみます。まちの市長を決める選挙では、立会演説会が行われ、毎年千葉市長もゲストで参加しています。

運営にあたっては、こどものまちCBT当日に若干の入場料を徴収している他、企業等からの寄付を費用に充てています。基本的には市民ボランティアが運営しており、市は事務局として、会場の確保や、開催日当日の職員派遣をしています。

半年のワークショップ経て小中学生が提言

小・中学生を対象とした取り組みとして、平成21年度から「こども・若者の力ワークショップ」を実施しています。教育委員会が実施する「子ども議会」で市の現状や課題について小学生が話し合い市長等に行った提案や、庁内関係課からの依頼等をもとにテーマを設定の上、参加者を募集し、約半年間、毎月1~2回程度ワークショップを開催し、活動します。

活動にあたり、関係する市職員や専門家に話を聞いたり、必要に応じてフィールドワークを実施したりしています。円滑に進めるためにこどもの意見を整理・助言する必要があることから、経験豊富な事業者とファシリテーターの派遣等について委託契約を締結しています。

過去の取り組みでは、市内企業の協力による、市のキャラクターをモチーフとしたお弁当の企画・販売や、市制100周年を盛り上げるイベントの開催、市の環境基本計画へのこどもたちによる提言の発表等を行いました。

高校・大学生による「こども・若者市役所」

 平成28年度に市内高校生を対象としたワークショップにおいて意見のあった、「こども・若者の意見が市政に反映される千葉市」の実現を図るための取り組みで、主に高校生や大学生等の若者が対象です。ファシリテーターの派遣等、運営については、市内の大学と委託契約を締結しています。毎年4月に、市内の高校や、千葉市域に所在する私立の大学・短期大学が協働して設立した「ちば産学官連携プラットフォーム」の協力のもと、周知を行っています。

活動の軸は「こどもの居場所づくりやこどもたちをサポートする取組み」「千葉市の魅力発信」「千葉市の課題を解決するための提言」の3本で、令和5年度は、地域のこどもが集まる居場所として自治会館等を利用した「駄菓子屋カフェ」や、千葉市の魅力発信としてこどもが給食の献立を実際につくるイベントの開催等に取り組みました。

事業の効果と今後の取り組み

 こどもの社会参画の取り組みは、その効果を疑問視されることがあります。客観的な指標を設定することは困難ですが、「こどものまちCBT」では、コアスタッフとして参加していたこどもが成長し、ユースリーダーとしてこどもたちの活動をサポートしたり、大人として運営に携わったりするなど、よい形で運営が続いています。また、「こども・若者の力ワークショップ」や「こども・若者市役所」は参加者の2割以上がリピーターとなっており、参加者の社会参画に対する意欲が高まっていることの証左とも考えられます。特にワークショップでは、意見を何らかの形で反映させることが、社会に参画したことを実感するために重要と考えられます。例えば、活動のまとめとして施策の提言を行う場合は、すぐに事業に反映させることが難しいため、関係課に提言を説明し、意見交換を行う場を設ける等の対応が必要です。

 また、全てのこども・若者が社会参画を経験するためには、学校における取り組みが重要です。本市では三つの事業の他に、小中学校等での出張授業や「子ども議会」の実施について、教育委員会と連携をしています。また、庁内の理解を深め市が一体として事業を推進するために、チェックシートによる確認や研修を行っています。

 現在、千葉市では「(仮称)千葉市こども基本条例」の制定に向けて検討を進めています。「こども・若者の力ワークショップ」と「こども・若者市役所」でもこれを取り上げ、提言を発表しました。今後も引き続き、こども・若者の社会参画を推進していきます。

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