2001年13月号 子どもを支える地域づくり
事例7 滋賀県ポストコロナの新行動様式「すまいる・あくしょん」 ~こどもが笑顔で過ごせる環境をつくる~ 滋賀県子ども若者部子ども若者政策・私学振興課主事 秦 一平 |
こども、大人の双方に行動指標31320人の声を分析・策定
新型コロナウイルス感染症の拡大により、さまざまなガイドラインが示されましたが、子どもたちにとって分かりやすいものでなかったり、子どもには実行しにくいものであったりしました。学校の休業や自粛要請が行われる中、子どもたちがどのように考え、感じているのかを把握するため、滋賀県が全国に先駆けて小学生・中学生・高校生や大学生と未就学児の保護者などを対象に大規模調査を実施したところ、3万1320人からの「子どもたちの声」が集まり、コロナ禍に戸惑いを感じ、ストレスを抱える姿が浮き彫りになりました。その一方で、「友達や家族の大切さ」や「医療職の方への感謝の気持ち」、さらには「新しい趣味、楽しみを見つけた」「地元の良さを再発見した」など、コロナ禍の経験の中で新たに気付いた多くの気持ちや発見についても記されており、改めて、子どもたちが持つ優しさや力強さも感じる結果となりました。
専門家の意見を伺いながら調査結果の分析を行い、コロナ禍をきっかけに、ポストコロナを見据えていきいき過ごせるよう子ども版の新しい行動様式として策定されたのが「すまいる・あくしょん」です。
「すまいる・あくしょん」は、七つの指標を設けています。それぞれの指標について、「子どもが自分自身のために行動すること」「子どもが必要としていることに対して、大人が行動すること」の二つの視点があることが特徴です。子どもと、子どもを取り巻く大人たち、各々ができることを考えて、一人ひとりが行動に移していくための指標となっています。
企業・団体が「取り組み宣言」
フェスタや写真展など多様や取り組み
子どもたちが自発的に活動できる環境づくりを目的に、「すまいる・あくしょん」に基づき子どもたちや子どもを取り巻く関係者の行動変容を促すためのさまざまな普及啓発活動を展開しています。
活動においては、「企業・団体等と一緒に取り組むこと」を大切な要素として考えており、官民一体となって、子どもたちに「すまいる・あくしょん」を知ってもらう取り組みや、子どもたちとの意見交換を実施しています。
「すまいる・あくしょん宣言」を行った企業・団体等の取組を公表する「すまいる・あくしょん宣言登録制度」においては、令和6年3月末時点で登録数が150に上っており、企業・団体等の取り組みの中にも「子ども」の視点が増えてきました。
令和3年度からは、「すまいる・あくしょん」取り組み宣言を行っている企業・団体等が集まり、「すまいる・あくしょんフェスタ」を開催しています。それぞれが「自分たちならこんなことができる」と、七つの指標に沿った体験活動や人権啓発、文化活動の発表、スポーツ振興などブース出展や啓発イベントを行っており、令和5年度は、3500人を超える来場者がありました。
また、「子どもの笑顔の写真展」を開催し、子どもが外出してのびのびと遊ぶための環境づくりの大切さを啓発するとともに、「すまいる・あくしょん」の普及を図るなど、子どもたちの笑顔につながる取り組みを展開しています。
行動指標を広げていくために県子ども政策推進本部で施策推進
令和5年4月にはこども家庭庁が設立され、「こどもまんなか」というフレーズのもと、子どもたちのために何がもっともよいことかを常に考え、子どもたちが健やかで幸せに成長できる社会の実現を目指す動きが始まり、大人が中心となって作ってきた社会を「子どもが中心」の社会へと作り変えていく機運が高まってきています。
また、滋賀県も賛同している「こどもまんなかアクション」が全国に広がり、子どもや子育て中の方々が気兼ねなくさまざまな制度やサービスを利用できるよう、地域社会、企業など多様な場で、年齢、性別を問わず、全ての人が子どもや子育て中の方々を応援する、社会全体の意識改革を後押しする取り組みが展開されています。
滋賀県においても、重視する政策の一つ目に、「子どものために、子どもとともにつくる県政」を掲げ、子どもを大切に育み、子どもの思いや発想を大切にしながら、一緒に社会を創っていくため、「滋賀県子ども政策推進本部」を立ち上げ、子どもに関する施策を強力に推進していくこととしているところです。
このような中、子どもたちの成長の機会を確保し、未来につなげるための大切な行動指標として、一層、「すまいる・あくしょん」の普及啓発に努めていくことが重要であると考えています。
また、子ども連れや妊娠中の方などが外出しやすくなる環境を目指し、県の施設においても休憩所や授乳室の設置のほか、窓口での優先案内や駐車場の確保など取り組みを行っているところですが、企業・団体等においても賛同を呼びかけ、社会が一体となって子ども・子育てを応援し、子どもの笑顔の輪が広がるようにと取り組んでいきたいと考えています。